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暮らしと法律 · 公開: 2026.07.06 · 更新: 2026.07.31 · 5分で読めます

空き家を相続したら —— 特措法と固定資産税の基本

親から空き家を相続したとき、何をすべきか。空家等対策特別措置法の「特定空家」指定、固定資産税の住宅用地特例の解除、相続登記の義務化。知っておきたい法的なポイントを整理する。

概要

「実家が空き家になっている」——50代前後の世代にとって、これは他人事ではない問題です。親が亡くなったり施設に入ったりした後、住む人のいなくなった家をどうするか。放置すれば「特定空家」に指定されるリスクがあり、固定資産税が最大6倍に跳ね上がる可能性も。2024年4月からは相続登記の義務化も始まりました。空き家を相続した場合に知っておきたい法的なポイントを、わかりやすく整理します。


空き家を放置するとどうなるか

空き家を相続したまま放置すると、いくつかのリスクが生じます。

建物の劣化

人が住まなくなった家は、換気がされず湿気がこもり、木材の腐朽やシロアリ被害が急速に進みます。屋根や外壁の損傷も放置されるため、数年で急速に劣化します。

周辺環境への影響

草木の繁茂、害虫・害獣の発生、景観の悪化。近隣住民にとっては深刻な迷惑になり得ます。

法的リスク

倒壊や落下物によって第三者に被害を与えた場合、所有者は民法上の損害賠償責任(土地工作物責任、民法第717条)を負う可能性があります。「知らなかった」「管理できなかった」は免責事由になりません。


空家等対策特別措置法(空家特措法)

2015年(平成27年)に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家特措法)は、増え続ける空き家問題に対応するための法律です。2023年には改正法が施行され、新たに「管理不全空家」の区分が追加されました。

この法律のもとで、市区町村は以下の措置を講じることができます。

特定空家とは

倒壊等の危険がある、著しく衛生上有害、景観を著しく損なう、周辺の生活環境の保全上不適切——これらの状態にある空き家は、市区町村によって「特定空家等」に指定される可能性があります。

特定空家に指定されると、以下のプロセスが進みます。

  1. 助言・指導: 適切な管理を求められる
  2. 勧告: 勧告を受けた時点で、固定資産税の住宅用地特例が解除される(後述)
  3. 命令: 法的な強制力を持つ命令。従わない場合は過料(50万円以下)
  4. 行政代執行: 市区町村が所有者に代わって解体等を行い、費用を所有者に請求

管理不全空家(2023年改正で追加)

特定空家に至る前の段階で、管理が不十分な空き家を「管理不全空家」として指定する制度が新設されました。管理不全空家に対しても指導・勧告が行われ、勧告段階で固定資産税の特例が解除されます。


固定資産税の住宅用地特例

空き家問題を理解するうえで最も重要な税制の仕組みが、住宅用地特例です。

住宅が建っている土地(住宅用地)は、固定資産税の課税標準が以下のとおり軽減されています。

| 区分 | 軽減率 | |:wp_id: 89 —|:—| | 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 課税標準を6分の1に軽減 | | 一般住宅用地(200㎡超の部分) | 課税標準を3分の1に軽減 |

つまり、古い家でも建物が建っている限り、土地の固定資産税は大幅に安くなっているのです。

しかし、特定空家または管理不全空家として勧告を受けると、この住宅用地特例が解除されます。小規模住宅用地の場合、固定資産税の課税標準が6倍になる計算です(ただし実際の税額は他の負担調整措置との兼ね合いで決まるため、単純に6倍にはならないケースもあります)。

「空き家を壊すと固定資産税が上がるから、古い家をそのまま残しておく」——この動機が全国的に空き家の放置を助長してきた経緯があり、空家特措法はこの構造にメスを入れる法律でもあるのです。


相続登記の義務化(2024年4月〜)

2024年(令和6年)4月1日から、不動産の相続登記が義務化されました。

従来、相続した不動産の登記は任意であり、登記をしないまま放置する例が多くありました。この結果、所有者が不明のまま管理されない土地・建物が全国で増加し、「所有者不明土地問題」として社会問題になっています。

改正不動産登記法により、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務づけられました。正当な理由なく期限内に登記を行わない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

なお、この義務化は改正法施行前(2024年4月1日より前)に発生した相続にも遡及適用されます。施行日から3年以内、つまり2027年3月末までに登記が必要です。


相続した空き家の選択肢

空き家を相続した場合の主な選択肢を整理します。

売却する

最もシンプルな方法です。「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(空き家特例)が適用されれば、譲渡所得から最大3,000万円の特別控除を受けられる場合があります。適用要件(旧耐震基準の建物、相続から3年以内の売却など)の確認が必要です。

解体して更地にする

建物を解体して土地を売却・活用する方法。ただし解体費用(木造で概ね100〜300万円程度)がかかり、住宅用地特例が外れるため固定資産税が上がります。

賃貸する

リフォームして賃貸に出す。安定した収入が得られる反面、初期投資と管理の手間が必要です。

活用する

カフェやシェアオフィス、ゲストハウスなどに改修する。用途変更に伴う建築基準法上の手続きが必要です。

管理を続ける

当面は売却・活用せず、適切に管理を続ける。定期的な通風・清掃・草刈りが必要です。管理代行サービスを利用する方法もあります。

いずれの場合も、まず相続登記を行うことが最初のステップです。登記が済んでいなければ、売却も賃貸もできません。


まとめ

空き家を相続したら、まず相続登記(3年以内に義務)。そして、放置するとどうなるかを知っておくこと。特定空家に指定されれば固定資産税の住宅用地特例が外れ、最終的には行政代執行で解体費用を請求される可能性もあります。

売却・解体・賃貸・活用・管理——どの道を選ぶにせよ、早めの判断と行動が被害の拡大と費用の増加を防ぎます。

本記事は法制度の概要を整理したものであり、個別の事案については不動産の専門家(司法書士、税理士、宅地建物取引士など)にご相談ください。


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参考文献

空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索) / 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」 / 法務省「相続登記の義務化」 / 国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

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カヅキ

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桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。