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地域の未来 · 公開: 2026.09.02 · 更新: 2026.09.14 · 7分で読めます

八王子市の町会・自治会 —— 加入率低下時代に、地域のつながりはどう続くか

八王子市には579団体の町会・自治会がありますが、都内では非加入者が加入者を上回っています。市が2019年に条例まで作って向き合ってきた経緯と、今できる対策を辿ります。

木々に囲まれた公園の砂利の小径

八王子市には今、579団体もの町会・自治会が存在します。それでいて東京都の最新調査では、都内では「加入していない」人が「加入している」人を上回るという結果が出ました。数の多さと、支持の弱さ。この一見矛盾した状況に、八王子市はどう向き合ってきたのか。条例、ハンドブック、助成金——制度を積み重ねてきた経緯と、その先にまだ残る課題を辿ります。


連載「八王子という街」第17回|多摩織の担い手をどう繋ぐか

579団体、22地区連合会 —— 桑都の町会というインフラ

町会・自治会と聞いて、その正確な数を言える人は多くないはずです。八王子市には令和7年(2025年)6月現在、579団体の町会・自治会が登録されています(市の公式ページでは「約570団体」という表記も見られます)。「一定の地域住民によって自主的に結成された団体」として、生活環境の向上、防犯・防災、住民の親睦融和などを目的に活動する組織が、市内にこれだけの数存在しているのです。

これらの団体は単独で動いているわけではなく、市内22の地区連合会にまとめられています。地区連合会は「町会間の連携を図る」「地域での諸団体との良好な関係づくりを行う」「地域でのとりまとめ役を担う」という3つの役割を持ち、各地区連合会の会長は「八王子市町会自治会連合会」(通称:町自連)の常任理事として常任理事会に出席します。ここで行政情報を取得し、懸案事項を検討したうえで、その情報を地域の町会に持ち帰って報告する——町自連から地区連合会、そして個々の町会へという情報伝達の階層が、市内の隅々まで張り巡らされている構造です。

ただし団体数の地域分布には偏りがあります。横山地区は77団体、南大沢地区は70団体と、地区によって数に大きな差があり、その理由は単純な人口規模だけでは説明がつきません。旧来の集落を基盤とする横山地区と、多摩ニュータウン開発によって生まれた新興住宅地である南大沢地区とでは、町会の成り立ちの経緯そのものが異なるからです。この違いについては、後ほど改めて触れます。


都内で非加入が加入を上回った日 —— 令和6年調査が示す数字

これだけの組織網を持ちながら、加入率は決して楽観できる状況にありません。東京都生活文化スポーツ局が令和6年(2024年)4月に公表した「町会・自治会活動に関する調査」は、そのことを数字で突きつけました。都内在住の20代以上5,000人を対象にしたWebアンケート(調査期間2023年8月4日〜8月13日)で、「加入している」27.3%と「マンション等集合住宅全体で加入している」14.1%を合わせた加入側は41.4%。対して「加入していたが脱退した」2.5%と「加入していない」45.6%を合わせた非加入側は48.0%——都内では非加入者が加入者を上回る結果となったのです。

なお、この48.0%という数字はあくまで都内全体の傾向であり、八王子市固有の加入率を示すものではありません。八王子市単独の加入率・非加入率について市の公開資料から確認できる公式統計は見当たらず、記事化にあたってもこの点は明確に区別しておく必要があります。それでも、都内の傾向として非加入が上回ったという事実そのものは、市が2019年に条例まで整備した背景を理解するうえで重要な手がかりになります。

同じ調査は、なぜ人が町会・自治会に加入しないのかについても踏み込んでいます。上位に挙がったのは「付き合いが面倒なため」30.5%、「加入しなくても困らないため」29.5%、「町会・自治会があるのかわからないため」25.6%。一方で町会・自治会側の運営上の課題としては「活動の担い手の不足・固定化」78.7%、「役員の高齢化が進んでいる」65.7%が上位に挙げられています。加入率の問題は、新しく加入してもらう「入り口」と、今いる担い手をどう支えるかという「出口」の両面で、同時に進行していることがうかがえます。


2019年、条例まで作った八王子市の判断

この全国共通の課題に対し、八王子市は平成31年(2019年)3月27日、「八王子市町会・自治会の活動活性化の推進に関する条例」を公布しました。少子高齢化・核家族化・価値観の多様化といった社会環境の急速な変化により町会・自治会の加入世帯数が減少し、コミュニティ意識の希薄化・地域の活力低下が懸念される——その一方で、自然災害を通じて地域住民のつながりと共助の重要性への認識が高まっている。相反する二つの社会的背景の間で、条例は生まれました。

条例は町会・自治会を「協働によるまちづくりの重要なパートナー」と位置づけ、その活動を支援することで「地域住民が支えあい、心豊かに安心して、いきいきと快適に暮らすことができる地域社会の実現」を目指すとしています。特に条例第5条では、市民の自発的な町会・自治会への加入及び自主的な町会・自治会の設立を促進するために必要な支援を行うこと、並びに町会・自治会に対する市民の理解と関心を深め活動への参加を促進するため、広報活動及び啓発活動その他の必要な支援を行うことを、市の役割として明記しています。

条例を作っただけで加入率が上向くわけではありません。ですがこの条例は、町会・自治会の存続を「個々の団体の自助努力」だけに委ねず、行政が支援すべき公共的な課題として位置づけたという点で、その後のハンドブックや助成制度の土台になっています。


ハンドブックと助成金 —— 加入促進の現場の手立て

条例に基づく具体策の一つが、市と八王子市町会自治会連合会が協働で作成・公開している「町会・自治会加入促進ハンドブック(改訂版)」です。未加入者に呼びかける際の基本的な方法や実践例を紹介するこのハンドブックの表紙には、「向こう三軒両隣」「互近助(ごきんじょ)づきあい」というキャッチコピーが掲げられています。

市はまた、町会・自治会・管理組合に対する助成制度を設けているほか、東京都が実施する助成事業(東京都つながり創生財団による支援を含む)の一覧も市のページから案内しています。中でも新しい動きが、東京都が令和8年(2026年)4月に発表した「町会・自治会デジタル化推進助成」です。電子回覧板やQRコード決済等を用いた町会費徴収のデジタル化を支援するもので、役員の印刷・仕分け・配布といった手間の削減や、住民がいつでも最新情報を確認できる利便性の向上を狙いとしています。これは都の制度としてはこういうものがあるという段階の話であり、八王子市内で実際にどれだけの団体が導入しているかまでは、今回の調査では確認できていません。

マンション・集合住宅の増加を踏まえた取り組みも進んでいます。東京都は、町会・自治会とマンション管理組合が合同防災訓練等を通じて地域のつながりを構築・強化することを支援する事業も行っており、戸建てとマンションという住まい方の違いを前提にした支援策が並走している状況です。


南大沢という別の顔 —— ニュータウンの町会事情

冒頭で触れた地域分布の偏りに、ここで改めて向き合います。南大沢地区は、稲城・多摩・八王子・町田の4市にまたがる多摩丘陵に開発された多摩ニュータウンの西部に位置し、UR賃貸住宅や分譲マンションが集積する新興住宅地です。この地区には70団体の町会・自治会が登録されており、旧来の集落を基盤とする横山地区(77団体)と並ぶ規模を持ちます。しかし両者は、成り立ちの経緯——新規開発に伴う自治会設立か、既存集落からの継承か——が大きく異なると考えられます。

東京都の調査で「マンション等集合住宅全体で加入している」が「加入している」とは別の独立した回答区分(14.1%)として設けられていたことも、この違いを裏づけています。マンション単位での一括加入という形態は、戸建て住宅を主体とした従来型の町会加入とは、そもそも別の課題・特性を持つ可能性があるということです。南大沢の70団体がどこまで「マンション管理組合=自治会」という形態を取っているのか、その内訳までは今回の調査で一次資料に当たれていませんが、少なくとも「町会・自治会」とひとくくりにできない多様性が、この街の中に既に存在していることは見えてきます。

579団体という数字の裏には、江戸期からの集落を継いできた町会と、ニュータウン開発とともに生まれた自治会という、成り立ちの異なる二つの顔が同居しています。加入率という一つの物差しだけでこの街の地域コミュニティを語るのは、おそらく乱暴です。それでも、担い手の高齢化という共通の課題を前に、条例・ハンドブック・デジタル化助成といった制度を積み重ねながら、桑都の町会・自治会は今も更新を続けています。


まとめ

579団体・22地区連合会という規模を持つ八王子市の町会・自治会は、都内で非加入が加入を上回るという逆風の中で、2019年の条例、ハンドブック、そして令和8年のデジタル化助成へと、支援策を一つずつ積み重ねてきました。横山地区と南大沢地区という成り立ちの異なる二つの顔が同じ市内に同居している事実は、この課題に単一の正解がないことを物語っています。それでも「担い手の不足・固定化」という共通の悩みを前に、制度は少しずつ更新され続けています。


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連載「八王子という街」は、学生から50代まで、暮らしの視点から八王子という街の様々な顔を辿るシリーズです。

参考文献

この記事は連載「八王子という街」第17話です (全26話・更新中)

生産緑地2022年問題とその後 —— 八王子の農地はどうなったか

暮らしと法律 · 8分

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。