ふるさと納税、2026年10月に何が変わったか —— 自治体のルール強化と、寄付者が知っておきたいこと
2026年10月、ふるさと納税の指定基準が改正されました。「改悪」と話題になりましたが、変わるのは自治体・ポータルサイト側のルールで、寄付者の手続きは変わっていません。何が厳しくなったのかを整理します。

この記事の目次
ふるさと納税をめぐる制度が、2026年10月に変わりました。「改悪」という見出しも各種メディアで見かけますが、結論を先に言うと、寄付する側であるあなた自身の申し込み手続きや控除申請のやり方には、直接の変更はありません。今回厳しくなったのは、寄付を受け取る自治体やポータルサイト側の運用ルールです。何がどこまで厳しくなり、それが結果として寄付者や八王子の事業者にどう跳ね返ってくるのかを、順番に整理します。
結論 —— 変わるのは自治体側のルール、寄付者の手続きは変わらない
総務省(自治税務局市町村税課)は2025年6月24日、「ふるさと納税の指定基準の見直し等」を公表しました。この改正は、2026年10月から始まる指定対象期間に係る自治体の指定審査から適用されています。ふるさと納税は、各自治体が総務大臣から「指定」を受けることで初めて制度の対象になる仕組みであり、この指定を受けるための基準そのものが今回厳しくなったということになります。
今回の改正が狙っているのは、寄付金の使われ方と返礼品のルールを、受け取る側である自治体・ポータルサイトの側で厳格化することです。一方で、寄付者がふるさと納税サイトで寄付を申し込み、返礼品を選び、確定申告やワンストップ特例の申請で控除を受けるという一連の流れは、2026年10月の改正によって変わっていません。寄付の申し込み方法、控除の申請方法、返礼品を選ぶ手順は、これまでと同じまま続けられます。
つまり「ふるさと納税が急に使いにくくなった」と身構える必要はなく、むしろ変わったのは、寄付を受け取る側の運用体制だと捉えたほうが実情に近いといえます。寄付額の全国的な規模を考えても、今回のような運用ルールの見直しは数年おきに行われてきた経緯があり、2026年10月の改正もその延長線上にあるものです。
そもそも、ふるさと納税で寄付が税制優遇の対象になるのは、寄付先の自治体が総務大臣からこの「指定」を受けているからです。指定を受けていない自治体に寄付をしても、ふるさと納税としての控除は受けられません。この指定の基準そのものが厳しくなったということは、裏を返せば「指定を維持し続けること」の難易度が自治体側で上がったということでもあります。以下、具体的に何が変わったのかを一つずつ確認していきます。
自治体の取り分引き上げと、募集費用の段階的な引き下げ
最初に変わるのは、自治体が受け取った寄付金のうち、どれだけを自分たちの財源として実際に活用できるかという基準です。総務省の資料によれば、自治体が確保できる活用可能額の基準は、令和8年度(2026年度)は寄付額の52.5%以上とされ、令和11年度(2029年度)には60%以上まで段階的に引き上げられます。
この基準が上がる分、裏側で下がるのが募集費用の上限です。寄付を集めるためにポータルサイトへ支払う手数料や、広報・PRにかける費用の割合は、現行の最大5割から、2029年までに段階的に最大4割へと引き下げられます。これまで寄付額の半分近くを、広報や仲介サイトへの支払いに充てていた自治体にとっては、同じ寄付額でも実際に地域の事業や住民サービスに回せる金額が増える一方で、これまでのような大規模な広報・返礼品調達には使いにくくなるという側面もあります。
自治体にとっては、寄付をどれだけ多く集めたかという「量」だけでなく、集めた寄付金のうちどれだけを実際に地域振興や行政サービスに使えているかという「質」が、これまでより厳しく問われる形になったということです。八王子市のように多くの自治体と競いながら寄付を募っている立場からすれば、広報費の使い方そのものを見直す必要が出てくる改正でもあります。
寄付者の目線で見ると、この変化は返礼品のラインアップや各自治体の広報の仕方に、数年かけてゆっくりと表れてくる可能性があります。今すぐ目に見える変化ではありませんが、寄付先を選ぶときの一つの背景として知っておくとよいでしょう。
返礼品の「地場産品基準」厳格化と、募集費用の公表義務
返礼品そのものにも、新しいルールが入ります。これまでも「地場産品であること」は返礼品の条件とされてきましたが、今回の改正では、その付加価値をどう算出するかという方法が「価格ベースでの算出」に統一され、製造者側には、区域内でその価値の過半が生じたことを証明し、公表することが義務付けられます。原材料の調達地と製造・加工地が異なる返礼品について、どこまでを「その土地の産品」と呼べるのかが、これまでより細かく問われるようになったといえます。
これは、桑都手帖が取り上げてきた多摩織をはじめとする地域の工芸品にも無縁の話ではありません。原材料の一部を他地域から仕入れている工房が返礼品を提供している場合、今後は「どの工程で、どれだけの価値が区域内で生まれたか」を具体的に証明する準備が、これまでより重要になってくる可能性があります。返礼品を提供する側の事業者にとっては、単に自社の工房が地域にあるというだけでなく、工程ごとの価値の所在をあらためて整理しておく必要が出てくる場面が増えそうです。
もう一つの変化は、お金の流れの透明化です。自治体が「1支払先あたり100万円以上」支払った募集費用について、2026年9月に初回の公表が予定されています。どの事業者にどれだけの広報費・仲介手数料が払われているのかが、これまでより外から見えやすくなります。寄付者の立場からしても、自分の寄付がどのように使われているのかを確認しやすくなる変化だといえます。
不適正募集への「指定取消」ルールが強化された
ルール違反への対応も厳しくなりました。まず、自治体が返礼品を「広報目的」で提供できると説明するための基準が明確になりました。具体的には、その地方団体自身が広報目的で過去に調達・配布・販売した実績があり、指定対象期間中に提供する返礼品の数量がその実績数量を超えないことが条件として定められています。実態のない「広報目的」を名目にして返礼品を大量に提供するような運用に、歯止めをかける内容です。
そのうえで、不適正な募集を行った自治体への罰則も強化されました。総務省の指定を取り消された自治体が再び指定を受けられない期間は、これまでの2年から最大3年に延長され、過去にさかのぼって調査される期間も4年前まで広がりました。この指定取消ルールの強化は、2026年4月1日に施行されています。過去にルール違反で指定を取り消された自治体が、短い期間でまた制度に復帰できてしまうという問題意識が、この改正の背景にあると見てよいでしょう。
八王子市自身はこれまで指定を取り消された経緯はありませんが、全国の自治体がこうした厳格なルールのもとで寄付を募ることになるという点は、ふるさと納税という制度全体の信頼性に関わる話として押さえておきたいところです。寄付者としても、どの自治体が過去にどのような経緯をたどってきたかを多少意識しておくと、寄付先選びの一つの手がかりになるはずです。
制度が始まった当初は、返礼品の調達基準や広報のあり方について、自治体ごとに運用の差が大きいまま拡大してきた経緯があります。寄付総額が大きくなるほど、一部の自治体による行き過ぎた返礼品競争が繰り返し問題視され、そのたびに総務省が指定基準の見直しを行ってきました。2026年10月の改正も、そうした積み重ねの延長線上にある対応だと捉えることができます。
超高所得者だけに関わる「193万円上限」(2027年寄付分〜)
最後に、話題になることの多い「193万円上限」についても整理しておきます。これは2027年(令和9年)の寄付分から新たに適用される仕組みで、実際に住民税へ反映されるのは2028年度からになります。対象になるのは給与収入1億円クラスの超高所得者のみで、八王子で暮らす一般的な会社員や共働き世帯がこれまで利用してきた寄付上限の計算方法には影響しません。
もともとふるさと納税の寄附金控除には、年収や家族構成に応じて変わる上限額が設けられており、この上限を超えた分は控除の対象になりません。「193万円上限」は、この従来の上限の仕組みに加えて、ごく一部の超高所得者層にだけ新たな制約を加えるものだと理解しておくと、全体像がつかみやすくなります。「来年からふるさと納税の控除額が減るのでは」と不安に感じている人も、まずは自分がこの対象に当たるかどうかを確認しておけば十分です。
ここまで見てきたとおり、2026年10月の改正は、自治体の取り分・返礼品基準・罰則という「受け取る側」のルールを厳しくするものであり、寄付者側の申し込み・控除申請の手続きに関する変更は含まれていません。寄附金控除やワンストップ特例の具体的な手続きについて確認したい場合は、八王子市財務部住民税課(直通:042-620-7219)が相談窓口になります。
まとめ
2026年10月、ふるさと納税は「改悪」というより「運用の厳格化」という形で変わりました。自治体の取り分は段階的に増え、返礼品の地場産品基準は厳しくなり、不適正な募集への罰則も強まりました。一方で、寄付する側が行う申し込みや控除申請の手続きそのものは変わっていません。超高所得者向けの新しい上限が始まるのも2027年分の寄付からで、八王子の多くの寄付者にとっては、当面はこれまでと同じ感覚で寄付先や返礼品を選び続けられます。変わったのは制度を支える裏側のルールであり、その変化が返礼品のラインアップや自治体ごとの運営方針に、今後どう表れてくるかを見ていきたいところです。
参考文献
総務省「ふるさと納税の指定基準の改正等について」 / TKC「総務省『ふるさと納税の指定基準の見直し等』を公表」 / 「ふるさと納税、2026年10月から何が変わる?【総務省資料で確認】自治体側の規制強化と2027年寄付分の『193万円上限』」 / 「ふるさと納税が10月から改悪!費用の割合変更や控除額の上限設定など解説」 / 八王子市ホームページ「ふるさと納税 寄附金控除・ワンストップ特例制度について」「財務部」
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