マンション管理の適正化 —— 高経年化する分譲マンションと八王子市の届出・認定制度
旧耐震基準のマンションは東京都の届出義務の対象になることがある。国の管理計画認定制度と合わせて、対象条件・手続き・八王子市の相談窓口を整理する。

この記事の目次
分譲マンションに住んでいる、あるいは所有している場合、自分の建物が東京都の「管理状況届出制度」や国の「マンション管理計画認定制度」の対象になっているかご存じでしょうか。旧耐震基準の建物には届出義務があり、認定を受ければ住宅ローンの金利優遇などのメリットも受けられます。この記事では、それぞれの制度の対象条件と手続き、八王子市での相談窓口を整理します。
なぜ今「マンション管理」の適正化が求められているのか
分譲マンションは区分所有者が共同で建物を維持管理する必要がありますが、区分所有者の高齢化や非居住化(賃貸化)、管理への関心の希薄化により、管理組合の運営が形だけのものになる「管理不全」に陥るケースが全国的に問題視されるようになっています。管理不全に陥ったマンションは修繕積立金が不足し、計画的な大規模修繕ができなくなることで、外壁の剥落やエレベーターの停止といった老朽化・危険化が進むリスクがあるとされています。
特に注意が必要なのが、昭和56年(1981年)5月31日以前、実務上は昭和58年(1983年)12月31日以前に新築された分譲マンションです。これらは「旧耐震基準」にあたり、すでに築40年を超えています。区分所有者の高齢化と建物の高経年化が同時に進む「二つの老い」に直面しているという課題認識は、東京都・国の各種資料に共通して見られます。
背景には、大規模修繕費の高騰という時事的な事情もあります。資材価格・人件費・物流コストの高騰を受けて、大規模修繕工事の見積額が数年前と比べて1.5〜2倍程度になるケースが珍しくなくなっているとする報道があります。当初の修繕積立金の設定額が低く抑えられているケースが多いことに加え、長期的な見直しを怠ると工事費の高騰に積立金が追いつかず、修繕資金が不足する事態が生じやすいと指摘されています。こうした状況を受けて、2020年代に入り、国と東京都が相次いで新たな仕組みを導入し、八王子市を含む各自治体でも独自の推進計画・認定制度の運用が始まっています。
国の制度 — マンション管理適正化法と管理計画認定制度
マンション管理適正化法は平成12年(2000年)に制定された法律で、マンション管理適正化推進計画や管理計画認定制度、マンション管理士の資格などについて規定しています。令和2年(2020年)6月の法改正により、令和4年(2022年)4月1日から新たに「マンション管理計画認定制度」が施行されました。
この制度は、「マンション管理適正化推進計画」を策定した市区町村(政令指定都市を除く市や東京都特別区)または都道府県が認定主体となり、管理組合が策定した管理計画が一定の基準を満たす場合に「適正な管理計画を有するマンション」として認定する仕組みです。認定基準は5分野・計17項目に整理されており、主な内容は次の通りです。
- 管理組合の運営: 総会が年1回以上定期的に開催されていること
- 管理規約: 適切に作成・整備されていること
- 管理組合の経理: 管理費と修繕積立金が区分経理され、修繕積立金の滞納に対する督促などの措置が講じられていること
- 長期修繕計画: 計画期間がおおむね30年以上で、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれる内容であること(令和3年〈2021年〉9月改定の長期修繕計画作成ガイドラインに基づいて審査される)
認定を受けると、市場評価の向上に加え、住宅金融支援機構の「フラット35」の金利引下げ、「フラット50」の利用可能化、マンション共用部分リフォーム融資の金利優遇といった金融面の優遇措置を受けられます。申請の流れは、公益財団法人マンション管理センターなどによる「管理計画認定手続支援サービス」で事前確認を受けたのち、管理計画認定手続支援システムを通じて自治体に申請するというもので、手数料は無料ですが、審査には1か月以上を要する場合があるとされています。
東京都「管理状況届出制度」— 義務の対象と更新のルール
国の認定制度とは別に、東京都独自の仕組みとして「管理状況届出制度」があります。東京都は分譲マンションの管理不全を未然に防止する目的で「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」を平成31年(2019年)3月に制定し、これに基づく届出制度は令和2年(2020年)4月から始まりました。
この制度で重要なのは、認定制度が「任意で申請し、認定を受ける前向きな仕組み」であるのに対し、届出制度は「一定の条件に該当する建物に義務づけられた現状報告の仕組み」であるという違いです。届出義務の対象は、昭和58年(1983年)12月31日以前に新築されたマンションのうち、居住の用に供する住戸が6戸以上のものです。それ以外のマンションも任意で届出が可能なほか、都が管理不全の兆候を認めた場合には対象外のマンションにも届出を求めることができます。
届出内容は、管理組合の運営体制、管理規約の有無、総会の開催状況、管理費・修繕積立金の額の設定状況、計画的な修繕の実施状況などです。届出方法は東京都マンションポータルサイト内のオンライン届出システムを利用するか、書面を郵送・持参する方法のいずれかを選べます。届出内容は5年以内ごとに更新が必要で、記載事項に変更があった場合は速やかな届出が求められます。
都の資料では、管理組合や管理規約が存在しない、管理者が不在、年1回以上の総会が開催されていない、修繕積立金が積み立てられていない、計画的な修繕工事が行われていない、といった状態が「管理不全の兆候があるマンション」として整理されています。届出を行った管理組合は、管理状況に応じてマンション管理士などの専門家の無料派遣を受けられる「マンション管理アドバイザー制度」も利用できます。管理が良好なマンションは1回まで、管理不全の兆候があるマンションは5回まで利用できるとされています。
なお、都内全体で届出対象となる「要届出マンション」は11,459棟にのぼるとする都の資料がありますが、これは都内全域の合計値です。八王子市域だけの対象棟数や実際の届出率について、都・市の公式資料で棟数までは確認できていません。それでも、昭和58年以前築で6戸以上のマンションに心当たりがある場合は、届出義務の対象になっていないか一度確認しておく価値はあります。
八王子市の推進計画と認定の現状
こうした国・都の制度整備を受けて、八王子市も独自の計画と運用を進めています。八王子市は、マンション管理適正化法第3条の2第1項に基づき、「八王子市マンション管理適正化推進計画」を令和4年(2022年)3月に策定しました。少子高齢化・人口減少・管理不全な空き家の増加といった住生活を取り巻く社会情勢の変化に対応する内容として、令和8年(2026年)3月に中間改定が行われています。この計画は、令和3年に国土交通省が示した告示第1286号「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」を根拠としています。
認定制度についても、八王子市は令和4年(2022年)4月から、国の管理計画認定制度に基づく市独自の認定運用を開始しました。認定基準は前述の国基準17項目に準拠しており、手続きの流れは、管理計画センターなどへの事前確認の依頼、事前確認適合証の受領、管理計画認定手続支援システムを通じた市への申請、市からの認定通知の受領、そして認定を受けたマンション情報の専用閲覧サイトでの公表という順序です。審査には1か月以上を要する場合があります。令和8年(2026年)6月15日時点で、八王子市内での認定は「第26号」まで確認されています。認定を受けた場合のメリットとして、市場評価の向上や金融面の優遇措置に加え、八王子市独自の「共用部分LED化改修補助」の対象となる点も挙げられます。
制度を使うには — 相談窓口と支援メニュー
管理組合として認定を目指す場合も、届出制度への対応を検討する場合も、まず頼れるのが八王子市の相談窓口です。八王子市公式ホームページの「分譲マンション」のページでは、次のような支援メニューが案内されています。
- 分譲マンション専門相談: 弁護士・一級建築士などの専門家に無料で相談できる窓口
- 分譲マンション管理セミナー・個別相談会: 管理組合向けのセミナーと個別相談会
- 管理組合向け交流会・公開セミナー: 管理組合同士の情報交換の場
- 東京都マンション改良工事助成(利子補給): 大規模修繕などの工事費用に対する利子補給制度の案内
これらは、前述のマンション管理計画認定制度・管理状況届出制度と並んで、市が分譲マンションの適正管理を後押しする施策群として整理されています。市の総合的な窓口はまちなみ整備部住宅支援課(電話:042-620-7260)、代表番号は042-626-3111です。
自分のマンションが旧耐震基準にあたるかどうか、届出や認定の対象になるかどうか判断がつかない場合は、まずこの窓口に問い合わせてみるのが確実な一歩になります。管理組合の総会で議題に上げる前に、管理規約や修繕積立金の状況を整理し、専門家の意見を聞いておくと、その後の認定申請や届出の準備がスムーズになります。
まとめ
マンション管理をめぐる制度は、国の「マンション管理計画認定制度」、東京都の「管理状況届出制度」、そして八王子市の推進計画という三層構造で組み立てられています。認定制度は任意で申請し金融優遇などのメリットを受ける前向きな仕組み、届出制度は旧耐震基準かつ一定規模以上の建物に義務づけられた現状報告の仕組みという違いを押さえておくと、自分のマンションがどちらの対象になるのか整理しやすくなります。大規模修繕費が高騰する中、制度を正しく理解し、必要に応じて市の相談窓口を活用することが、建物と資産価値を長く維持する近道になります。
参考文献
東京都マンションポータルサイト「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」「管理状況届出制度」 / 国土交通省「住宅:管理計画認定制度」「『マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針』の策定について」 / 八王子市公式ホームページ「八王子市マンション管理適正化推進計画」「マンション管理計画認定制度について」「分譲マンション」 / 日本経済新聞「マンション修繕、借金頼み急増」
暮らしの手続きで迷ったら
相続や空き家、成年後見といった手続きは制度が入り組んでいて、「まずどこに相談すればいいのか」が分かりにくいものです。桑都手帖は、八王子で暮らす方に向けて制度の基本を記事にまとめています。
具体的なご相談は、まず八王子市の無料専門相談(法律・相続・不動産・税務など/予約制・無料)が入口になります。
こうした暮らしの手続きの記事は、連載「暮らしと法律の手帖」で続けています。
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