相続登記義務化とその先 —— 住所変更登記も始まった八王子市の不動産手続き
2024年4月の相続登記義務化に続き、2026年に所有不動産記録証明制度と住所等変更登記の義務化が始まる。期限・過料・費用の目安と、八王子市の相談窓口を整理する。

この記事の目次
不動産の登記制度が大きく変わりつつあります。2024年4月に始まった相続登記の義務化に続き、2026年2月には所有不動産記録証明制度、2026年4月には住所等変更登記の義務化が施行されます。いずれも「誰の不動産か」を登記簿上ではっきりさせるための改革で、期限を過ぎると過料の対象になることもあります。この記事では、何がいつまでに必要になるのか、費用はどれくらいか、八王子市ではどこに相談できるのかを整理します。
何がいつから変わるのか — 不動産登記制度の三段改革
不動産の相続や住所変更があっても登記が更新されず、登記簿を見ただけでは所有者に連絡がつかない「所有者不明土地」が全国で問題になっています。国土交通省の令和6年(2024年)調査によれば、登記簿だけでは所有者の所在が判明しない土地の割合は全国で23%に及ぶとされています。発生原因の内訳を見ると、63%が「相続の際に登記の名義変更が行われないこと」、29%が「所有者の転居時に住所変更登記が行われないこと」とされており、相続と住所変更の両方に手を打たなければ問題は解消しないことが分かります。
こうした事態に対応するため、法務省は不動産登記制度の大改革を段階的に進めています。まず令和6年(2024年)4月1日に相続登記の申請義務化が施行されました。続いて令和8年(2026年)2月2日には、相続人が被相続人名義の不動産を把握しやすくする所有不動産記録証明制度が始まります。そして令和8年(2026年)4月1日には、住所等変更登記の義務化が施行され、相続だけでなく引っ越しなどによる住所変更も登記の対象になります。三つの制度は別々のものではなく、「所有者が分かる登記簿」を作るための一連の改革として位置づけられています。
相続登記の義務化 — 期限と過料、簡易な「相続人申告登記」
相続登記の義務化では、相続人は自己のために相続の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をすることが義務付けられました。遺産分割が成立した場合は、その成立日から3年以内に、遺産分割の内容を踏まえた登記を申請する追加の義務も生じます。
注意したいのは、施行日(2024年4月1日)より前に発生していた相続についても義務化の対象になる点です。この場合は令和9年(2027年)3月31日までに登記をする必要があります。正当な理由なく義務を怠った場合は、10万円以下の過料の適用対象となります。過料は行政上の秩序罰であり、刑事罰とは異なりますが、法務省は正当な理由の例として、相続人が極めて多数で戸籍収集に時間を要する場合や、遺言の有効性・遺産の範囲が争われている場合、申請義務を負う者自身が重病である場合、DV被害者等で避難を余儀なくされている場合、経済的困窮により登記費用を負担できない場合などを示しています。
期限内に正式な相続登記の申請が難しい場合のために、「相続人申告登記」という簡易な義務履行手段も新設されました。登記官に対し、自らが登記記録上の所有者の相続人であることを、必要な戸籍の証明書等を添付して申し出ることで義務を履行したことになります。特定の相続人が単独で申出可能で、押印・電子署名は不要、Webブラウザ上での手続も可能です。法定相続人の範囲を確定させる必要がなく、登録免許税もかかりません。ただし相続人申告登記は不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり抵当権を設定したりする場合には、別途正式な相続登記の申請が必要になります。
住所等変更登記の義務化と「スマート変更登記」
2026年4月1日に施行される住所等変更登記の義務化は、不動産の所有権登記名義人(個人・法人とも)が対象です。氏名(名称)または住所について変更があったときは、その変更日から2年以内に変更登記の申請をすることが義務付けられます。施行日より前に生じていた住所等の変更も対象となり、この場合は令和10年(2028年)3月31日までに変更登記をする必要があります。
正当な理由なく申請を怠った場合は5万円以下の過料の適用対象となりますが、これは登記官による催告があり、その期間内に申請がされなかった場合に限られます。正当な理由の例は相続登記義務化のケースと同様のほか、後述する「検索用情報の申出」済みで職権手続が未了の場合や、行政区画の変更による住所変更の場合なども含まれます。
負担を軽くする仕組みとして「スマート変更登記」があります。個人の場合、生年月日・メールアドレス等をオンラインまたは書面で法務局に1回登録する「検索用情報の申出」を行うと、以降は法務局が住民基本台帳ネットワークに少なくとも2年に1回照会して住所等の変更の有無を確認し、変更があれば所有者に確認メールを送付のうえ、承認を経て職権で変更登記を行ってくれます。法人の場合は、商業・法人登記において「会社法人等番号」の登記があれば、住所変更等が自動的にスマート変更登記の対象になります。海外居住者や会社法人等番号を持たない法人は、法務局側で変更を確認する手段がないため、自ら変更登記を申請する必要がある点には注意が必要です。
費用の目安と、もう一つの新制度「所有不動産記録証明」
相続登記を申請する際にかかる登録免許税は、原則として不動産の固定資産税評価額の0.4%です。通常の売買等による所有権移転登記の税率が原則2.0%であることと比べると、低い税率が設定されています。相続人申告登記や、法務局側が行うスマート変更登記の職権手続には登録免許税はかかりません。
2026年2月2日に施行される所有不動産記録証明制度は、相続登記の義務化に伴い新設された、相続人の手続的負担を軽くするための制度です。登記官が、特定の人(被相続人等)が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、全国の登記データから一覧的にリスト化し、証明書として交付します。請求できるのは、所有権の登記名義人本人、その相続人その他の一般承継人、および代理人です。
証明の対象は所有権の登記がされている不動産に限られ、「表示に関する登記」のみの不動産(未登記建物等)や、コンピュータ化されていない登記簿の不動産は検索対象に含まれません。手数料は、書面請求が検索条件1件・証明書1通あたり1,600円、オンライン請求は郵送交付が1,500円、窓口交付が1,470円です。相続財産の中に、これまで把握していなかった不動産が含まれているかもしれないと感じたときに、まず利用を検討する価値のある制度といえます。
八王子市で相談する — 窓口と、空き家問題との接点
八王子市内の不動産の登記事務を管轄するのは東京法務局八王子支局です。所在地は八王子市明神町4-21-2の八王子地方合同庁舎1階・2階で、電話番号は042-631-1377です。八王子市公式ホームページの「相続登記について」のページでも、専門的な相続登記の手続き自体は市役所ではなく東京法務局八王子支局が担当する旨が案内されています。固定資産税に関する手続きの問い合わせ先としては、財務部資産税課(042-620-7251)が案内されています。
相続登記の義務化は、八王子市が抱える空き家問題とも関係が深いテーマです。市内は戸建住宅が多く、昭和から平成初期にかけて開発された住宅地が広範に存在し、当時の購入者が高齢化する中で、相続や施設入所をきっかけに空き家化するケースが増えているとされます。八王子市公式ホームページの「空き家を相続した・する予定のある方へ」のページでは、昭和56年5月31日以前に建築され、相続により取得し、被相続人が居住していた家屋を対象に、対象家屋・土地を譲渡した際の譲渡所得から最大3,000万円を控除する「相続空き家の3,000万円特別控除」(令和9年12月31日までの譲渡が要件)や、耐震性のない住宅の解体費用を補助する「未耐震空き家除却支援補助金」といった支援制度が案内されています。相続登記が放置され所有者が実質的に不明化した空き家は、こうした支援制度の活用や売却・賃貸といった利活用の前提となる「誰が所有者か」の確定自体が難しくなるため、相続登記の義務化は空き家対策の入口としても位置づけられています。
なお、東京法務局は「表題部所有者不明土地」(不動産登記簿の表題部に所有者の氏名・住所の記載を欠く、または記載が正常に特定できない土地)について、法律に基づき所有者等の探索を実施しています。探索の公告対象として八王子市内では暁町一丁目・二丁目、小津町、上川町、南浅川町、上恩方町、堀之内など複数の地域が挙げられており、「探索の開始の公告」「登記前の公告」「登記後の公告」の段階を経て手続きが進められます。
相続した不動産の登記を済ませたあと、実際にその家や土地をどう活用するかという段階では、八王子市が実施する「空き家マッチング支援事業」も選択肢になります。空き家所有者と利用希望者がそれぞれ市にデータベース登録を行い、市がマッチングを仲介する仕組みで、家財道具の整理・処分や改修工事の費用の一部を補助する「空き家利活用促進整備補助金」も別途用意されています。相続登記によって所有者が明確になっていることは、こうした利活用の手続きを進めるうえでの前提条件にもなります。
まとめ
相続登記の義務化(2024年4月)に続き、住所等変更登記の義務化(2026年4月)が始まることで、不動産の所有者情報を最新の状態に保つことは、罰則の有無にかかわらず所有者側の基本的な責務になりつつあります。期限を過ぎると過料の対象になる一方、相続人申告登記やスマート変更登記といった負担の軽い手段も用意されているため、まずは自分の不動産や相続した不動産の登記状況を確認することから始めるとよいでしょう。八王子市内であれば東京法務局八王子支局が窓口となり、空き家に関する支援制度は市役所の各担当課で案内されています。
参考文献
法務省「相続登記の申請義務化について」 / 法務省「相続人申告登記について」 / 法務省「住所等変更登記の義務化について」 / 法務省「スマート変更登記のご利用方法」 / 法務省「所有不動産記録証明制度について」 / 東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月)」 / 東京法務局「八王子支局」 / 八王子市ホームページ「相続登記について」 / 八王子市ホームページ「空き家を相続した・する予定のある方へ」
暮らしの手続きで迷ったら
相続や空き家、成年後見といった手続きは制度が入り組んでいて、「まずどこに相談すればいいのか」が分かりにくいものです。桑都手帖は、八王子で暮らす方に向けて制度の基本を記事にまとめています。
具体的なご相談は、まず八王子市の無料専門相談(法律・相続・不動産・税務など/予約制・無料)が入口になります。
こうした暮らしの手続きの記事は、連載「暮らしと法律の手帖」で続けています。
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