成年後見制度の岐路 —— 2026年民法改正と八王子市の相談窓口
2026年6月に成立した民法改正で成年後見制度がどう変わるのか、いつから変わるのか、そして八王子市でどこに相談し費用助成をどう使えるのかを整理する。

この記事の目次
高齢の親の財産管理や、判断能力に不安のある家族の契約を誰が支えるか——多くの家庭がいずれ直面するこの問題に関わる成年後見制度が、2026年6月に成立した民法改正で大きな見直しを受けます。この記事では、現行制度の仕組みと今回の改正で何がどう変わるのか、そして八王子市で実際に相談できる窓口と費用助成の内容を、一次情報に基づいて整理します。
成年後見制度とは何か —— 「後見・保佐・補助」という現行の3類型
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分な人を対象に、本人に代わって契約や財産管理といった法律行為を支援し、権利を守るための制度です。八王子市の説明でも「成年後見制度は、障害などで十分な判断能力がない方を対象に、法律面や生活面で、本人の希望にそった支援をし、保護することを目的としています」とされています。
現行制度は、家庭裁判所が関与する「法定後見」と、本人が判断能力のあるうちに自分で後見人を選んで契約しておく「任意後見」の2本立てです。このうち法定後見は、本人の判断能力の程度に応じてさらに3つの類型に分かれます。
| 類型 | 対象となる判断能力の程度 | 支援者の名称 |
|---|---|---|
| 後見 | 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 | 成年後見人 |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分な方 | 保佐人 |
| 補助 | 判断能力が不十分な方 | 補助人 |
3類型のうち「後見」が最も判断能力の低下が重い人向け、「補助」が最も軽い人向けとされ、どの類型が適用されるかは家庭裁判所が本人の状況を踏まえて審判により決定します。後見人・保佐人・補助人にはそれぞれ異なる範囲の同意権・取消権・代理権が与えられており、本人にとって必要な支援の程度に応じて権限の大きさが変わる仕組みになっています。この3類型の構造こそが、今回の民法改正で大きく組み替えられる部分です。
2026年民法改正 —— 成立までの流れと改正の中身
今回の見直しは、法務省の諮問機関である法制審議会の民法(成年後見等関係)部会での検討を経て実現しました。令和7年(2025年)6月10日に「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案」が取りまとめられ、令和8年(2026年)1月27日には同部会第33回で「改正に関する要綱案」が決定されています。
これを受けて政府は令和8年4月3日に民法等改正法案を閣議決定して国会に提出し、令和8年6月17日、参議院本会議で可決・成立しました。公布は6月24日で、法律番号は令和8年法律第45号です。法務省の公式説明によれば、この改正は「成年後見制度と遺言制度の現代化」を目的としたもので、遺言制度側では電子データ等で作成し法務局で保管する「保管証書遺言」の創設なども同時に行われています。
成年後見制度に関する改正の核心は、現行の「後見」「保佐」「補助」という3類型のうち、後見と保佐の制度を廃止し、「補助」の制度に一元化する点にあります。法務省はこれを、本人にとって必要な範囲でのみ利用可能な仕組みへの再編と説明しています。これに伴い、成年被後見人を対象としてきた各種法律の規定を削除するか、「特定補助人を付する旨の審判を受けた者」を対象とする規定に改める作業が、成年後見制度に関連する多数の法律にわたって必要になります。
現行制度では「後見」が最も重い判断能力低下の人を対象とする類型でしたが、改正後はその区分自体がなくなり、必要な支援の範囲を個別に見極める「補助」の枠組みに一本化される——この転換が、今回の改正のもっとも大きな変化点です。後見・保佐・補助という3段階の区分そのものがなくなり、本人ごとに必要な支援の範囲だけを個別に定める仕組みへと組み替えられる点は、制度を利用する家庭だけでなく、後見人等を選任する家庭裁判所の実務にも影響が及ぶ見直しといえます。
施行はいつからか —— 政令で定める期日と項目ごとに異なるスケジュール
改正法が成立・公布されたからといって、すぐに制度が切り替わるわけではありません。法務省の公式ページによれば、成年後見制度の見直しに関する改正は「公布の日(令和8年6月24日)から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」に施行されるとされています。単純に計算すると、上限は2028年12月24日です。ただし、具体的な施行日を定める政令そのものは、この記事の執筆時点(2026年7月)ではまだ公布されておらず、確定していません。
同じ改正法に含まれる遺言制度の見直しは、成年後見制度とは異なるスケジュールが定められている点も押さえておく必要があります。押印の任意化等は公布日から1年以内に、電子データを法務局で保管する「保管証書遺言」の創設等は公布日から3年以内に、それぞれ施行するとされており、ひとつの法律の中でも項目ごとに施行時期が段階的に分かれています。
現時点で確実に言えるのは、「後見・保佐の廃止と補助への一元化」という制度の骨格はすでに法律として確定しているが、実際に施行されて現場の運用が切り替わるまでには、なお一定の準備期間が置かれているということです。法律の公布から施行までの間には、政省令の整備や関係機関への周知といった実務上の準備が必要になるため、成立と同時に窓口の対応が切り替わるわけではありません。今まさに後見制度の利用を検討している家庭にとっては、現行の3類型のもとでの手続きが、当面は変わらず続くことになります。
八王子市の相談窓口 —— 成年後見・あんしんサポートセンター八王子
制度の仕組みを知った上で、実際に「誰に相談すればよいか」も重要な情報です。八王子市では、市の社会福祉協議会が運営する「成年後見・あんしんサポートセンター八王子」が窓口となっています。所在地は八王子市元本郷町三丁目24番1号の市役所8階で、電話は042-620-7365(FAX: 042-623-6421)です。
一般相談は月〜金曜日(土日祝日を除く)の午前8時30分から午後5時まで受け付けており、対象は本人だけでなく、親族や関係機関の職員、介護保険事業者なども含まれます。より専門的な相談をしたい場合は、予約制で1人1回30〜50分程度の専門相談も用意されています。弁護士相談は第2火曜日の午後2時〜4時、司法書士相談は第3火曜日の午後2時〜4時に、市役所内1階の「権利擁護相談室」で行われます。
センターでは『成年後見制度の活用を応援します』というパンフレット(2025年4月発行)を配布しており、実際に申立てを行う際の手引きとしても利用できます。なお、申立て先は本人の住所地を管轄する家庭裁判所で、八王子市の場合は東京家庭裁判所立川支部が窓口になります。制度の説明を聞くだけでなく、実際の手続きの入口としてもこのセンターが最初の相談先になります。
一般相談の対象が本人・親族だけでなく関係機関職員や介護保険事業者にも開かれている点は、家族だけで抱え込まずに専門機関を通じて相談を始められることを意味します。弁護士・司法書士による専門相談は月1回・予約制と回数が限られているため、具体的な申立て手続きの相談を希望する場合は、まず一般相談で状況を伝えるところから始める流れになります。
費用が心配なときは —— 八王子市の成年後見制度利用支援事業
成年後見制度の利用には、家庭裁判所への申立て費用や、後見人等への報酬といった費用がかかります。この負担が難しい世帯のために、八王子市は「成年後見制度利用支援事業」を対象者別に2本立てで実施しています。
一つは65歳以上の人、または市外施設に入所しながら八王子市が介護保険者となっている人を対象とする「高齢者に係る成年後見制度利用支援事業」です。もう一つは65歳未満の人や、居住地特例の決定を受けている人、指定施設入所者などを対象とする「障害者等に係る成年後見制度利用支援事業」です。どちらも、審判請求費用として申立手数料、登記費用、郵便代、診断書作成費(上限6,000円)、鑑定費用(上限100,000円)を助成の対象としています。
障害者等に係る事業では、後見人等への報酬費用助成の上限額も定められており、被後見人1人につき月額20,000円(1回の申請で12か月分が上限)です。申請窓口は障害者福祉課(電話: 042-620-7245)で、本人または代理権を持つ成年後見人が申請書と添付書類を提出し、市が助成の可否を決定したうえで指定口座に振り込まれる仕組みになっています。
審判請求費用と報酬費用のどちらも、申立てや制度利用の段階で自己負担が難しい世帯を想定した助成であり、対象経費の範囲があらかじめ費目ごとに定められているのが特徴です。対象者の区分が65歳以上か65歳未満かで担当窓口が分かれている点も、実際に申請する際には見落とせないポイントです。費用面の不安から利用をためらっている場合でも、まずはこうした助成制度の対象になるかどうかを、あんしんサポートセンターや障害者福祉課に確認してみる価値があります。
まとめ
成年後見制度は、後見・保佐・補助という現行の3類型から、必要な範囲だけを支援する「補助」への一元化へと、2026年6月の民法改正で大きな転換点を迎えました。ただし施行までにはなお準備期間があり、今すぐ制度の使い方が変わるわけではありません。制度の中身がどう変わっていくにせよ、実際に困ったときに相談できる窓口が身近にあることに変わりはなく、八王子市の成年後見・あんしんサポートセンターと費用助成制度は、その入口として今後も重要な役割を担い続けます。制度の名称や区分が変わっても、判断能力に不安を抱える本人と家族を支えるという制度の目的そのものは変わりません。
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- 八王子で暮らすなら知っておきたい法律の話(暮らしの13制度を場面から引く手引き)
参考文献
八王子市公式ホームページ「成年後見制度」 / 裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」 / 法務省「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について / 法務省「民法(成年後見等関係)等の改正に関する要綱案」 / 八王子市公式ホームページ「成年後見制度に関する相談」 / 成年後見・あんしんサポートセンター八王子「成年後見制度のご利用について」 / 八王子市公式ホームページ「成年後見制度(障害のある方)」 / 八王子市高齢者に係る成年後見制度利用支援事業実施要綱
暮らしの手続きで迷ったら
相続や空き家、成年後見といった手続きは制度が入り組んでいて、「まずどこに相談すればいいのか」が分かりにくいものです。桑都手帖は、八王子で暮らす方に向けて制度の基本を記事にまとめています。
具体的なご相談は、まず八王子市の無料専門相談(法律・相続・不動産・税務など/予約制・無料)が入口になります。
こうした暮らしの手続きの記事は、連載「暮らしと法律の手帖」で続けています。
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この記事は連載「暮らしと法律の手帖」第11話です
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