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暮らしと法律 · 公開: 2026.10.02 · 7分で読めます

就活セクハラ防止が義務化 —— 2026年10月施行、学園都市・八王子の学生と企業が知っておくべきこと

2026年10月1日、改正労働施策総合推進法等に基づき「求職者等セクシュアルハラスメント」防止措置が全事業主の義務になった。何が変わり、どんな場面が対象で、相談先はどこかを整理する。

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2026年10月1日、採用面接や会社説明会、インターンシップといった「就職活動中」の場面で起きるセクシュアルハラスメントへの対策が、初めて全事業主の法的義務になりました。これまでのセクハラ防止義務は自社の労働者だけが対象で、採用選考中の学生や転職希望者は対象外だったためです。この記事では、何がどう変わったのか、企業に何が求められるのか、そして被害に遭ったときの相談先までを整理します。


結論——2026年10月1日から「就活中」のセクハラ対策も企業の義務になった

2026年10月1日、改正労働施策総合推進法等(令和7年法律第63号)に基づき、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が全事業主の義務になりました。業種や企業規模を問わず、採用活動を行うすべての事業主が対象です。

この義務の直接の根拠になっているのが、令和8年厚生労働省告示第52号「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」です。この告示は2026年2月26日に公布され、同年10月1日から適用が始まりました。告示という形で具体的な措置内容が示されたことで、企業側は「何をどこまでやれば義務を果たしたことになるのか」を確認できる状態になっています。

結論としてまず押さえておきたいのは、この改正が「新しい罰則」を作ったというより、「これまで法律のすき間だった場面」に初めて網をかけたという点です。背景には、就職活動中のセクハラが決して珍しい出来事ではないという実態があります。

厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(令和6年3月)によれば、2020〜2022年度卒業で就職活動やインターンシップを経験した人のうち、インターンシップ中に就活セクハラを一度以上受けたと答えた人は30.1%、インターンシップ以外の就職活動中に受けた人は31.9%にのぼりました。受けた言動の内容としては「性的な冗談やからかい」が38.2%で最も多く、次いで「食事やデートへの執拗な誘い」が35.1%、「不必要な身体への接触」が27.2%という結果でした。おおよそ3人に1人という割合は、この問題が一部の例外的な出来事ではなく、構造的な課題であることを示しています。

次の章から、具体的に何が変わったのかを見ていきます。


何が変わったのか——対象が「自社の労働者」から「求職者等」へ広がった

従来の男女雇用機会均等法に基づくセクハラ防止義務は、事業主が雇用する「労働者」が対象でした。つまり、既に採用され社内にいる従業員同士のセクハラは規制の対象でしたが、採用選考を受けている最中の学生や転職希望者は、法律上の保護の枠外に置かれていたのです。

今回の改正・告示により、「求職者その他これに類する者」、略して「求職者等」が新たに対象に加わりました。採用面接、会社説明会、インターンシップ、OB・OG訪問といった「求職活動等」の場面で、企業の労働者が求職者等に対して行う性的な言動が、はっきりと規制の対象になったことになります。

この変化が意味するのは、「内定が出る前」「正式に雇用契約を結ぶ前」の段階にいる人も、法律による保護の対象になったということです。就職活動中の学生や転職希望者にとっては、自分の身に起きたことを「会社の正式な一員ではないから我慢するしかない」と考える必要がなくなった、という実務上の変化があります。


事業主に求められる4つの措置

告示は、事業主に対して具体的に4つの措置を講じるよう義務付けています。1つ目は方針の明確化と周知・啓発です。求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容と、それを行ってはならないという方針を明確にし、管理監督者を含む全労働者に周知・啓発することが求められます。

2つ目は相談体制の整備です。相談窓口をあらかじめ定め、自社の労働者だけでなく求職者等にもその存在を周知し、内容や状況に応じて適切に対応できる体制を整えることが必要です。3つ目は、実際に問題が起きた後の迅速かつ適切な対応で、事実関係の正確な確認、被害を受けた求職者等への配慮、行為者への適正な対処、再発防止の措置までが一連の流れとして求められます。

4つ目はプライバシー保護と不利益取扱いの禁止です。相談した人・相談された行為者双方のプライバシーを保護し、相談したことを理由に不利益な扱いをしてはならないという点が明記されています。この4項目は、既存のパワハラ・セクハラ対策で企業が整えてきた枠組みと基本構造は同じですが、対象を社外の求職者等にまで広げて適用し直す必要がある点が実務上の新しさです。

同じ実態調査の企業向け調査では、過去3年間に「就活等セクハラ」の相談があったと回答した企業はわずか0.7%にとどまり、就活等セクハラに関する取組を「特にない」とした企業が53.0%にのぼりました。パワハラの相談があったと答えた企業が64.2%、セクハラが39.5%だったことと比べると際立って低い数字です。業種別に取組状況を見ると、金融業・保険業や情報通信業では他業種より取組の実施割合が高い一方、全体で見れば半数を超える企業が何も実施していませんでした。

学生の側では3人に1人が被害を経験していると答えている一方で、企業側はその実態をほとんど把握できていない、あるいは対応を後回しにしてきたという、認識と実態のあいだの大きなずれがあったことになります。今回の法改正は、このずれを埋めるために、努力目標だった対応を明確な義務へと引き上げたものと位置づけられます。


具体的にどんな場面が対象になるのか——告示が示す典型例

告示では、どのような言動が問題になり得るかについて、具体的な典型例が示されています。1つ目は採用面接の場面で、面接官を務める労働者が面接中に性的な事実関係に関する質問をする行為です。2つ目は会社説明会の場面で、少人数の説明会において労働者が求職者等の体に触れる行為が挙げられています。

3つ目はインターンシップの場面で、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行い、求職者等が苦痛を感じてインターンシップ中の活動に支障が出るケースです。4つ目はOB・OG訪問の場面で、求職者等が労働者のもとを訪問した際に性的な関係を求められ、その後の就職活動への意欲が下がってしまうケースが典型例とされています。

これらの例を見ると分かるのは、問題になる場面が「正式な面接室の中」だけに限られていないということです。説明会の会場、インターンシップの実習中、個人的に設定されるOB・OG訪問まで、採用活動に関連するあらゆる接点が対象に含まれていることが、この指針の実務上のポイントになります。


学園都市・八王子にとっての意味——学生と企業がいま確認すべきこと

八王子市は中央大学、工学院大学、創価大学、東京都立大学南大沢キャンパスなど、数多くの大学・短大が立地する学園都市です。桑都手帖の過去の記事でも、市内に23の大学・短大が集まる街の姿を取り上げてきました。毎年、数多くの学生がこの街から、あるいはこの街を拠点に、企業の採用選考やインターンシップに参加しています。

今回の法改正は、こうした学生たちが企業と接点を持つあらゆる場面に直接関わってきます。先に触れた実態調査では、就活セクハラの行為者として、インターンシップ中は「インターンシップ先で知り合った従業員」が47.4%で最も多く、インターンシップ以外の就職活動中では「大学のOB・OG訪問を通して知り合った従業員」が38.3%、「学校・研究室等へ訪問した従業員、リクルーター」が37.0%という結果が出ています。大学が多く立地する街では、OB・OG訪問や学内での説明会・リクルーター訪問といった接点そのものが他の地域より多く生まれやすく、この調査結果は八王子のような学園都市にとって他人事ではない数字だといえます。

もし就職活動中に今回の指針が示すような言動を受けた場合、または企業側として自社の対応が十分か不安がある場合は、まず都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談するのが窓口になります。東京都内の学生・企業であれば、東京労働局の雇用環境・均等部が担当窓口です。

実態調査では、就活セクハラを受けて何もしなかった理由として「何をしても解決にならないと思ったから」と答えた人が、インターンシップ中で48.6%、インターンシップ以外の就職活動中で37.9%と最も多くなっていました。一方で、実際に相談した人の4割以上は「解決策は示してくれなかったが、相談にのってくれた」と回答しており、何も行動しないより、まず誰かに話してみること自体に意味があったこともうかがえます。

企業の側から見れば、採用担当者や面接官として現場に立つ社員一人ひとりに、この改正の内容が周知されているかどうかが問われることになります。学生の側から見れば、就職活動で違和感を覚えたときに「これは我慢するものではなく、相談していいことだ」と知っておくこと自体が、まず押さえておきたい第一歩になります。


まとめ

2026年10月1日の法改正で、就職活動中のセクシュアルハラスメント対策は、企業が任意で配慮するものから、法律で定められた義務へと変わりました。方針の周知、相談窓口の整備、問題発生後の対応という基本的な枠組みは、学生・企業のどちらにとっても「知っているかどうか」が最初の分かれ目になります。学園都市として多くの学生を送り出し、また受け入れてきた八王子だからこそ、この変化を押さえておく意味は小さくありません。


参考文献

厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」 / 厚生労働省「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号) / 東京労働局「求職者等セクシュアルハラスメント対策について」 / 長野労働局「改正労働施策総合推進法等説明会リーフレット」 / 厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)」(PwCコンサルティング合同会社、令和6年3月)

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。