「4号特例」が消えた —— 2025年4月施行、木造住宅の新築・リフォームで桑都の工房・住宅所有者が確認すべきこと
2025年4月、建築基準法改正で「4号特例」が廃止され、木造住宅は「新2号建築物」と「新3号建築物」に再編された。新築・リフォームで確認申請が必要になるケース、費用・工期への影響、八王子市の窓口まで整理する。

この記事の目次
木造2階建ての戸建て住宅を新築するとき、これまで省略できていた構造計算書の審査が、2025年4月1日からは原則すべてに必要になった。長らく建築確認の審査を一部省略できた「4号特例」という仕組みが、この日をもって廃止されたからだ。新築はもちろん、壁や屋根の過半に及ぶ大規模リフォームでも対象になりうる。桑都で工房や店舗併用住宅を構える個人事業主、空き家・古民家の改装を検討している住宅所有者にとって、見積りや工期の前提が変わる話である。この記事では、何がどう変わったのか、新築・リフォームそれぞれで確認すべき点、費用・工期の見込み、八王子市の窓口までを順番に整理する。
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何が変わったのか —— 省エネ基準の「説明義務」が「適合義務」になった
今回の変更の出発点は、令和4年(2022年)6月17日に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第69号)である。建築物省エネ法と建築基準法を同時に改正する法律で、2050年カーボンニュートラルの達成に向け、国内エネルギー消費の約3割を占める建築物分野の省エネ性能向上を加速させることを目的としている。
施行は公布後、段階的に進められた。国土交通省の整理によれば「3か月以内」「1年以内」「2年以内」「3年以内」という4段階のスケジュールが組まれ、このうち最終段階にあたる「3年以内」、つまり令和7年(2025年)4月1日に施行されたのが、本記事で取り上げる「省エネ基準適合義務化」と「4号特例の見直し(縮小)」である。
変わった内容を一言でいえば、省エネ基準に関する扱いが「説明義務」から「適合義務」になったということだ。改正前は、省エネ基準への適合が義務づけられていたのは中大規模の非住宅建築物等に限られ、戸建て住宅等の小規模住宅については、建築士から建築主へ基準の内容を説明する義務にとどまっていた。つまり、基準に適合しなくても建築自体は可能だったということである。
2025年4月1日以降は、新築する建築物について、住宅・非住宅、規模を問わず原則すべてに省エネ基準への適合が義務化された。対象は断熱性能(外皮性能)と一次エネルギー消費量の両方の基準であり、これに適合しなければ建築確認・完了検査を通過できない。努力義務や説明義務とは違い、確認申請の審査事項そのものに組み込まれた点が最大の変化である。なお、この適用対象は2025年4月1日以降に建築確認を申請する新築建築物に限られ、それより前に確認申請を済ませたものには旧基準が適用される。
「4号特例」とは何だったか、そして何に変わったか
もう一つの大きな変化が、通称「4号特例」と呼ばれていた仕組みの廃止である。建築基準法第6条が定める建築物の区分のうち、従来の「4号建築物」は、2階建て以下かつ延べ面積500㎡以下の木造建築物を指し、戸建て住宅の大半がこれに該当した。4号建築物は、建築確認の際に構造関係規定・一部の技術基準について審査を省略できる特例の対象であり、設計者が建築士であることを前提に、構造計算書や詳細な図書の提出を求められずに確認申請が通る仕組みが続いてきた。この特例は建築確認の迅速化・設計者の負担軽減を目的に設けられていたが、近年の大規模地震を踏まえ、審査を省略された木造住宅の構造安全性が第三者のチェックを経ていない点が課題として指摘されてきた背景がある。

2025年4月1日以降、この旧4号建築物は「新2号建築物」と「新3号建築物」の2区分に再編され、「4号特例」という枠組み自体がなくなった。新2号建築物は、木造2階建て、または木造平屋建てで延べ面積200㎡超のものを指し、構造関係規定(構造計算書等)および省エネ関係規定の図書提出・審査が新たに必要になった。これまで審査が省略されていた木造2階建て住宅の大半が、この区分に含まれることになる。一方、新3号建築物は木造平屋建てかつ延べ面積200㎡以下のものを指し、こちらは引き続き従来の4号特例と同様に一部の図書提出が省略される。都市計画区域内では建築確認そのものはすべての建築物が対象になる一方、構造等の安全性審査・省エネ審査が必要になるのは「階数2以上、または延べ面積200㎡超」の建築物という整理になる。
つまり、木造2階建てであれば面積にかかわらず審査が厚くなり、平屋で200㎡以下であれば従来に近い扱いが続く、という線引きである。
リフォーム・増改築でも確認申請が必要になるケース
新築だけでなく、既存の木造住宅のリフォーム・増改築にも影響が及ぶ。新2号建築物に区分される規模の工事について、「大規模の修繕・大規模の模様替え」にあたる工事を行う場合も、新たに建築確認申請の対象になりうる。ここでいう「大規模の修繕・模様替え」とは、壁・柱・床・梁・屋根・階段のいずれか一種以上について、その過半(半分を超える部分)を改修する工事を指す。具体的には、屋根の構造材(下地)工事が全体の過半を占める場合、外壁の構造部も含めて改修する場合、床を構成する根太・梁を含めて改築する場合などが挙げられている。
一方で、屋根ふき材のみの交換(カバー工法を含む)や、内装・仕上げ材のみの改修といった、構造部に及ばないリフォームは、引き続き建築確認申請の対象外とされている。表面的な張り替えや塗装のみであれば、今回の改正の影響を受けないということだ。
もう一つ押さえておきたいのが、既存の木造住宅への扱いである。2025年4月1日より前に建てられた既存の木造住宅については、「既存不適格建築物」としての緩和措置が適用される場合がある。リフォームによって構造耐力上の危険性が増すのでなければ、住宅全体を現行基準に適合させる改修までは求められない。すでに建っている家が、改正をきっかけにいきなり新基準への総点検を求められるわけではない、という点は誤解しやすいところなので明記しておきたい。なお、省エネ基準の適合義務は新築が対象の中心で、増築・改築を伴わない修繕・模様替えのみのリフォームは現時点では適用対象外とする解説が多いが、増築を伴うリフォームの場合の線引きは個別の工事内容によって判断が分かれる可能性がある。
費用・工期はどれくらい変わるか
構造計算書・省エネ計算書の作成が新たに必要になったことで、設計段階での追加コストが発生する。民間の試算では、構造計算費用として1棟あたり数十万円規模の増加が見込まれるとされているが、文献によって「20万〜40万円」「材料費・大工手間を含めると50万〜80万円」など試算に幅があり、国土交通省による統一的な公式試算は現時点で確認できていない。見積りを取る際は、幅のある概算として受け止め、個別の工務店・設計事務所に具体的な金額を確認するのが確実である。
工期についても、確認申請の審査項目が増えたことで審査期間が延びる可能性が指摘されている。ある解説記事では、確認申請の提出から交付まで最大35日以内という枠組みが示されており、従来より審査・交付までの期間が長期化する可能性があるとされる。設計者・工務店側にも、構造計算の実務知識を習得するための研修費用や設計システムへの投資が必要になるとの指摘がある一方、構造計算・省エネ計算を経た住宅は、将来の売却時に「基準適合住宅」としての説明がしやすくなる、安全性が向上するといった利点も挙げられている。新築・大規模リフォームを検討している場合は、着工までの計画段階で、この追加コストと工期の延びをあらかじめ織り込んでおきたい。
八王子市の窓口と市独自の制度
八王子市は、建築物省エネ法に基づく従来の届出制度(改正前からあった説明義務等に付随する手続き)を令和7年(2025年)3月31日付で廃止し、同年4月1日施行の適合義務化に切り替えた。省エネ基準への適合性判定業務は、八王子市が登録確認機関等に委任する形で運用されている。建築確認・4号特例見直しに関する市内の窓口は、まちなみ整備部建築指導課(八王子市元本郷町三丁目24番1号、電話042-620-7310、ファックス042-626-3616)である。
もう一つ、市独自の動きとして押さえておきたいのが、八王子市が令和8年(2026年)4月1日から開始した「建築物再生可能エネルギー利用促進区域制度」である。これは再生可能エネルギー利用設備(太陽光パネル等)の導入を促進するため、一定の条件を満たす建築物に建築基準法上の特例(容積率・高さ制限の緩和等)を認める市独自の制度であり、4号特例見直しとは別の枠組みである。新築やリフォームの計画段階で再エネ設備の導入を検討している場合は、この制度の対象になるかどうかも併せて確認しておく価値がある。
桑都の工房・住宅所有者が今確認すべきこと
ここまでの内容を自分の立場に当てはめると、確認すべき点はおおむね3つに絞られる。
まず、新築で木造2階建ての戸建て住宅・店舗併用住宅・工房(作業場)を建てる場合、延べ面積にかかわらず「新2号建築物」に該当し、構造計算書・省エネ計算書の提出が必要になる。多摩織の機屋のように作業場を構える場合も例外ではないため、設計・施工を依頼する工務店・設計事務所に、この点を踏まえた見積りと工期を早めに確認しておきたい。平屋(延べ面積200㎡以下)で新築・増改築する場合は「新3号建築物」にあたり、従来の4号特例に近い扱いが続くため、2階建てより規制強化の影響は小さい。
次に、空き家・古民家を購入・活用して工房や店舗に改装する場合である。改修の範囲が壁・柱・床・梁・屋根・階段のいずれかの過半に及ぶかどうかによって、建築確認が必要になるケースがある。これは、本連載で過去に取り上げた「空き家の相続・特措法」とはまったく別の制度である。古民家の活用を検討している読者は、改修計画の段階で、八王子市まちなみ整備部建築指導課(042-620-7310)に相談することが望ましい。
最後に、2025年4月1日より前に確認申請を済ませている建築物には旧基準が適用されるという点である。すでに建築中、あるいは既存の住宅がただちに新基準の適合を求められるわけではない。「いつ確認申請を行ったか」が適用基準の分かれ目になることを押さえておけば、改正の内容を自分の状況に正しく当てはめやすくなる。
まとめ
2025年4月1日、建築基準法と建築物省エネ法の改正により、省エネ基準適合義務化と「4号特例」の廃止が同時に施行された。木造2階建ての住宅は「新2号建築物」として構造計算書・省エネ計算書の審査対象になり、平屋200㎡以下は「新3号建築物」として従来に近い扱いが続く。新築だけでなく、壁や屋根の過半に及ぶ大規模リフォームも対象になりうる制度変更であり、桑都で工房や住宅を構える人にとっては、見積りや工期の前提そのものが変わる話である。着工前の計画段階で一度、自分の建物がどちらの区分に当たるのかを確認しておきたい。
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連載「暮らしと法律の手帖」は、八王子で暮らすうえで知っておきたい制度や手続きを、身近な場面から一つずつ取り上げるシリーズです。
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参考文献
国土交通省「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について」「2025年4月からルールを改正します!全ての新築で省エネ基準適合を義務化!」「省エネ基準の適合義務化に併せて木造戸建住宅を建築する場合の建築確認手続きが見直されます」 / 法改正ナビ「建築物の省エネ基準適合義務化・『4号特例』の縮小」 / SUUMOリフォームタイムズ「4号特例縮小でリフォームも建築確認申請が一部必要に」 / 全日ラビー不動産コラム「4号特例が縮小へ|2025年4月から何が変わる?」 / きのいば「【2025年最新】4号特例廃止で建築費はいくら上がる?」 / 増改築.com「2025年建築基準法改正によるリフォームへの影響(4号特例縮小)」 / 八王子市「建築物省エネ法について」「建築物再生可能エネルギー利用促進区域制度」
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この記事は連載「暮らしと法律の手帖」第25話です
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