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暮らしと法律 · 公開: 2026.10.12 · 7分で読めます

派遣労働者の「同一労働同一賃金」、2026年10月に何が変わったか —— 桑都の工房・商店が派遣を受け入れるときの確認点

2026年10月1日、派遣労働者の同一労働同一賃金ルールが改正施行された。待遇差の説明請求権の明示、ガイドラインの明確化など3つの柱と、派遣元・派遣先それぞれの対応、八王子市内の相談窓口を整理する。

古風な室内に置かれたヴィンテージの天秤ばかり

2026年10月1日、派遣で働く人の待遇に関わるルールが改正施行されました。「同一労働同一賃金」という言葉自体は数年前から聞かれますが、今回の改正で変わったのは、派遣労働者が待遇差の理由を説明してもらえる権利が契約の時点で明示されるようになったこと、そして何が「不合理な待遇差」にあたるかの線引きがより具体的になったことです。繁忙期に派遣スタッフを受け入れる工房や商店にとっても、見過ごせない変更点があります。この記事では、何が変わったのか、派遣元・派遣先それぞれが何を確認すべきか、そして八王子市内でどこに相談できるのかを順に見ていきます。


何が変わったのか、まず結論

厚生労働省は2026年4月28日、同一労働同一賃金に関する改正省令・告示を公布し、2026年10月1日から施行しました。改正の柱は3つあります。一つ目は、派遣労働者を雇い入れる時や派遣する時の明示事項に「待遇の相違内容及び理由について説明を求めることができる旨」が追加されたこと。二つ目は、同一労働同一賃金ガイドラインが裁判例を踏まえて明確化されたこと。三つ目は、待遇差を解消する際に公正な評価による改善を促す仕組みが強化されたことです。

派遣労働者の待遇は、もともと派遣元事業主に対して二つの方式のいずれかが義務付けられています。一つは「派遣先均等・均衡方式」で、派遣先の通常労働者との間で不合理な待遇差を禁止し、基本給・賞与・手当・福利厚生などすべての待遇について均等・均衡を図るものです。もう一つは「労使協定方式」で、派遣元が労働者過半数代表者と協定を締結し、同種業務の一般労働者の平均賃金と同等以上の待遇を確保する方式です。今回の改正は、どちらの方式を採っている派遣元にも関係します。

待遇差について説明を求められる仕組み自体は以前から存在していましたが、今回の改正で変わったのは、その点が雇い入れ時・派遣時の明示事項として明記されるようになったことです。つまり、派遣で働き始める時点で「待遇差について説明を求めてよい」ということが契約上はっきり示されるようになったという変化で、派遣労働者にとっては権利の存在を知らないまま働き続けるリスクが小さくなります。改正にあわせて、労働者派遣法施行規則および関係告示も公布されており、省令・告示・施行規則という複数の法令文書が連動して整備された改正になっています。


そもそもの制度:派遣先均等・均衡方式と労使協定方式

実務上、労使協定方式を選ぶ派遣元事業主が多いのですが、この方式では毎年度、同種業務の一般賃金水準を上回る賃金を設定できているかを確認する必要があります。そのための計算ツールとして、厚生労働省は改正に対応した「賃金比較ツール(令和9年度適用版)」を2026年10月2日に公表しました。これは派遣元が自社の賃金設定を一般賃金水準と比較するための実務ツールで、改正後の基準に沿って更新されています。

派遣先均等・均衡方式を採る場合は、派遣先企業が自社の通常労働者の待遇情報(基本給の決定方法、各種手当の有無と金額、福利厚生施設の利用条件など)を派遣元に提供する義務があります。この情報提供がなければ、派遣元は適切な待遇比較ができません。どちらの方式であっても、派遣元・派遣先の情報連携が制度の土台になっている点は変わりません。

この二つの方式のどちらを選ぶかは派遣元事業主の判断に委ねられていますが、方式を選んだ後も毎年度の見直しが必要になる点は共通しています。派遣先均等・均衡方式では、派遣先の通常労働者の待遇が変わればそのたびに比較し直す必要があり、労使協定方式でも、一般賃金水準自体が年度ごとに更新されるため、賃金比較ツールを使って毎年確認する作業が欠かせません。いずれの方式も「一度決めたら終わり」ではなく、継続的な確認が求められる制度だという点を押さえておく必要があります。


ガイドラインで何が明確になったか

改正された同一労働同一賃金ガイドラインでは、賞与、退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、福利厚生施設、病気休職、夏季冬季休暇、褒賞といった個別の待遇項目について、不合理な待遇差にあたるかどうかの考え方がより具体的に示されました。これまでは基本給や通勤手当など分かりやすい項目の解説が中心でしたが、裁判例の積み重ねを踏まえて、判断に迷いやすい項目まで踏み込んだ記載が加わっています。

もう一つの重要な変更は、待遇差を解消する方向性についての考え方です。通常の労働者と派遣労働者の間に不合理な待遇差が見つかった場合、通常の労働者の労働条件を引き下げて差を縮めるのではなく、派遣労働者側の待遇を改善する方向で対応することが求められます。あわせて、派遣労働者の計画的な教育訓練や段階的なキャリアアップを支援する取り組みの強化も、今回の改正に含まれています。待遇の公平性だけでなく、派遣で働く人のキャリア形成そのものを後押しする狙いがあります。


派遣元・派遣先それぞれが対応すべきこと

派遣会社(派遣元事業主)がまず対応すべきは、労働条件通知書・就業条件明示書の書式改定です。待遇差の説明を求められる旨を明示事項に加える必要があり、労使協定方式・派遣先均等・均衡方式のどちらを採用している場合でも、関係書式の見直しが欠かせません。あわせて、実際に派遣労働者から説明を求められた際に、待遇差の内容と理由をすぐに整理して答えられる体制を整えておくことも実務上重要です。

派遣先企業、つまり工房や商店など派遣労働者を受け入れる側に求められるのは、比較対象となる通常労働者の待遇情報を派遣元へ提供することと、派遣元との連携・情報共有の体制を確認することです。繁忙期だけ派遣スタッフを受け入れている事業者でも、この情報提供義務そのものは変わりません。中小企業・個人事業主向けの猶予措置や、対応を怠った場合の具体的な罰則については、厚生労働省の公開資料の中では明確な記載を確認できませんでしたが、対応の遅れは行政指導の対象になり得るため、書式・体制の確認は早めに済ませておくことをおすすめします。

実務の順番としては、まず自社がどちらの方式(派遣先均等・均衡方式または労使協定方式)を採る派遣元と取引しているかを確認し、その方式に応じて必要な情報提供の範囲を把握するところから始めるのが現実的です。派遣元から待遇情報の提供を求められた際に慌てないよう、通常労働者の基本給の決定方法や手当の種類・金額を整理した資料をあらかじめ用意しておく事業者も少なくありません。派遣会社側としても、改正後の明示事項に対応した新しい書式を、2026年10月1日以降の新規契約分から確実に使うよう、社内での周知を済ませておくことが実務上のポイントになります。


派遣で働く人・雇う側の規模感

派遣という働き方がどれくらいの規模で存在するのか、全国統計で見てみます。総務省の労働力調査(2025年)によれば、派遣社員は156万人で、役員を除く雇用者5,835万人に占める割合は約3%です。一方、厚生労働省の労働者派遣事業報告(令和6年6月1日時点)によれば、派遣労働者数は約191万人、職種別では事務職が54万人(34.6%)で最も多く、次いで製造関連が38万人(24.4%)となっています。労働力調査と労働者派遣事業報告は調査方法や母体が異なるため数字に幅がありますが、いずれにしても100万人を超える規模で派遣という働き方が使われていることが分かります。

派遣事業の許可事業所数(支店・営業所を含む)は2025年6月時点で44,110か所にのぼり、2024年度の派遣事業全体の年間売上高は9兆9,005億円に達します。桑都の工房や商店にとっても、繁忙期の人手確保や専門スキルを持つ人材の受け入れで、派遣という選択肢はすでに身近な存在になっていると言えるでしょう。

観光シーズンの土産物店や、年末年始・催事期間中だけ人手が必要になる商店にとって、派遣は正社員採用よりも柔軟に人員を調整できる手段です。横山町・八日町の商店街のように空き店舗対策が課題になっている地域では、短期的な人材確保の選択肢としての派遣の役割は今後も残ると考えられます。規模の大小にかかわらず、派遣を受け入れる以上は今回の改正内容を知っておく必要があるという点は変わりません。


八王子市内で相談できる窓口

制度の詳しい確認や個別の相談が必要になったときは、役割の異なる窓口を使い分けるのが近道です。派遣労働そのものに関する相談は、東京労働局需給調整事業部(立川市曙町2-8-18 東京建物ファーレ立川ビル5階)が窓口になります。労働条件や労使間のトラブルに関する相談は、八王子労働基準監督署内の総合労働相談コーナー(八王子市明神町3-8-10、電話042-680-8081)、または八王子地方合同庁舎3階に設置されている八王子総合労働相談コーナーで受け付けています。

どこに相談すればよいか分からない場合は、フリーダイヤル0120-601-556にかければ、有楽町総合労働相談コーナーにつながり、適切な窓口への案内を受けられます。派遣元・派遣先いずれの立場でも、書式改定や体制整備で迷うことがあれば、公表された施行日から時間が経っていても相談して問題ありません。


まとめ

2026年10月に施行された改正は、派遣労働者が待遇差の理由を説明してもらえる権利の明示、ガイドラインの明確化、公正な評価による待遇改善の促進という3つの柱からなります。派遣元は書式改定と説明体制の整備、派遣先は待遇情報の提供と連携体制の確認が、それぞれ求められます。繁忙期の人手確保で派遣を受け入れる桑都の工房や商店も無関係ではないため、迷ったときは八王子労働基準監督署や東京労働局の窓口を早めに頼ってみてください。


参考文献

厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」 / 厚生労働省「派遣労働者・派遣元・派遣先の皆さまへ 派遣労働者の同一労働同一賃金 改正ポイントのご案内」 / 厚生労働省「派遣労働者実態調査結果の概況」 / 東京労働局「総合労働相談コーナー」 / 東京労働局需給調整事業部「相談窓口のご案内」

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。