本文へスキップ
あと8分 購読

暮らしと法律 · 公開: 2026.09.30 · 8分で読めます

不動産登記の義務化 —— 相続登記(2024年施行)と住所等変更登記(2026年施行)、八王子で不動産を持つなら今何をすべきか

相続登記(2024年4月施行)に続き、住所等変更登記(2026年4月施行)も義務化された。過料の対象になる条件、経過措置の期限、負担を軽くする新制度、八王子市内の相談窓口までを整理する。

重なり合う書類のレイヤーを描いた和モダンな抽象イラスト

連載「暮らしと法律の手帖」第19回|この連載をまとめて読む

実家の名義が、亡くなった親のままになっていないだろうか。あるいは結婚や引っ越しで住所や姓が変わったのに、不動産の登記簿はそのままになっていないだろうか。どちらも「いつかやろう」で済ませられる話ではなくなった。相続登記の申請は2024年4月から、住所等変更登記の申請は2026年4月から、どちらも法律上の義務になっている。

正当な理由なく放置すると、相続登記は10万円以下、住所等変更登記は5万円以下の過料の対象になりえます。ただし没収されるわけではなく、罰則は登記官の催告に応じなかった場合に限られる行政上のペナルティです。本稿では、何を・いつまでに・どうすればよいかを、経過措置の期限や負担軽減の新制度、八王子市内の相談窓口まで含めて整理します。

相続登記の申請義務化(2024年4月1日施行)とは

相続(遺言を含む)によって不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をしなければなりません。令和6年(2024年)4月1日に施行された制度で、遺産分割が成立した場合は、その成立日から3年以内に、分割内容を踏まえた登記をする必要があります。

見落とされがちなのが経過措置です。施行日より前に発生していた相続で、まだ相続登記がされていないものも義務化の対象になります。この場合の申請期限は、施行日または相続を知った日のいずれか遅い方から3年、かつ令和9年(2027年)3月31日までのいずれか遅い方とされています。つまり、何十年も前に亡くなった祖父母名義の土地であっても、義務化の対象から外れるわけではありません。

正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料の対象となりますが、これは登記官が催告しても応じない場合に限られます。法務省のQ&Aでは、正当な理由として認められ得る例に、相続人が極めて多数で戸籍謄本等の収集に時間を要する場合や、遺産分割の話し合いが遺言の有効性をめぐる争いで進まない場合、相続人自身が重病である場合などを挙げています。

相続人申告登記 —— 戸籍を集めきれない人の簡易ルート

従来の相続登記は、被相続人の出生から死亡までの戸籍関係書類をすべて集める必要があり、相続人が多い場合は負担が大きくなります。これを緩和するために、2024年4月の義務化と同時に「相続人申告登記」という制度が新設されました。

この制度は、登記官に対して(1)所有権登記名義人について相続が開始したこと、(2)自らがその相続人であること、の2点を申し出るだけで、相続登記の申請義務を履行したものとみなす仕組みです。必要な戸籍書類も、申出人が登記簿上の所有者の相続人であることが確認できる範囲で足り、被相続人の出生から死亡までの全戸籍までは求められません。

ただし注意したいのは、相続人申告登記があくまで「義務を履行したとみなす」簡易な申出にすぎず、不動産の権利関係を確定させる本来の相続登記(遺産分割後の所有権移転登記)とは別物だという点です。将来その不動産を売却したり担保に入れたりする際には、改めて正式な相続登記が必要になります。「とりあえず義務は果たした」状態と「不動産を自由に動かせる」状態は、イコールではありません。

住所等変更登記の義務化(2026年4月1日施行)と「うっかり違反」を防ぐ仕組み

相続登記の義務化から2年後、令和8年(2026年)4月1日にもう一つの義務化が施行されました。本稿執筆時点(2026年9月)から見て、まだ半年に満たない、桑都手帖読者にとって最も新しい制度改正にあたります。

不動産の所有権登記名義人(個人・法人とも)は、氏名(名称)または住所に変更があった日から2年以内に、変更の登記を申請しなければなりません。結婚による改姓や、転居による住所変更がこれにあたります。施行日より前に住所等を変更していて、まだ変更登記をしていない場合も義務化の対象となり、この場合の申請期限は令和10年(2028年)3月31日までとされています。正当な理由なく義務を怠ったときは5万円以下の過料の対象になりますが、こちらも登記官による催告を経てもなお申請がない場合に限られます。制度の背景には、所有者不明土地の発生原因の約3分の1を「住所変更登記の未了」(転居や結婚による姓の変更が登記に反映されていないケース)が占めているという事情があります。

転居や改姓のたびに法務局へ出向くのは現実的ではありません。そこで用意されているのが「スマート変更登記」という仕組みです。個人の場合、「検索用情報の申出」をしておけば、法務局が少なくとも2年に1回、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)に照会して住所等の変更有無を確認します。変更が確認された場合はメールまたは書面で本人に確認を取り、同意を得たうえで登記官が職権で変更登記を行います。

申出はオンライン(「かんたん登記・供託申請」サイトで生年月日・メールアドレス・地番等を入力、電子証明書は不要)または書面で行えます。法人の場合も、「会社法人等番号」の申出により、商業・法人登記上の住所等変更情報が不動産登記に自動反映される仕組みが用意されています。一度申出をしておけば、以後は自分で登記申請をしなくても義務違反に問われなくなります。

所有不動産記録証明制度(2026年2月2日開始) —— まず「何を持っているか」を確認する

相続登記をしようにも、被相続人がどこにどれだけの不動産を所有していたか把握できないケースは少なくありません。この課題に対応するため、令和8年(2026年)2月2日から「所有不動産記録証明制度」の運用が始まりました。

この制度は、特定の被相続人(または本人)が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、法務局が一覧的にリスト化し、証明書として交付するものです。請求できるのは、所有権の登記名義人本人(法人含む)、その相続人その他の一般承継人(法人含む)、そして委任状を持つ代理人です。管轄の制限がなく、全国どこの法務局・地方法務局でも請求でき、オンライン・郵送・窓口のいずれにも対応しています。

手数料は検索条件1件・1通あたり、書面請求(収入印紙)1,600円、オンライン郵送交付1,500円、オンライン窓口交付1,470円です。相続登記の義務化に伴い、相続人が被相続人名義の不動産を把握しやすくすることで、登記漏れの防止と手続き負担の軽減を狙って創設された制度です。「まず自分(あるいは親)が何を持っているか」を確認するための、最初の一歩として使えます。

八王子市内の相談窓口と、よくある誤解

不動産登記の管轄窓口は東京法務局八王子支局です。所在地は八王子市明神町四丁目21番2号、八王子地方合同庁舎の1階・2階にあり、京王線「京王八王子」駅から徒歩5分。電話は代表042-631-1377、証明書発行窓口専用は042-648-7355です。不動産登記のほか、商業・法人登記、電子認証、供託、遺言書保管、法定相続情報などを取り扱っています。八王子市の公式ホームページでも、固定資産税の納税義務者変更手続きの案内の一部として、同支局への問い合わせと法務省の相続登記義務化特設ページへのリンクが掲載されています。

不動産登記そのものの手続き窓口ではありませんが、空き家の所有者・相続予定者を対象にした「住まいの活用相談所(住まカツ)」も、八王子市が地元不動産団体と協定を結んで開設したワンストップ相談窓口です。住まいの流通・管理・継承に関する相談を、(公社)東京都宅地建物取引業協会第12ブロック八王子支部(042-548-1251、月〜金9:30〜16:30)や、(公社)全日本不動産協会東京都本部多摩南支部(042-623-7357、月・火・木・金10:00〜16:00)で受け付けています。

義務化をめぐっては、報道や不動産・相続系サイトの解説記事が先行しており、誤解も広がりやすくなっています。まず、「相続登記をしないと不動産が没収される」というのは誤りです。公式には没収の規定はなく、罰則はあくまで10万円以下(住所等変更登記は5万円以下)の過料という行政上のペナルティであり、刑事罰の「罰金」とは異なります。しかも、登記官の催告を経ても応じない場合に限られます。

また、「住所変更登記の義務化は結婚・引っ越しのたびに毎回自分で法務局へ行く必要がある」という理解も正確ではありません。前述のスマート変更登記の申出をしておけば、法務局が職権で対応するため、都度の自己申請は不要になります。さらに、「相続登記さえ済ませれば不動産を売却・担保にできる」という誤解にも注意したいところです。相続人申告登記はあくまで義務履行のみなし措置であり、権利関係を確定する本来の相続登記(遺産分割に基づく所有権移転登記)とは別物だからです。

東京都消費生活総合センターは、こうした法改正を口実にした「原野商法の二次被害」など、不当な勧誘トラブルが報告されていることも公式に発信している。「今すぐ登記しないと過料になる」といった不審な勧誘を受けたときは、消費者ホットライン「188(いやや)」や、東京法務局・司法書士会などの公的窓口に確認することが呼びかけられている。

まとめ

相続登記(2024年4月施行)と住所等変更登記(2026年4月施行)は、いずれも「所有者不明土地」を防ぐための一体の制度改正であり、経過措置により過去の未登記分も義務化の対象になります。相続登記には令和9年3月31日、住所等変更登記には令和10年3月31日という経過措置の期限があり、正当な理由なく放置すると過料の対象になりえます。一方で、相続人申告登記やスマート変更登記、所有不動産記録証明制度といった負担軽減の仕組みも用意されています。まずは所有不動産記録証明制度で「何を持っているか」を確認し、迷ったときは東京法務局八王子支局や住まカツといった窓口を早めに頼るとよいでしょう。


この連載の他の記事

連載「暮らしと法律の手帖」は、八王子で暮らすうえで知っておきたい制度や手続きを、身近な場面から一つずつ取り上げるシリーズです。


参考文献

法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」「相続登記の申請義務化に関するQ&A」「住所等変更登記の義務化特設ページ」「住所等変更登記の義務化について」「住所等変更登記の義務化に関するQ&A」「スマート変更登記のご利用方法」「所有不動産記録証明制度について」「不動産登記簿における相続登記未了土地調査について」 / 東京法務局「八王子支局」 / 東京くらしねっと(東京都消費生活総合センター)「所有者不明土地の解消のための法改正〜相続登記申請の義務化など〜」 / 八王子市ホームページ「相続登記について」「八王子市空き家ワンストップ相談窓口『住まいの活用相談所(住まカツ)』」 / 政府広報オンライン「所有者不明土地 相続や住所等の変更の未登記により全国で発生」

暮らしの手続きで迷ったら

相続や空き家、成年後見といった手続きは制度が入り組んでいて、「まずどこに相談すればいいのか」が分かりにくいものです。桑都手帖は、八王子で暮らす方に向けて制度の基本を記事にまとめています。

具体的なご相談は、まず八王子市の無料専門相談(法律・相続・不動産・税務など/予約制・無料)が入口になります。

こうした暮らしの手続きの記事は、連載「暮らしと法律の手帖」で続けています。

次の一本が出たら、お知らせします

記事の更新だけをお送りします。お問い合わせとは別の窓口です。

受け取る頻度

確認メールのリンクを開くと購読が完了します。解除はいつでもできます。

執筆・取材のご依頼、記事へのご指摘は お問い合わせ からどうぞ。

この記事は連載「暮らしと法律の手帖」第20話です (全24話・更新中)

実家の蔵を片付けるといくらかかる? 費用の目安と骨董品・刀剣を見逃さない手順

仕舞手帖 · 8分

読む

Support

この記事が面白かったら、書き手の活動を応援していただけると励みになります。

※ Stripe決済(合同会社月香が運営)で安全にお支払いいただけます

カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。