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暮らしと法律 · 公開: 2026.10.06 · 8分で読めます

生前贈与制度の改正 —— 相続時精算課税に基礎控除110万円、暦年贈与の加算期間は7年へ

2024年1月から、相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設され、暦年課税の生前贈与加算は3年から7年へ延長された。制度の仕組みと、どちらを選ぶべきかの考え方、八王子市内の相談窓口までを整理する。

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2024年1月以降の贈与から、相続時精算課税には年110万円の基礎控除が新設され、暦年課税の生前贈与加算は3年から7年へ延びました。どちらの制度も「年110万円までなら非課税」という共通点を持つようになった一方、相続財産への戻し方は正反対です。本稿では、何がどう変わったか、どちらを選べばよいか、そして八王子市内で相談できる窓口までを整理します。

結論 —— 2024年1月の贈与から、何がどう変わったか

令和5年度税制改正(令和5年3月31日法律第3号)により、令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から、2つの制度が同時に見直されました。ひとつは相続時精算課税への基礎控除110万円の新設、もうひとつは暦年課税における生前贈与加算期間の3年から7年への延長です。

日本の贈与税には、贈与を受けた人が選べる2つの課税方式があります。毎年110万円までの贈与が非課税になる「暦年課税」と、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について2,500万円までを贈与時非課税とし、贈与者が亡くなった際に相続財産へ合算して精算する「相続時精算課税」です。今回の改正は、暦年課税は生前贈与加算の期間を延ばして節税効果を薄め、相続時精算課税は基礎控除を新設して使いやすくするという、方向性の異なる見直しを同時に行いました。

財務省・国税庁は、この改正の狙いを「資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築」と説明しています。贈与と相続のどちらで財産を移転しても税負担が変わらないようにし、高齢世代が保有する資産を若年世代へより早く移転させることを意図した見直しです。適用開始日はいずれも2024年1月1日以後の贈与からですが、生前贈与加算の延長には段階的な経過措置があり、影響が完全に及ぶのは2031年1月1日以後の相続からになります。

相続時精算課税に基礎控除110万円 —— 年110万円以内なら相続財産に加算されない

相続時精算課税を選択すると、特別控除2,500万円(生涯累計・複数年にわたり使用可)を超える部分に一律20%の贈与税が課され、贈与者の相続発生時にはその贈与財産の価額を相続財産に合算して相続税を計算します(納めた贈与税は相続税額から控除されます)。2024年1月1日以後の贈与からは、この特別控除2,500万円とは別枠で、年110万円の基礎控除が新設されました。

基礎控除110万円以内の贈与には、2つの利点があります。ひとつは、その年の贈与税申告が不要になること。もうひとつは、相続発生時に相続財産へ加算されないことです。暦年課税の生前贈与加算とは異なり、何年前の贈与であっても基礎控除内であれば加算対象になりません。適用要件は従来から変わらず、贈与者は贈与年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母、受贈者は同時点で18歳以上の直系卑属(子・孫等の推定相続人または孫)であることが条件です。

相続時精算課税を初めて選択する年は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に「相続時精算課税選択届出書」を戸籍謄本等とともに所轄税務署へ提出する必要があります。注意したいのは、一度選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税へ後から戻すことができない(撤回不可)という点です。基礎控除110万円を超えて贈与を受けた年は、超えた部分について贈与税の申告・納税が必要になります(税率は一律20%、特別控除2,500万円の残枠があればそこから先に控除されます)。

暦年課税の生前贈与加算、3年から7年へ —— 経過措置で段階的に延長

暦年課税では従来、相続開始前3年以内に贈与された財産は、贈与税を払っていたかどうかにかかわらず相続財産に合算(生前贈与加算)され、相続税の課税対象に戻されていました。2024年1月1日以後の贈与からは、この生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長されています。

延長された4年間分(相続開始前3年超7年以内に受けた贈与)については、合計100万円まで相続財産に加算しない緩和措置が設けられました。加算対象者は、相続・遺贈によって財産を取得した人(法定相続人・代襲相続人、遺言により財産を受け取った受遺者を含む)に限られます。相続や遺贈で財産を取得していない孫やひ孫への生前贈与は、原則として生前贈与加算の対象になりません。

この延長には段階的な経過措置があります。2026年12月31日までの相続は加算期間が従来どおり相続開始前3年以内のまま、2027年1月1日から2030年12月31日までの相続は「2024年1月1日から相続開始日まで」(3年超7年未満の範囲で徐々に延びる)、2031年1月1日以後の相続になってようやく加算期間が完全に相続開始前7年以内となります。つまり本稿執筆時点(2026年9月)では、生前贈与加算はまだ「3年ルール」のままです。ただし段階的な移行自体はすでに始まっており、早期の贈与ほど加算対象から外れやすいという実務上の含意は、今から効いてきます。

暦年課税と相続時精算課税、どちらを選ぶか —— 家業継承の視点も含めて

2024年以後は両制度とも「年110万円まで非課税」という共通点を持つに至りましたが、性質は異なります。暦年課税は毎年の基礎控除110万円を使えますが、相続開始前7年以内(経過措置期間中は3年〜7年の間で段階的)の贈与は相続財産に持ち戻されます。財産を減らす効果は、早く、長期間にわたってコツコツ贈与するほど大きくなります。相続時精算課税は、基礎控除110万円以内の贈与であれば贈与から相続までの期間にかかわらず相続財産に加算されません。特別控除2,500万円を使えばまとまった額を一度に移転できますが、一度選択すると暦年課税には戻れません。

一般的には、相続開始まで7年を切ってから急いで贈与する場合や、地価・自社株評価額が将来上がる見込みの資産を早期に低い評価額で移転したい場合は相続時精算課税が有利とされます。まだ相続まで時間があり、少額を長期間にわたり贈与できる場合は暦年課税が有利とされる、という説明が複数の税理士法人資料で共通して見られます。どちらが有利かは資産状況(現金か、不動産か、自社株か)、贈与者の年齢・健康状態、相続人の人数によって変わるため、一般論として「どちらが得」と断定することはできません。制度の仕組みを正確に理解したうえで、最終判断は税理士等の専門家への相談を前提にするのが適切です。

なお、相続時精算課税は一度選択すると暦年課税に戻すことができませんが、選択は贈与者ごとに行えます。例えば父からの贈与は相続時精算課税、母からの贈与は暦年課税という選び方も可能です。桑都の工房や飲食店、小売店といった家業を子や孫に引き継がせる場面では、事業用資産(店舗の土地・建物、機械設備、自社株がある場合はその株式)を早期に後継者へ移転したい場合、相続時精算課税がまとまった評価額の資産を計画的に移す選択肢の一つになり得ます。関連する制度として「個人版事業承継税制」もあります。個人事業者の事業用資産について、都道府県知事に提出した「個人事業承継計画」に基づき贈与税・相続税の納税を猶予・免除する制度で、当初の計画提出期限は2026年3月31日までとされていましたが、令和8年度税制改正により2028年9月30日まで延長される見込みと複数の専門家サイトが報じています。

「節税になる」は誤解 —— 八王子市内の相談窓口

相続時精算課税という名称から「贈与税がかからないなら節税になる」と誤解されがちですが、制度の本質は「贈与税を相続税に付け替えて精算する」ことです。贈与財産は最終的に相続税の課税対象に戻ります(基礎控除110万円以内の部分を除く)。したがって、不動産や自社株のように将来値上がりが見込まれる資産を評価額が低いうちに移転する場合や、収益物件の家賃収入を早期に後継者へ移す場合には効果がありますが、単に現金を移すだけでは相続税の総額を減らす効果は限定的です。

基礎控除110万円についても誤解されやすい点があります。相続時精算課税を選択した贈与者ごとに110万円が使えるわけではなく、受贈者1人につき、その年に相続時精算課税を選択している贈与者全員からの贈与の合計額に対して適用されます(暦年課税の基礎控除110万円が「受贈者1人につき、その年に贈与を受けたすべての人からの合計額」に適用されるのと同じ考え方です)。

「相続税」「贈与税」はいずれも基礎控除(相続税は3,000万円+600万円×法定相続人数、暦年贈与は年110万円)があるため、実際に納税が発生する家庭は全体の一部にとどまります。制度の仕組みを理解することは誰にとっても意味がありますが、実際に税負担が生じるかどうかは資産規模によって変わります。

制度の理解に迷ったときは、専門家への相談が確実です。東京税理士会八王子支部「納税者支援センター」では、毎月第1水曜日を除く毎週水曜日13時30分から16時30分(1回約45分)、完全予約制の無料税務相談を実施しており、相続税・贈与税を含む税務全般に対応しています。八王子市役所でも、毎月第1水曜日13時30分から16時30分に、同支部の協力による対面相談が行われています。事業者であれば、八王子商工会議所での税務相談(毎月第2木曜日・第3火曜日13時15分から16時15分)も利用できます。

まとめ

2024年1月以後の贈与から、相続時精算課税には年110万円の基礎控除が新設され、暦年課税の生前贈与加算は3年から7年へ段階的に延長されています。両制度とも「年110万円まで非課税」という共通点を持つようになりましたが、相続財産への戻し方は正反対であり、どちらが有利かは資産状況や贈与の時期によって変わります。選択は贈与者ごとに行えるため、父母それぞれで異なる制度を選ぶことも可能です。家業の事業用資産を計画的に継がせたい場合は相続時精算課税が選択肢になり得ますが、節税目的だけで安易に選ぶと撤回できない不利益を被ることもあります。迷ったときは、東京税理士会八王子支部の無料相談など、八王子市内の窓口を早めに頼るとよいでしょう。


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参考文献

国税庁「令和5年分贈与税の申告のしかた(手引)改正の概要」「財産を相続したとき」「No.4103 相続時精算課税の選択」「参考 相続時精算課税制度のあらまし」 / 山田&パートナーズ「相続税の計算上加算する生前贈与の期間延長」 / 事業承継税制特例承継計画まとめ(ホジョキンポータル) / 東京税理士会八王子支部「ご案内できる税務相談」

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カヅキ

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桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。