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暮らしと法律 · 公開: 2026.10.30 · 7分で読めます

同一労働同一賃金ガイドライン改正 —— 2026年10月施行、桑都の工房がパート・アルバイトを雇うなら何を確認すべきか

2026年10月1日、厚生労働省告示第202号・第203号によりパートタイム・有期雇用労働法の指針が改正された。労働条件明示事項の追加、同一労働同一賃金ガイドラインの明確化、雇用管理改善措置の見直しという3本柱の内容と、桑都の工房・個人事業主が確認すべきことを整理する。

図書室の書架に整然と並ぶ革装丁の書物

パート・アルバイトを1人でも雇っているなら、確認しておきたい制度変更がある。2026年10月1日、厚生労働省告示第202号・第203号の施行により、パートタイム・有期雇用労働法の指針が改正された。企業規模による猶予はなく、中小の工房や個人商店も例外ではない。雇い入れ時に明示すべき事項が増え、家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇といった待遇差の扱いにも具体的な判断基準が示された。この記事では、何がどう変わったのか、雇う側が何を確認すべきかを順番に整理する。

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何が変わったのか —— 3本柱の全体像

2026年4月28日、厚生労働省告示第202号・第203号が公布され、同年10月1日から施行された。根拠となるのは「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」、いわゆるパートタイム・有期雇用労働法に基づく指針の改正である。正社員とパート・有期雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消、つまり「同一労働同一賃金」をさらに進める内容で、企業規模による適用除外や猶予規定は設けられていない。パート・有期雇用労働者を1人でも雇用していれば、すべての事業主が対象になる。

「同一労働同一賃金」という考え方自体は2026年に始まったものではない。パートタイム・有期雇用労働法に基づく同一労働同一賃金のルールは、大企業では2020年4月1日から、1年の猶予期間を経た中小企業では2021年4月1日から、すでに全面施行されている。今回の改正は、この既存ルールの運用で判断が割れやすかった点を、新たな指針として明確化する位置づけにある。

今回の改正は、次の3本柱から構成されている。

  1. 雇い入れ時の労働条件明示事項の追加
  2. 同一労働同一賃金ガイドラインの改正(最高裁判決の内容を反映した明確化)
  3. 事業主が講ずべき雇用管理改善措置の見直し

いずれも「待遇差があるかどうか」そのものを新たに禁止するルールではなく、既存の同一労働同一賃金の考え方を、より具体的な判断基準と手続きに落とし込んだものだという点が特徴である。


雇い入れ時に何を明示しなければならないか

3本柱の1つめは、雇い入れ時の労働条件明示事項の追加である。2026年10月1日以降の雇い入れ、および有期労働契約の更新からは、「正社員との待遇差の内容・理由等について、労働者から説明を求めることができる」旨を書面で明示することが新たに義務づけられた。

従来からパートタイム・有期雇用労働法では、雇い入れ時に昇給の有無・退職手当の有無・賞与の有無・相談窓口の4項目を明示することが求められていた。今回の改正で、この4項目に「待遇差の説明を求める権利がある」という案内が加わったことになる。実務上は、雇用契約書や労働条件通知書のひな形に1項目を追加する作業が必要になる。

厚生労働省はこの措置の目的を、待遇差について「疑問が生じた際に相談を促すこと」だと説明している。つまり、入社前に説明を求める権利の存在を知らせておくことで、後から待遇差に気づいた労働者が相談先も分からず不満を抱え込む状態を避け、早い段階で事業主に説明を求められるようにする狙いがある。雇う側にとっては、説明を求められることを前提に、待遇差の理由をあらかじめ整理しておく動機づけにもなる。


同一労働同一賃金ガイドラインで何が明確化されたか

3本柱の2つめ、同一労働同一賃金ガイドラインの改正では、正社員とパート・有期雇用労働者の待遇差について「不合理と認められるかどうか」の判断基準が具体化された。

まず家族手当・住宅手当について、従来のガイドラインには具体例が乏しかったが、今回の改正で「支給目的に応じた判断基準」が明確化された。生活保障を目的とする手当は、継続的な勤務が見込まれるパート・有期雇用労働者にも同一の支給が必要となる方向性が示され、住宅手当についても転居を伴う配置転換がある場合は正社員と同一の支給が必要という考え方が示された。

次に夏季冬季休暇等の休暇についても、正社員と同一の勤務日数・実態があるパート・有期雇用労働者には、同一の付与が必要という考え方が明確になった。

賞与・退職手当については、令和2年(2020年)10月13日の最高裁判決2件が土台になっている。大阪医科薬科大学事件では、大学病院のアルバイト職員が正職員との賞与の有無をめぐって争い、最高裁は賞与の支給目的を「業務内容の難度・責任の程度が高い正職員の確保・定着」とし、正職員への登用制度があることも踏まえて、賞与を支給しないことは不合理とまでは言えないと判断した。メトロコマース事件では、駅売店の契約社員が退職金の有無を争い、最高裁は退職金についても「正社員としての人材確保・定着を図る目的」「職務内容・変更範囲の相違」「正社員への登用制度」を理由に、不合理とは評価できないとした。いずれも「待遇差自体が直ちに違法になるわけではなく、支給目的・職務内容の相違・登用制度の有無といった要素を踏まえて個別に判断する」という枠組みを示した判決であり、今回のガイドライン改正はこの枠組みをより具体的な判断基準として書き込み直したものにあたる。

いずれも「この手当は一律に支給せよ」という断定ではなく、勤務の継続性や実態に応じた判断基準が明確になったという整理である。個別の手当の支給要否を判断する際は、自社の勤務実態に当てはめて確認する必要がある。


事業主が講ずべき雇用管理改善措置と、罰則の有無

3本柱の3つめは、事業主が講ずべき雇用管理改善措置の見直しである。パート・有期雇用労働者から待遇の相違について説明を求められた場合、事業主は「資料を活用した口頭説明」または「その労働者が理解できる内容・方法で作成した資料の交付」のいずれかの方法で説明することが必要になった。口頭だけで済ませる、あるいは資料を渡すだけで済ませるという一方的な対応では不十分ということになる。

また、賃金決定にあたって職務内容・成果・能力・経験を公正に評価すること、正社員転換制度の内容を自社ウェブサイト等で周知することも、望ましい取組として盛り込まれた。

罰則については、パートタイム・有期雇用労働法自体に待遇差の是正を怠った場合の直接的な罰則規定はない。ただし都道府県労働局による助言・指導・勧告の対象となるほか、待遇差をめぐる労使トラブルが民事訴訟に発展するリスクはある。罰則がないからといって、説明責任を果たさなくてよいということにはならない。


桑都の工房・店舗が今すぐ確認すべきこと・相談窓口

今回の改正は、企業規模にかかわらずパート・有期雇用労働者を1人でも雇用するすべての事業主が対象になる。桑都で工房や店舗を構える個人事業主も例外ではない。確認すべきことを整理すると、次の3点になる。

  • 雇用契約書・労働条件通知書に「待遇差の説明を求めることができる」旨の明示が入っているか
  • 家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇など、正社員とパート・有期雇用労働者の間に扱いの差があるかどうか、あるとすればその理由を説明できる状態にあるか
  • 説明を求められた際に、口頭だけでなく資料を用いて説明できる体制があるか

3点のうち最も見落としやすいのは1点目である。契約書・通知書のひな形が古いままだと、明示事項の追加自体に気づかないまま10月1日以降の雇い入れ・契約更新を迎えてしまう。既存のひな形を使い続けている事業主は、この機会に見直しておくとよい。

実際に対応を検討する際の相談窓口も地域にある。八王子市・日野市を管轄する総合労働相談コーナーは、八王子労働基準監督署町田支署(町田市森野2-28-14、電話042-718-8342)で受け付けている。八王子労働基準監督署自体は町田市に統合されており、総合労働相談はこの町田支署が窓口になる。都内在勤・在住者向けには、東京都労働相談情報センター多摩事務所(立川市柴崎町3-9-2)が、電話相談の共通ダイヤル「東京都ろうどう110番」(0570-00-6110)を通じて労働問題全般の無料相談を行っている。


まとめ

2026年10月1日施行の改正により、パート・有期雇用労働者を雇う事業主には、労働条件明示事項の追加と、待遇差の説明責任の強化が求められるようになった。これまで判断が割れやすかった家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の扱いにも、具体的な判断基準が示されている。罰則規定はないものの、説明を求められたときに答えられる状態をつくっておくことが、今回の改正への実務的な備えになる。


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参考文献

厚生労働省 Webマガジン「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります―3つの改正ポイント」「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)について」「同一労働同一賃金特集ページ」 / freee「同一労働同一賃金ガイドライン改正2026、10月施行の3本柱を解説」 / 労働新聞社「大阪医科薬科大学事件(最三小判令2・10・13)」 / 東京労働局「八王子労働基準監督署」 / 東京都産業労働局「東京都労働相談情報センター(各事務所案内)」

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カヅキ

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桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。