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地域の未来 · 公開: 2026.09.20 · 8分で読めます

八王子に住む外国人、46年で16倍の19,843人へ —— 学園都市が積み重ねてきた多文化共生

八王子市内の外国人住民は1980年の1,206人から2026年6月には19,843人まで増えました。なぜ留学生が多いのか、市や八王子国際協会がどんな支援を重ねてきたのか、公式統計と評議会資料から読み解きます。

木々に囲まれた公園の砂利の小径

八王子市が公表した最新統計によれば、令和8年(2026年)6月末時点で市内に住む外国人住民は19,843人。1980年にはわずか1,206人だったことを思えば、46年で16倍以上という伸びです。この街になぜこれほど外国人住民が増え、どんな支援体制が積み上がってきたのか——公式統計と評議会資料から辿ります。


連載「八王子という街」第20回|この連載をまとめて読む

1,206人から19,843人へ —— 46年で16倍に増えた隣人たち

八王子市多文化共生推進評議会が令和元年度(2019年度)第1回会議に提出した資料「八王子市の外国人の状況」によれば、市内の外国人人口(各年12月31日現在)は昭和55年(1980年)に1,206人、総人口に占める割合は0.31%でした。それが平成2年(1990年)に2,536人、平成12年(2000年)に5,672人、平成22年(2010年)に9,162人、平成30年(2018年)には12,936人(2.30%)まで増えています。38年間でおよそ10.7倍、総人口に占める割合も7倍以上に伸びた計算です。

そして直近の数字はさらに大きくなっています。八王子市公式「外国人住民 主要国籍・地域別人口」ページに掲載された令和8年(2026年)6月末日現在の統計表によれば、市内の外国人住民数は19,843人。2018年の12,936人と比べても、8年間でおよそ1.53倍に増えたことになります。1980年からの46年間で見れば、実に16倍以上という伸び方です。総人口自体は2010年をピークに横ばい・微減傾向にある中で、外国人住民の増加が街の人口構成を静かに変えつつあります。


「留学」が3割を占める理由 —— 23大学が生んだ学園都市の顔

なぜこれほどの伸びなのか。手がかりは在留資格の内訳にあります。前述の評議会資料によれば、2018年12月末時点の在留資格別構成比で最も大きいのは「留学」の31%。「永住者」29%を上回り、全体の3割を占めています。国籍別では中国(台湾含む)が40%で最多、韓国・朝鮮15%、フィリピン10%、ベトナム8%と続いていました。

「留学」がここまで大きな割合を占める背景には、八王子が首都圏でも有数の学園都市であるという事情があります。市内には創価大学や中央大学をはじめ23大学が集積しており、市はこの大学群でつくる「大学コンソーシアム八王子」と連携した「外国人留学生支援事業」を平成25年度(2013年度)から続けてきました。2026年6月末時点の国籍別内訳でも中国が6,429人で最多、次いでベトナム2,248人、フィリピン1,624人、韓国1,935人、ネパール1,604人と、アジア各国からの留学生・就労者が上位を占める構図は変わっていません。学園都市であることが、そのまま多国籍のまちであることに直結しているのです。

留学生への支援は、時代に合わせて形を変えてきました。平成元年度(1989年度)から続いていた「外国人留学生奨学金制度」は令和2年度(2020年度)をもって終了し、代わりに新入留学生向けの生活ガイド作成・配布や、住居を借りる際の負担を軽くする「外国人留学生住居賃貸保証料補助金制度」(平成19年度開始)へと支援の形を移しました。この補助金制度は令和3年度から日本語学校生にも対象が拡大されています。学校教育の現場でも対応は積み重ねられており、由井第一小学校・打越中学校には平成元年度から日本語の習得が不十分な外国人児童生徒向けの日本語学級が設置され、令和2年度からは多言語対応の双方向通訳デバイス「POCKETALK(ポケトーク)」も学校現場に導入されました。


相談窓口から多文化キッズサロンまで —— 官民で重ねてきた支援の実績

人が増えれば、暮らしを支える仕組みも要ります。八王子市は平成16年度(2004年度)に「外国人サポートデスク」を設置し、生活やコミュニケーションに関する相談に応じてきました。令和2年度の相談件数は1,024件。令和2年度からは市役所窓口にタブレット端末のテレビ電話通訳も導入され、子育て・福祉関連の窓口を中心に利用されています。

行政だけでなく、民間の力も大きな役割を果たしてきました。特定非営利活動法人・八王子国際協会(通称HIA)は、市民活動推進部と協働しながら多文化共生施策の実務を担う中核団体です。外国につながる子どもの学習支援「多文化キッズサロン」を平成21年(2009年)12月に北野学習支援教室として、平成25年(2013年)には八王子駅前教室として開設し、就学前児童や不登校傾向の児童生徒を支えてきました。

こうした活動を下支えするのが語学ボランティアで、登録者数は平成29年度の253人から令和2年度には352人まで増加。うち医療通訳ボランティアは12言語49人、災害時通訳ボランティアは11言語46人が登録しています。行政の窓口と、民間ボランティアの厚みが両輪となって支援を積み重ねてきたことがうかがえます。

相談窓口以外の支援も少しずつ広がっています。令和元年度(2019年度)からは弁護士による外国人個別相談が年4回実施されるようになり、令和2年度の相談件数は10件でした。日本語学習の場では、外国人支援団体等による日本語教室に令和2年度は2,050人が参加(新型コロナウイルス感染症対応で会場閉鎖・利用制限があり、例年より大幅に少ない年度だったとされています)。生涯学習センターの「外国人のための日本語教室」(平成2年度開始)にも令和2年度は379人が参加しました。情報発信の面では、平成7年度(1995年度)開始の外国人向け情報誌「Ginkgo」が英語・中国語・韓国朝鮮語・スペイン語で年6回発行され続けているほか、令和2年度には多言語翻訳電子書籍アプリ「カタログポケット」が導入され、「広報はちおうじ」などの行政情報を多言語で発信する仕組みも整いました。


プランは何を目指してきたか —— 2013年策定から第2期(2023〜2030年度)へ

こうした個々の取り組みを束ねる土台となっているのが、市の「多文化共生推進プラン」です。八王子市は平成25年(2013年)、「国籍、民族、文化の違いを互いに認め合い、助け合い、活かし合いながら、共に暮らす多文化共生のまちづくり」を基本理念に掲げてこのプランを策定しました。その後、平成30年度(2018年度)に計画期間2018〜2022年度の「改定版」へと改定され、令和5年(2023年)3月には計画期間2023〜2030年度の「第2期八王子市多文化共生推進プラン」が策定されています。

改定版プランの施策体系は大きく2つの目標に整理されていました。一つは「外国人市民も安心して暮らせるまちの実現」で、コミュニケーション支援(多言語情報提供・日本語学習支援・社会参加支援)と生活支援(教育・医療福祉・住まい・就労・防災・留学生支援)の2本柱。もう一つは「国際感覚豊かな市民を育むまちの実現」で、多文化共生意識の啓発から国際交流の推進、海外友好交流都市との交流までを含みます。この2つの目標のもとに、計40の個別施策が組み立てられてきました。増え続ける外国人住民の実態に、行政が段階的に制度を追いつかせてきた歩みだと言えます。


町会・自治会という宿題 —— つながりはどう続くか

一方で、すべてがうまく進んできたわけではありません。多文化共生推進プランの施策No.10「外国人市民の町会・自治会等への加入促進」では、平成25年度から英語・中国語・韓国朝鮮語の多言語版「町会・自治会への加入促進チラシ」を作成し、転入時などに配布してきました。

ところが、令和2年度時点の評議会資料自身が「町会・自治会の活動内容について外国人市民への更なる周知が必要」と課題を明記しています。チラシを配るだけでは、加入促進が十分に進んでいるとは言い難い実態が、行政の自己評価としてすでに表れているのです。

地域とのつながりは、平時の加入促進だけの話ではありません。市は英語・中国語・韓国朝鮮語版の「八王子市総合防災ガイドブック」を作成・配布し、避難所・一時滞在施設には多言語対応の「コミュニケーション支援ボード」を配備するなど、防災の面でも多言語対応を積み重ねてきました。ただし令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、町会・自治会主催の防災訓練への外国人市民・語学ボランティアの参加が見送られるなど、訓練の実施自体が制約を受けた年度でもありました。災害時こそ地域のつながりが頼りになる場面であるだけに、平時の加入促進と防災訓練への参加は、地続きの課題だと言えます。

この論点は、連載「八王子という街」第17回で扱った、町会・自治会の加入率低下という市全体の構造的な課題とも重なります。担い手の高齢化と外国人住民の増加が同時に進む中で、地域のつながりをどう次の世代・新しい住民へつないでいくかは、これから八王子が向き合い続ける宿題として残っています。


まとめ

1980年に1,206人だった八王子市の外国人住民は、2026年6月には19,843人まで増えました。23大学が集まる学園都市であることがその大きな理由であり、外国人サポートデスクや八王子国際協会の活動、2013年からの多文化共生推進プランが、その歩みを行政・民間の両面から支えてきました。それでも、町会・自治会という地域の基礎単位とのつながりには、まだ埋め切れていない距離が残っています。数字の伸びの先に何を築いていくかは、これからの八王子の姿を左右するテーマです。


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連載「八王子という街」は、学生から50代まで、暮らしの視点から八王子という街の様々な顔を辿るシリーズです。

参考文献

八王子市多文化共生推進評議会「八王子市の外国人の状況」令和元年度第1回資料1 / 八王子市ホームページ「外国人住民 主要国籍・地域別人口」令和8年版 / 八王子市多文化共生推進評議会「八王子市多文化共生推進プランに基づく取組状況」令和3年度第1回資料1 / 八王子市ホームページ「多文化共生推進プラン」 / 特定非営利活動法人八王子国際協会公式サイト

この記事は連載「八王子という街」第21話です (全26話・更新中)

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。