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暮らしと法律 · 公開: 2026.08.15 · 7分で読めます

高額療養費制度が2026年8月に変わった —— 自己負担はいくら増えるのか

2026年8月から高額療養費制度の自己負担限度額が引き上げられました。所得区分ごとの増加額、新設された「年間上限」、窓口で困らないための準備を整理します。

天秤ばかりをモチーフにした和モダンな静物イラスト

入院や手術で医療費が高額になったとき、家計の負担を一定額に抑えてくれる「高額療養費制度」。この自己負担の上限額が、2026年8月から引き上げられました。どの所得区分でいくら上がったのか、逆に新しく設けられた仕組みは何か、そして窓口で慌てないために今何をしておけばよいのかを、順番に整理します。


何が変わったのか —— 2026年8月から自己負担の上限が上がった

高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払う自己負担額が、ひと月のうちに一定の上限を超えた場合、その超過分が払い戻される仕組みです。年齢や所得に応じて上限額が区分されており、大きな病気やけがで医療費がかさんだときの「歯止め」として機能してきました。

この上限額が、令和8年(2026年)8月1日から全所得区分で引き上げられました。見直しは唐突に決まったものではなく、令和7年12月25日に開かれた第209回社会保障審議会医療保険部会・第9回高額療養費制度の在り方に関する専門委員会での議論を経て、令和8年度予算案の閣議決定に盛り込まれ実施されたものです。

見直しは2026年8月の一度きりで終わるわけではなく、2027年8月には所得区分の細分化や70歳以上の外来自己負担限度額の見直しも予定されており、段階的に制度を変えていく計画になっています。すでに医療機関にかかっている方や、持病で通院を続けている方にとっては、家計への影響を早めに把握しておきたい変更です。

対象になるのは、協会けんぽ・健康保険組合・共済組合・国民健康保険など、公的医療保険に加入しているすべての人です。会社員も自営業者も、年齢を問わず制度そのものは同じ枠組みで動いており、違うのは所得区分によって上限額が変わる点だけです。普段は医療費が上限に届かない人でも、急な入院や手術でひと月の医療費が跳ね上がったときに、この上限額の違いが実際の負担額として表れてきます。日頃は制度の存在すら意識しない人が大半でも、いざというときの負担額を左右する重要な仕組みだといえます。


所得区分別に見る、自己負担限度額はいくら上がったか

具体的にいくら上がったのか、69歳以下の方の月額自己負担限度額(3割負担の場合の目安)で見てみます。年収約1,160万円以上の区分では、改正前の252,600円+医療費の1%から、改正後は270,300円+1%へ、17,700円の引き上げとなりました。年収約770万円〜1,160万円の区分では167,400円から179,100円へ11,700円増、年収約370万円〜770万円の区分では80,100円から85,800円へ5,700円増です。

一方、年収約370万円までの区分は57,600円から61,500円へ3,900円増、住民税非課税世帯は35,400円から36,900円へ1,500円増にとどまります。上位所得の区分ほど引き上げ幅が大きく、所得が低い区分ほど増加額が小さくなるよう設計されている点が、今回の改正の特徴です。

例えば年収500万円台の一般的な会社員が、ひと月に100万円の医療費がかかる手術を受けたケースを考えると、改正前なら自己負担の上限は80,100円+医療費の1%相当でしたが、改正後は85,800円+1%相当となり、上限だけで見れば5,700円ほど負担が増える計算になります。数千円から数万円という金額そのものより、「区分によって増え方が違う」という制度の設計を知っておくことが、家計への影響を見積もる第一歩になります。

自分がどの区分に当てはまるかは、給与明細の標準報酬月額や、確定申告・住民税決定通知書に記載された所得額でおおよそ判断できます。毎年所得が変動する自営業者や、定年後に収入が大きく変わった方は、区分が去年までと違っている場合もあるため、制度が変わったこのタイミングで一度確認しておくと安心です。


新設された「年間上限」と多数回該当のしくみ

今回の改正では、負担が増える面だけでなく、新しいセーフティネットも導入されました。それが「年間上限」です。毎年8月から翌年7月までの12か月間を対象に、月ごとの自己負担が上限額に届かない月が続いていたとしても、その1年間の自己負担の合計額が所得区分ごとに定められた年間上限に達した場合、それ以降にかかった自己負担分は保険者(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険など)から還付を受けられる仕組みです。

年間上限額は所得区分によって異なり、年収約370万円までの区分では約36万9,000円、年収約370万円〜770万円の区分では53万円、年収約770万円〜1,160万円の区分では約107万4,600円、年収約1,160万円以上の区分では約162万1,800円が目安とされています。慢性的な持病があり、月ごとの上限には達しないものの通院・投薬が長期に続くような方にとっては、この年間上限が新たな支えになります。

もう一つ、直近12か月以内に高額療養費の支給(上限到達)が3回以上あった場合に、4回目以降の自己負担がさらに軽減される「多数回該当」という仕組みも従来からありますが、2026年8月の改正ではこの多数回該当の金額は原則として現行水準が維持されています。69歳以下の場合、多数回該当時の自己負担限度額は年収約1,160万円以上の区分で140,100円、年収約770万円〜1,160万円の区分で93,000円、年収約200万円〜770万円の区分で44,400円、年収200万円未満の区分で34,500円が目安です。年収200万円未満の区分についてはさらに、2027年8月から引き下げが予定されています。年間上限とあわせて、長期療養が必要な人の負担を抑える二重のしくみが用意された形です。


なぜ今、負担が引き上げられたのか —— 低所得世帯への配慮とあわせて

厚生労働省は今回の見直しの背景として、高齢化の進展に伴う医療費総額の増加、医療保険財政の持続可能性の確保、そして負担の公平性の向上を挙げています。医療費全体が伸び続けるなかで、現役世代を含めた保険料負担とのバランスをどう取るかという議論の結果として、自己負担限度額の引き上げが選ばれた形です。

ただし、負担増だけが一方的に進んだわけではありません。標準報酬月額が15万円以下であることが確認できた世帯には、通常より低い年間上限41万円を適用する特例が設けられており、低所得層への配慮措置が同時に導入されています。年間上限の新設自体も、長期療養で医療費がかさみやすい人を保護する狙いがあり、上限額の引き上げと、セーフティネットの拡充が両輪で進められた改正だといえます。


窓口で困らないために —— マイナ保険証と限度額適用認定証

制度の中身を知っていても、実際に医療機関の窓口でどう扱われるかが分からないと、いざというときに戸惑います。まず知っておきたいのは、マイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)を窓口で提示すれば、限度額適用認定証を別途申請しなくても、その場の支払いが自己負担限度額までに自動的に抑えられるという点です。事前の手続きなしで、高額療養費制度の恩恵をその場で受けられます。

マイナ保険証を使わない場合や、紙の健康保険証を使い続けている場合は、従来どおり「限度額適用認定証」の事前申請が必要です。認定証がないまま高額な医療費をいったん窓口で立て替えて支払った場合は、後日あらためて「高額療養費」の支給申請を行うことで、超過分の還付を受けることになります。

八王子市の国民健康保険に加入している方は、「高額療養費限度額適用認定申請書」を八王子市役所(元本郷町三丁目24番1号)の窓口に提出することで、認定証の交付を受けられます。申請は世帯単位ではなく個人単位で行う必要があり、世帯内に対象者が複数いる場合は人数分の申請が必要です。国民健康保険税に滞納がある場合や所得の申告がない場合は交付を受けられないことがあるため、心当たりのある方は早めに手続きを済ませておくと安心です。

すでに高額な医療費をいったん立て替えて支払ってしまった場合も、諦める必要はありません。八王子市の国民健康保険では、高額療養費の対象になると、診療を受けた月からおおむね2〜3か月後に世帯主あてに支給申請書が自動的に送られてくる仕組みになっています。自分から動かなくても案内が届くという点は、覚えておいて損はありません。

本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)と振込先口座の情報を添えて申請書を提出すれば、指定した口座に払い戻しを受けられます。申請窓口は市役所本庁舎1階12番の保険年金課給付担当のほか市民部各事務所(斎場事務所を除く)でも受け付けており、手続きに迷ったときは電話(042-620-7235)でも確認できます。通知が届いてから慌てて調べるより、制度が変わったこの機会に一度目を通しておくと、いざというときに落ち着いて対応できます。


まとめ

高額療養費制度は、2026年8月から自己負担の上限額が全所得区分で引き上げられる一方、年間を通じた負担に上限を設ける「年間上限」という新しいしくみも同時に導入されました。負担増と保護策が両輪で動いている改正であり、単純に「負担が増えた」とだけ捉えると見落としてしまう部分もあります。自分の所得区分でいくら変わるのかを一度確認し、マイナ保険証の利用や限度額適用認定証の準備を済ませておけば、実際に医療費がかさむ場面になっても落ち着いて窓口に向かえるはずです。制度は2027年8月にも次の段階の見直しを控えているため、今回の変更点を押さえておくことが、そのときの理解にもつながります。


参考文献

厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」 / 全国健康保険協会(協会けんぽ)「【制度改正】令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」 / 八王子市「高額療養費及び医療費の自己負担限度額について」 / 八王子市「高額な医療費を支払いました。国民健康保険からの支給の手続きはどうすればいいですか。」

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。