八王子市の市民農園 —— 東中野45区画の閉園と、ひよどり山470区画への集約
東中野農園の閉園後、八王子で市民農園を利用する選択肢を整理します。ひよどり山農園、農家開設型、民間体験農園、農業塾の違いを公式情報からたどります。

この記事の目次
45区画の市民農園が閉じる一方で、470区画の大きな農園が利用者を受け入れています。八王子の「市民農園」は、単純に減ったり増えたりしているのではありません。市営、農家開設型、民間企業による体験農園、そして農業を仕事につなげる研修という複数の入口に分かれています。東中野農園の閉園を起点に、これから土に触れたい人がどこを見ればよいのか、市の公式情報と制度の歩みから整理します。
連載「八王子という街」第21回|この連載をまとめて読む
東中野農園の閉園が示す、八王子の市営農園の転機
市が直接運営する市民農園を探すと、これまでは東中野農園が入口になっていました。八王子市の案内では、東中野農園は45区画で、1区画あたりの利用料は7,500円です。ただし、利用開始時期によって料金が異なる場合があるため、数字だけでなく、募集時の案内を確認する必要があります。
この農園は、令和8年(2026年)3月31日をもって閉園しました。市のページには、令和8年度(2026年度)の新規利用者募集は行わないことが明記されています。つまり、これから市営の農園を使いたい人にとって、東中野農園の募集情報を探し続けても、利用申し込みにはつながりません。
一方、閉園の直接の理由は、同じ公式ページでは説明されていません。用地の事情なのか、施設の維持管理なのか、別の理由があるのかは、公開情報だけでは特定できません。確認できない事情を推測するのではなく、ここでは「45区画の市営農園が2026年3月末で閉園し、新年度の募集がない」という事実を出発点にします。
この転機によって見えてくるのは、「八王子の市民農園がなくなる」という単純な図ではありません。次に紹介するひよどり山農園の規模を見ると、市が用意する受け皿の中心が変わったことが分かります。
470区画のひよどり山農園が受け皿になる
ひよどり山農園は、八王子市大谷町976番地外にあります。小宮公園に隣接する場所で、駐車場、水道、トイレを備えた市営の農園です。区画はAブロック215区画、Bブロック255区画の合計470区画と案内されています。

東中野農園の45区画と比べると、ひよどり山農園は10倍を超える規模です。単純な区画数の比較だけで市の政策全体を断定することはできませんが、市営農園の利用を考える人にとって、ひよどり山が大きな候補になることは確かです。市の案内では、令和8年度(2026年度)は随時利用者を募集しています。
利用期間はブロックごとに異なります。Aブロックは2026年4月から2029年1月31日まで、Bブロックは2024年4月から2027年1月31日までです。募集時期や空き区画の有無によって利用できるブロックは変わるため、申込時点の市公式ページを確認するのが基本になります。
対象は八王子市民に限らず、都内在住者です。申し込みは農林振興・獣害対策課への申請、またはLoGoフォームを使った電子申請で行います。市営農園を利用したい人は、東中野農園の閉園情報だけで判断せず、ひよどり山農園の募集状況、利用期間、申し込み方法を順番に確認するとよいでしょう。
市は、ひよどり山農園を「緑の保全と市民および都内在住者の憩いの場」として案内しています。これは、単に野菜を収穫するための区画というだけでなく、都市の中で農地に継続的に関わる場所として説明されているということです。利用を考えるときは、区画数だけでなく、場所、設備、利用期間を自分の通い方と照らし合わせる必要があります。
ここで注意したいのは、ひよどり山農園への「集約」が市の計画文書に明文化されているかどうかです。公開されている農園案内から、東中野農園の閉園とひよどり山農園の規模・募集状況は確認できます。しかし、これを市の農業振興政策全体の正式な集約方針と呼べる根拠までは、今回確認した資料にありません。記事では、確認できた配置の変化と利用情報にとどめます。
市営だけではない、農家開設型と民間体験農園
八王子で農園を借りる方法は、市が直接運営する農園だけではありません。市の公式ページには、農家や農地所有者が市と貸付協定を結んで開設する「農家開設型農園」が案内されています。市の説明では、農地の有効利用や遊休農地の解消対策の一つとして位置づけられています。
農家開設型農園は、開設者が農家や農地所有者であることが特徴です。八王子市の案内には、上柚木、中山、東中野、寺田町、大船町、弐分方町などの農園が掲載されています。要約ページでは「30を超える農園」が開設されていると説明され、一覧には40か所以上の農園が載っています。表現に幅はありますが、市営農園の数とは別に、多くの農家開設型農園が市内にあることは確認できます。
個別の農園ごとに開設者や連絡先が異なるため、利用を検討する際は、市の経済産業部農林振興・獣害対策課への問い合わせが窓口になります。
農園を選ぶときは、区画を借りて自分で作業するのか、道具や苗のサポートを受けたいのかで候補が変わります。民間企業が運営する体験農園には、株式会社マイファームの八王子農園があります。公式サイトでは、約13平方メートルの区画を1年契約で利用でき、敷地内に50区画があると案内されています。
また、株式会社アグリメディアは「シェア畑 八王子」と「シェア畑 八王子みなみ野」を運営しています。シェア畑は、農具や苗を用意せずに始められるサポート付き貸し農園として紹介されています。市営農園や農家開設型農園が、農地を借りて自分で管理する選択肢だとすれば、民間の体験農園は、初心者向けの支援や通いやすさを重視した選択肢です。
この違いは、どの仕組みが優れているかという話ではありません。料金、契約期間、区画の広さ、道具の有無、栽培サポートの内容を比べ、自分が続けられる形を選ぶための違いです。市営農園の募集が終了していても、農家開設型や民間の体験農園まで視野を広げれば、土に触れる入口は残されています。
市民農園を広げた制度の背景と、農業塾という別の入口
市民農園の選択肢が市営だけに限られない背景には、農地を貸し付ける制度の変化があります。農林水産省の説明によれば、1975年のいわゆる「レクリエーション農園通達」で、入園方式による市民農園の制度的位置づけが示されました。その後、1989年に特定農地貸付法、1990年に市民農園整備促進法が制定されています。
1989年の特定農地貸付法は、区画分けされた小面積の農地を短期間貸し付ける場合の、農地法上の特例を設けた法律です。さらに2005年の改正では、地方公共団体や農協以外の者、つまり農家個人、NPO、企業などによる市民農園の開設が可能になりました。現在の農家開設型農園や民間企業による体験農園を考える際には、この制度の流れが前提になります。
1990年には市民農園整備促進法も制定され、農機具庫や休憩所などの附帯施設を備えた市民農園の整備が促進されました。農園は、畑の区画だけでなく、利用者が継続して通える環境と一体で考えられてきたのです。
2018年には都市農地貸借法が制定され、生産緑地を市民農園の開設などに活用するための仕組みも整えられました。制度の変更は、農地を「農家が耕作する場所」だけでなく、都市住民が一定期間関わる場所として使う道を広げてきたのです。
八王子市には、趣味として区画を借りる以外の入口もあります。「はちおうじ農業塾」は、露地栽培を中心に、専門家による実習・講義と市内農家によるアドバイスを通じて、野菜づくりの知識や技術を学ぶ研修事業です。市は、遊休農地の活用、農作業の担い手育成、農福連携を目的として案内しています。
令和8年度(2026年度)の新規研修生募集は停止中ですが、研修費用は1年目・2年目とも各2万円とされています。市民農園が「自分の区画で育てる」入口だとすれば、農業塾は農作業の技術や担い手という側面から農に関わる入口です。農園を借りたい人と、農業をより体系的に学びたい人では、見るべき制度が異なります。
八王子の農業体験は、ひとつの大きな制度に集約されているわけではありません。市営のひよどり山農園、農家開設型農園、民間の体験農園、農業塾という違う仕組みが、異なる目的に応じて並んでいます。東中野農園の閉園は、その入口を探し直すきっかけになったと言えます。
まとめ
東中野農園は2026年3月31日に閉園し、令和8年度の新規利用者募集はありません。その一方で、ひよどり山農園は470区画を備え、都内在住者を対象に案内されています。市営農園を利用したい人は、まず最新の募集状況と申込方法を確認するのが近道です。
市営農園に空きがない場合も、農家開設型農園や、道具・苗のサポートがある民間体験農園という選択肢があります。農地を借りるのではなく、栽培技術や担い手育成に関心がある人には、はちおうじ農業塾という別の入口もあります。
市民農園をめぐる制度は、1989年の特定農地貸付法制定や2005年の改正を経て、開設主体を広げてきました。自分が求めるのが区画、サポート、学びのどれなのかを整理すれば、八王子の農との関わり方を選びやすくなります。
この連載の他の記事
八王子の街を、歴史・産業・暮らしの変化からたどる連載です。
- 前の回:八王子に住む外国人、46年で16倍の19,843人へ —— 学園都市が積み重ねてきた多文化共生
- この連載をまとめて読む
参考文献
八王子市「農業体験情報」 / 八王子市「市民農園 ※令和8年度(2026年度)新規利用者募集なし」 / 八王子市「ひよどり山農園 ※令和8年度(2026年度)新規利用者募集中」 / 八王子市「農家開設型農園」 / 八王子市「はちおうじ農業塾(令和7年度(2025年度)新規研修生募集は終了しました)」 / 農林水産省「市民農園に関係する法律」 / 株式会社マイファーム「八王子農園【体験農園マイファーム】」 / 株式会社アグリメディア「シェア畑 八王子」
この記事は連載「八王子という街」第22話です
「106万円の壁」撤廃、始まる —— 2026年10月施行、パート従業員と雇う側は何を確認すればいいか
Support
※ Stripe決済(合同会社月香が運営)で安全にお支払いいただけます







