桑都の杜への足は自動運転バス —— 八王子駅南口で始まった地域交通の実証運行
2026年10月3日、八王子駅南口と複合施設「桑都の杜」を結ぶ自動運転バスの実証運行が始まりました。乗り方・運行日・車両仕様と、八王子市がこの実証運行に取り組む理由を整理します。

この記事の目次
2026年10月3日、八王子駅南口と新しい複合施設「桑都の杜」を結ぶ区間で、無人運転ではなく運転士が監視するタイプの自動運転バスが走り始めました。乗車は無料、事前予約も不要で、定員13名、最高速度は時速40キロメートル、運行は2026年12月25日まで続きます。どこで乗れて、どんな仕組みで走っているのか、そして八王子市と東京工科大学がなぜこの実証運行に乗り出したのかを順に見ていきます。
協定から実証運行開始まで
事の始まりは2026年7月9日です。八王子市と東京工科大学は、「自動運転社会実装推進事業コンソーシアム協定」を締結しました。両者はこれより前の2025年10月にもAI・DX分野の連携協定を結んでおり、今回はその取り組みを交通分野へ広げたものです。
協定の時点で示された実証運行計画は2ルートでした。一つは2026年10月に開業予定の複合施設「桑都の杜」とJR八王子駅を結ぶルート、もう一つは東京工科大学八王子キャンパスとJR八王子駅を結ぶルートです。前者が先に動き出したことになります。
この取り組みは、八王子市と東京工科大学だけで進めているものではありません。八王子市公式ホームページによれば、本事業は国土交通省の事業の一環として実施されています。地域の運転士不足という課題は八王子市だけのものではなく、国レベルの政策課題としても位置づけられていることがうかがえます。
2026年10月3日、桑都の杜開業と同日に始まった運行
実証運行が始まったのは、桑都の杜の開業日と同じ2026年10月3日(土)でした。ルートはJR八王子駅南口と桑都の杜(八王子市子安町3-26-1)の間で、運行期間は同日から2026年12月25日(金)までです。運行時間帯は9時から16時まで、1時間あたり2本程度のペースで走ります。
新しい施設の開業に合わせて交通の実証実験まで同時に走り出す、というのは珍しい組み合わせです。桑都の杜そのものについては、公園・博物館・図書館・交流拠点という4つの機能を持つ複合施設としての沿革を別記事で詳しく扱っていますので、ここでは施設へのアクセス手段という一点に絞って見ていきます。駅から徒歩でも行ける距離ですが、短い区間をあえて自動運転バスで結ぶこと自体が、この実証運行の目的のひとつになっています。
運行開始にあたっては、東京工科大学の香川豊学長と、自動運転の研究を主導する須田義大センター長が関わり、八王子市側では初宿和夫市長が実証運行に関わったことが報じられています。市と大学、それぞれの立場からこの取り組みを進めてきたことがうかがえ、両者の協力関係が実証運行という形で実を結んだことになります。
乗ってみると分かる仕様 —— レベル2・無料・13人乗り
実際にどんな車両が走っているのかを確認しておきます。自動運転のレベルは「レベル2」で、これは運転士の監視のもとで特定の条件下に限り自動運転機能が働く段階を指します。完全な無人運転ではありません。
ベース車両には、日野自動車の小型バス「ポンチョ」が使われています。自動運転システムの開発には、先進モビリティ株式会社が技術協力しています。乗車定員は自動運転時で13名、運行本数は1日10往復程度が計画されており、乗車料金は無料です。短距離区間を小型バスでこまめに往復させる、という設計であることが分かります。
車内には、運転席の後ろに自動運転の状態を確認できるモニターが設置されています。運転士はこのモニターで自動運転システムの作動状況を見ながら乗車し、必要があれば手動運転に切り替えます。無人のバスが走っているわけではなく、常に運転士が監視しているからこそ「レベル2」と呼ばれる段階にある、という点は乗る前に知っておきたいところです。
八王子市公式ホームページによれば、自動運転時の最高速度は時速40キロメートル、定員は13人で全員着席が前提です。立ち乗りはできません。乗車にあたって事前予約は不要で、JR八王子駅南口の乗車場所に直接行けばそのまま乗ることができます。問い合わせ先は八王子市交通政策課(電話042-620-7432)です。
運行日・運休日を確認する
乗りに行く前に、運行日は確認しておく必要があります。運行日は木曜・金曜・土曜・日曜および祝日で、平日(月〜水)は運行していません。
運休日として設定されているのは10月11日・12日、12月19日・20日です。一方で、通常であれば運行対象でない平日のうち、11月2日(月)と12月8日(火)は特別運行日として設定されています。木〜日・祝日という基本パターンと、この2種類の例外(運休日・特別運行日)が組み合わさっているため、曜日だけで判断せず、訪れる前に運行日程を確認したほうが確実です。実証運行という位置づけのため、こうした細かな調整が入りやすい点も、通常の路線バスとは異なる特徴だと言えます。
なぜ八王子市はこの実証運行に取り組むのか
背景にあるのは、運転士不足と交通空白地の解消という、地域公共交通が抱える課題です。路線バスの運転士を確保しにくくなっている状況は全国の自治体に共通する悩みであり、八王子市も例外ではありません。
この課題に対して東京工科大学が持ち込んだのは、同大学が保有する27台のスクールバスの運行実績と、AI研究の知見です。実は今回が初めての自動運転の試みではありません。東京工科大学は2026年3月から、キャンパスとJR八王子みなみ野駅を結ぶ区間で、学園スクールバスを使った自動運転の先行実証を行っていました。今回の桑都の杜〜八王子駅間の実証運行は、2026年3月の先行実証から数えて半年余りを経て始まった、その積み重ねの上に乗った次の段階だと位置づけられます。
もともと27台のスクールバスは、学生や教職員というキャンパス内の限られた利用者のために走っていた車両です。その運行実績とAIの知見を、学内の移動手段から地域全体の公共交通の課題解決へと広げていく——観光経済新聞の見出しが「スクールバスから地域交通の活性化へ」と表現している通り、今回の実証運行は大学の持つ資産を地域に開いていく取り組みとして位置づけられます。
オープン記念イベントと2027年以降の拡大計画
開業翌日の2026年10月4日(日)午前10時から午後4時まで、八王子駅南口の南大通りでは「桑都の杜オープン記念」の歩行者天国イベントが、八王子市建設部拠点整備課の主催で開催されました。子ども向けブースや、地域を巡る「桑都の杜謎ツアー」、モルック・ボッチャ体験会、青空ヨガといった企画が並び、市のマスコットキャラクターとの交流ブースも設けられました。自動運転バス自体はこのイベントとは別の取り組みですが、10月4日も運行日に当たるため、開業記念の賑わいの中を自動運転バスが走る形になりました。
今後の計画としては、2027年1月以降、運行ルートを東京工科大学八王子キャンパス方面へ拡大する第2段階が予定されています。東京工科大学は、本年度中にJR八王子駅と同大学キャンパスを結ぶルートでも実証実験を実施する方針を示しており、桑都の杜ルートはその最初の一歩という位置づけです。
さらに先の構想としては、現在のように運転士が監視する「レベル2」から、運転士の監視を必要としない「レベル4」の実現を目指す方針が示されています。東京工科大学が持つスーパーコンピューター「青嵐」を活用して自動運転アルゴリズムの高度化を進め、運転士不足や交通空白の解消という課題解決につなげることで、大学側は「八王子発の社会実装モデルの構築」を目指すとしています。
レベル2は運転士が常に監視し必要に応じて手動に切り替える段階であるのに対し、レベル4は特定の条件下であれば運転士の監視なしで走行できる段階を指します。今回の桑都の杜〜八王子駅間の実証運行は、その両者の間にある現在地を示すものであり、桑都の杜という一つの目的地への足を確保する実証実験が、より広い範囲の地域交通を見据えた取り組みへ発展していく道筋が、すでに示されていることになります。
まとめ
八王子駅南口と桑都の杜を結ぶ自動運転バスは、2026年10月3日から12月25日まで、木〜日・祝日を中心に、事前予約なしで誰でも無料で乗ることができます。背景にあるのは運転士不足という地域公共交通の課題で、東京工科大学が積み重ねてきたスクールバス実証の延長線上に位置づけられる取り組みです。2027年にはルートの拡大も予定されており、さらに先には運転士の監視を必要としない「レベル4」の実現も見据えられています。桑都の杜という新しい場所への足が、これからの八王子の交通をのぞく小さな窓にもなっています。
参考文献
レスポンス「自動運転バス、八王子市と東京工科大学がコンソーシアム協定…2026年度中に実証運行へ」「自動運転バス、東京・八王子で実証運行開始…東京工科大学と八王子市が連携」 / 観光経済新聞「八王子発、スクールバスから地域交通の活性化へ——東京工科大学、新複合施設『桑都の杜』~JR八王子駅間で自動運転バスの実証運行を開始」 / 八王子市ホームページ「【10月4日】八王子駅南口で歩行者天国を開催します!【桑都の杜オープン記念】」 / AI Watch「東京工科大学、八王子で自動運転バス実証運行を実施」 / 8dabe.com「『桑都の杜』〜八王子駅南口をひと足先に試乗」 / 八王子市ホームページ「自動運転バス」
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