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地域の未来 · 公開: 2026.09.17 · 8分で読めます

八王子で暮らす外国人住民は12,936人から16,000人台へ —— 学園都市が積み重ねた多文化共生の実務

八王子市の外国人住民は1980年の1,206人から2018年に12,936人、2024年には16,000人台へ。23大学の学園都市が積み重ねてきた相談窓口・日本語教室・防災の多言語対応を追います。

木々に囲まれ鳥居が連なる参道

八王子市に暮らす外国人は、この40年余りでどれくらい増えたのでしょうか。1980年にはわずか1,206人だった数字が、2018年には12,936人、そして2024年には16,000人台に達しています。23の大学が集まる学園都市という土地柄が、この増加にどう関わっているのか。そして市はこの間、どんな支援を積み重ねてきたのか——数字の推移と、その裏にある実務の歩みを追ってみます。


連載「八王子という街」第20回|この連載をまとめて読む

40年で10倍以上に増えた外国人人口

八王子市多文化共生推進評議会が2019年7月12日の会議に提出した資料「八王子市の外国人の状況」には、市内の外国人人口(各年12月31日現在)の推移が記録されています。昭和55年(1980年)にはわずか1,206人、総人口395,350人の0.31%に過ぎませんでした。それが平成2年(1990年)に2,536人、平成12年(2000年)に5,672人、平成22年(2010年)に9,162人と着実に伸び、平成30年(2018年)には12,936人に達しています。

38年間でおよそ10.7倍という増え方です。総人口に占める割合も0.31%から2.30%へと、7倍以上に伸びました。興味深いのは、この間に市の総人口自体は2010年をピークに横ばい・微減へと転じていることです。街全体の人口が伸び悩むなかで、外国人住民の増加だけが人口構成を静かに変えつつある——そういう構図が、この統計からは読み取れます。


「留学」が3割を占める在留資格の内訳

なぜ八王子でこれほど外国人住民が増えたのか。その手がかりは、在留資格別の構成比にあります。2018年12月末時点のデータでは、「留学」が全体の31%を占めて最大の区分となっており、次いで「永住者」が29%、「家族滞在」7%、「特別永住者」6%と続きます。

「留学」がトップに来るという構成は、23の大学が集積する学園都市・八王子ならではの特徴を色濃く反映したものといえます。国籍別に見ると、中国(台湾含む)が40%で最も多く、韓国・朝鮮15%、フィリピン10%、ベトナム8%、ネパール5%という顔ぶれです。市の統計資料の解説によれば、平成24年(2012年)12月時点で外国籍市民は8,983人、うち留学資格者は1,986人だったのに対し、平成29年(2017年)12月には全体12,219人・留学資格者3,778人まで増加しており、5年間で留学資格者がおよそ2倍に伸びたことが確認できます。

その後も増加基調は続き、令和6年(2024年)6月末時点の外国人住民数は16,296人に達したとされています。2018年の12,936人から6年でさらに3,000人以上増えた計算になり、国籍別の上位は中国5,791人、ベトナム1,863人、韓国1,850人、フィリピン1,487人、ネパール843人という顔ぶれです。八王子市公式サイトには「外国人住民 主要国籍・地域別人口」として令和元年から各年度版のデータが掲載されており、増加の流れは継続的に公開情報として確認できる状態にあります。


多文化共生推進プランの15年 —— 2013年策定から第2期へ

こうした人口の変化に対して、市はどのような枠組みで向き合ってきたのでしょうか。八王子市は平成25年(2013年)、「国籍、民族、文化の違いを互いに認め合い、助け合い、活かし合いながら、共に暮らす多文化共生のまちづくり」を基本理念とする「多文化共生推進プラン」を策定しました。

このプランは平成30年度(2018年度)に「多文化共生推進プラン(改定版)」として見直され、計画期間は平成30〜34年度(2018〜2022年度)とされました。さらに令和5年(2023年)3月には「第2期八王子市多文化共生推進プラン」が策定され、令和5〜12年度(2023〜2030年度)を計画期間として現在も運用されています。2013年の策定から数えて、すでに15年近くにわたって改定を重ねてきた枠組みだということになります。

改定版プランの施策体系は、大きく2つの目標に整理されています。「外国人市民も安心して暮らせるまちの実現」ではコミュニケーション支援と生活支援の充実が、「国際感覚豊かな市民を育むまちの実現」では多文化共生意識の啓発や国際理解・国際交流の推進が掲げられ、合わせて40の個別施策(施策No.1〜40)が設定されています。教育、医療・福祉、住まい、就労、防災、留学生支援といった生活のあらゆる場面をカバーする作りになっている点が、この計画の特徴です。


相談窓口から医療通訳まで —— 現場で積み重ねられた支援

計画の上でどれだけ立派な施策体系が組まれていても、実際に使われなければ意味がありません。「八王子市多文化共生推進プランに基づく取組状況」(令和3年度第1回多文化共生推進評議会資料)には、現場での実績数値が具体的に記録されています。

平成16年度に開設された「外国人サポートデスク」は、生活・コミュニケーションに関する相談対応を担う窓口で、令和2年度の相談件数は1,024件にのぼりました。令和元年度からは弁護士による外国人個別相談も年4回実施されており、令和2年度の相談件数は10件です。市役所窓口では令和2年度からタブレット端末によるテレビ電話通訳も導入され、特に子育て・福祉関連の窓口での利用が多いといいます。

本文画像: 市役所窓口の相談風景

支援の担い手となる語学ボランティアの登録者数は、平成29年度253人から平成30年度272人、令和元年度349人、令和2年度352人へと着実に増えてきました。このうち医療通訳ボランティアは12言語49人、災害時通訳ボランティアは11言語46人が登録されています(令和3年3月末時点)。平成20年度に始まった日本語ボランティア養成講座、外国人支援団体等による日本語教室(令和2年度参加者2,050人)、生涯学習センターの日本語教室(同379人)なども含め、行政と民間ボランティアが役割を分担しながら支援の網を広げてきた様子がうかがえます。


23大学の街ならではの留学生支援と、防災の多言語対応

学園都市・八王子ならではの取り組みとして特徴的なのが、留学生支援です。市内23大学が加盟する「大学コンソーシアム八王子」と連携した「外国人留学生支援事業」は平成25年度に始まり、令和2年度も留学生対策ワーキンググループ会議や留学生座談会といった形で継続されています。一方で、平成元年度から続いてきた「外国人留学生奨学金制度」は令和2年度をもって終了し、代わりに新入留学生向けパンフレット「留学生のための生活ガイド」の配布や、外国人留学生住居賃貸保証料補助金制度(平成19年度開始)へと支援の形を変えてきました。この補助金制度は令和3年度から日本語学校生にも対象が広がっています。

防災の面でも多言語対応が進められてきました。「八王子市総合防災ガイドブック」は英語・中国語・韓国朝鮮語の多言語版として平成30年度に第2版が作られ、各300部が配布されています。避難所・一時滞在施設向けには同じ3言語に対応した「コミュニケーション支援ボード」も配備され、市の防災ページには「外国人のための防災対策」として多言語ガイドブックのほか、出入国在留管理庁の外国人生活支援ポータルサイトへの案内も掲載されています。ただし令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、町会・自治会主催の防災訓練への外国人市民・語学ボランティアの参加が見送られるなど、訓練の実施自体が制約を受けた年度だったことも記録に残っています。

こうした行政の取り組みを実務面で支えているのが、市民活動推進部と協働する特定非営利活動法人・八王子国際協会(HIA)です。日本語教室の案内・運営支援や、外国につながる子どもの学習支援「多文化キッズサロン」(平成21年に北野学習支援教室、平成25年に八王子駅前教室を開設)、専門職による相談会、語学・医療通訳・災害時通訳ボランティアの登録研修などを担っており、八王子国際友好クラブ(HIFC)や「八王子にほんごの会」といった民間団体をつなぐ役割も果たしています。


町会・自治会との接点という、これからの課題

こうして見てくると、八王子市の多文化共生施策は決して手薄ではありません。しかし評議会資料自体が正直に認めている課題もあります。それが、地域コミュニティとの接点です。

多文化共生推進プランの施策No.10「外国人市民の町会・自治会等への加入促進」では、平成25年度から英語・中国語・韓国朝鮮語の多言語版「町会・自治会への加入促進チラシ」が作られ、転入時などに配布されてきました。ところが令和2年度時点の課題として、評議会資料自体が「町会・自治会の活動内容について外国人市民への更なる周知が必要」と明記しています。チラシを配るだけでは、加入促進が十分に進んでいないという実態です。

この論点は、連載「八王子という街」第17回で扱った町会・自治会の加入率低下という、市全体が抱える構造的課題とも重なります。地域の担い手が減っていくなかで、増え続ける外国人住民が新たな担い手となり得るのか、それとも支援を受ける側のまま留まるのか——多言語のチラシの先にある「顔の見える関係づくり」こそが、これからの多文化共生施策に問われている部分だといえそうです。


まとめ

1980年の1,206人から2024年の16,000人台へ。八王子で暮らす外国人住民の数は、40年余りをかけて13倍以上に増えてきました。23大学が集まる学園都市という土地柄を反映して「留学」が最大の在留資格区分を占める一方、市は2013年の多文化共生推進プラン策定以来、相談窓口や日本語教室、医療・災害時の通訳ボランティア、多言語の防災対応など、地道な実務を積み重ねてきています。それでもなお、町会・自治会という地域コミュニティとの接点は、評議会資料自身が課題として認める発展途上の分野です。増え続ける外国人住民とどう「顔の見える関係」を築いていくかは、これからの八王子という街の姿を占う一つの試金石になりそうです。


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連載「八王子という街」は、学生から50代まで、暮らしの視点から八王子という街の様々な顔を辿るシリーズです。

参考文献

この記事は連載「八王子という街」第20話です (全26話・更新中)

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暮らしと法律 · 7分

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。