はちおうじマップの登場 —— 公開型GISが変える八王子の暮らしと行政情報
八王子市が提供する公開型GIS「はちおうじマップ」で何が見られるのか。ハザードマップや公共施設から、道路台帳・都市計画情報まで、市民と事業者それぞれの使い道を整理します。

この記事の目次
避難所の場所、ハザードマップ、道路の幅員、土地の境界——これまで市役所の窓口や紙の地図でしか確認できなかった情報の多くが、今は一つの地図サービス上でまとめて見られるようになっています。八王子市が提供する公開型GIS「はちおうじマップ」がそれです。市民の暮らしに関わる情報から、不動産・建築事業者が実務で使う専門データまでを一つのプラットフォームに集約したこのサービスで、何が確認でき、どう使えるのかを整理します。
はちおうじマップとは何か — 八王子市の公開型GIS
はちおうじマップは、正式名称を「はちおうじマップ」、副題を「〜八王子市地理情報システム〜」といい、八王子市が「公開型GIS(地理情報システム)サービス」として提供している地図ベースの情報閲覧プラットフォームです。運営しているのは市の総合政策部デジタル推進課で、稼働基盤にはEsri社のArcGIS(ArcGIS HubおよびArcGIS Experience Builder)を採用しています。公開ポータルのURLは hachiojimap-hachiojicity.hub.arcgis.com で、パソコンでもスマートフォンでもブラウザから直接アクセスできます。
市の案内ページには「市内の様々な情報を閲覧できる」サービスと説明されており、特定の目的に絞ったハザードマップ専用サイトなどとは違い、暮らし・防災・都市計画といった複数分野の情報を一つの地図基盤に統合している点が特徴です。従来であれば、防災情報は防災担当窓口、都市計画情報は都市計画課、道路情報は道路担当課と、目的ごとに問い合わせ先が分かれていた情報を、利用者が自分で地図上を切り替えながら確認できるようにした、という位置づけになります。
運営元のデジタル推進課は、市の組織上は総合政策部(デジタル推進室)に属し、所掌事務としてはデジタル化の推進にかかる総合調整のほか、個人番号制度の総合調整、行政情報等ネットワークの運営、住民記録システム等の運営、情報セキュリティの管理運営及び総合調整を担っています。はちおうじマップは、こうした市全体の情報基盤を扱う部署が手がけるサービスの一つという位置づけです。掲載内容に疑問点がある場合の問い合わせ先は、八王子市元本郷町三丁目24番1号のデジタル推進課で、電話番号は042-620-7453、FAX番号は042-627-5939です。
暮らしに役立つ情報 — 市民向けレイヤー
市民向けに用意されているのは、公共施設や医療機関の位置情報、商業・観光施設などの観光資源、子育てに関連する情報です。引っ越してきたばかりで近所の病院や公民館の場所を把握したい人、子育て中で利用できる施設を探している人にとって、これらの情報を一つの地図で横断的に確認できる点は実用的です。
なかでも生活の安全に直結するのがハザードマップの機能です。土砂災害(特別)警戒区域、浸水想定(予想)区域、避難所、一時避難場所、災害時給水ステーションといった情報が、はちおうじマップ上で確認できます。八王子市は浅川流域や丘陵部を抱え、地域によって想定される災害リスクが異なるため、自宅や勤務先の住所を入力してその場所固有のリスクを把握できる仕組みは、紙のハザードマップを保管しておくよりも、必要なときにすぐ確認できるという意味で使い勝手が良い形です。市の案内ページの更新表示は「令和7年4月14日」となっており、情報が随時更新される運用であることもうかがえます。
事業者向け情報 — 道路台帳から地番現況図まで
はちおうじマップは、市民の暮らし向けの情報だけでなく、不動産・建築・土木といった業種の事業者を主な想定利用者とする専門的な情報も同じプラットフォーム上で公開しています。具体的には、市道の位置・幅員などを示す道路台帳、指定道路の情報、用途地域などの都市計画に関する情報、土地境界図マップ、区画・地籍マップ、地番現況図マップが提供されています。
これらは従来、現地確認や窓口での申請・閲覧を必要とすることが多かった情報です。オンラインで概要を把握できるようになれば、物件調査や設計の初期段階で市役所に出向く回数を減らせる可能性があります。ただし、このうち「都市計画マップ」と「土地境界図マップ」は、サービス開始当初から提供されていたわけではなく、2025年9月頃の広報告知によって新たに追加されたレイヤーです。つまり、事業者向け機能は当初から完成していたのではなく、段階的に拡充されてきた経緯があります。登記や取引に関わる正式な確認は、引き続き法務局や市の窓口で行う必要がある点にも注意が必要です。
なお、区画・地籍マップと地番現況図マップは、はちおうじマップの入口ページとは別に、それぞれ独立したArcGIS Experienceアプリとして公開されています。利用者は、はちおうじマップのトップページから各機能へのリンクをたどってアクセスする形になっており、一つの巨大な地図に全情報が重ねて表示されるというより、目的別の複数のマップアプリが緩やかに束ねられた構成になっている点も、実際に使う際には知っておくとよいでしょう。
提供開始と機能拡充の経緯
はちおうじマップの提供が始まった時期について、八王子市広報の公式X(@hachioji_koho)アカウントは、公開型GISサービスの提供開始を告知する投稿を行っています。2025年9月頃に行われた後続の投稿では「今年2月より提供を開始したはちおうじマップ(公開型GIS)」と述べており、これらを突き合わせると提供開始は2025年(令和7年)2月頃とみられます。投稿本文には日にち単位までの正確な日付は明記されていないため、月単位までの精度にとどまります。
同じ2025年9月頃の投稿では「はちおうじマップで閲覧できる情報が増えました」として、都市計画マップと土地境界図マップの追加を告知しています。あわせて「閲覧できる情報は順次追加予定」との方針も示されており、はちおうじマップは提供開始時点で完成形だったのではなく、段階的にレイヤー(提供項目)を拡張していく前提で運用されていることが分かります。今後も新しい情報が追加される可能性があるため、事業者・市民のいずれにとっても、定期的にポータルを確認する価値がありそうです。
オープンデータ政策・DX推進計画との位置づけ
はちおうじマップは、八王子市が進めるオープンデータ政策やデジタル・トランスフォーメーション(DX)の取り組みとも重なります。市公式ホームページの「オープンデータ」セクションでは、行政が保有する公共データを二次利用可能なルールで公開し、市民や企業が自由に編集・加工などをして利活用できるよう整備していると説明されており、目的として「市民生活の利便性向上や新たなビジネスの創出等が期待されます」と明記されています。オープンデータカタログには、市税、自治体標準データセット、基礎データ集、教育関連、統計、人口、まちづくり、インフラ、防災、防犯、交通、子育て、市政、経済、環境、保健衛生、福祉、予算概要、決算報告書など、多岐にわたる区分でデータが公開されています。個別のデータの例としては、当初予算の概要、「八王子基礎データ集」、市税関連データ、人口関連データなどが挙げられています。
より大きな枠組みとして、八王子市は令和4年(2022年)2月に「八王子市デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定しています。前期計画の計画期間は令和4年度から令和7年度(2022年度から2025年度)で、後継となる現行計画の計画期間は令和8年度から令和9年度(2026年度から2027年度)とされ、そのパブリックコメントは2025年12月15日から2026年1月15日にかけて実施されました。計画のビジョンは「デジタル技術の活用により人と人のつながりを深め、地域共生社会を実現する」こととされ、「生活の質の向上」「地域課題の解消」「行政の業務刷新」を基本方針としています。はちおうじマップは、こうした基本方針を地図情報という具体的なサービスの形で実装したものと位置づけられます。
公開型GISやオープンデータカタログの整備は、八王子市に限った動きではありません。国のレベルでも、独立行政法人国立文化財機構の奈良文化財研究所が「文化財総覧WebGIS」という全国の文化財情報を地図上で横断検索できるシステムを公開しており、総務省が進める自治体DXの流れの中で、地図情報のオープン化は全国の基礎自治体に広がっている取り組みです。なお、民間の自治体DX実態調査では八王子市のDX化を高く評価する記述も見られますが、これは市の公式発表ではなく民間事業者による独自調査であり、評価基準の妥当性までは確認できていません。数値を額面通りの事実として受け取るのではなく、あくまで民間調査による一つの評価として参考にとどめるのが妥当でしょう。
まとめ
はちおうじマップは、避難所やハザードマップといった暮らしの安全に関わる情報から、道路台帳や都市計画情報といった事業者向けの専門データまでを一つの公開型GISに集約したサービスです。2025年2月頃に提供が始まり、同年9月には都市計画マップ・土地境界図マップが追加されるなど、段階的に機能を拡充してきました。市のオープンデータ政策やDX推進計画とも軌を一にする取り組みであり、今後も情報が追加されていく見込みです。自宅や勤務先のハザードリスクを確かめたい人も、業務で土地・道路情報を扱う事業者も、まずはポータルサイトを開いて、自分の暮らす地域や関心のある場所を検索してみることから始められます。
参考文献
八王子市ホームページ「はちおうじマップ ~八王子市地理情報システム~」「ハザードマップ」「都市計画情報(用途地域等)の提供」「オープンデータ」「八王子市デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」 / 八王子市広報 公式X投稿「公開型GISサービス(はちおうじマップ)の提供を開始」「はちおうじマップで閲覧できる情報が増えました」
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