本文へスキップ
あと7分 購読

工芸とデジタル · 公開: 2026.10.30 · 7分で読めます

図書館の利用者証はマイナンバーカードで代用できる —— 八王子市、2018年先行導入から現在地まで

八王子市図書館ではマイナンバーカードを利用者証として使えます。手続きの手順と、個人番号そのものは使わないという設計、2018年からの経緯を整理しました。

麻の葉文様風にアレンジした点と線のネットワーク模様

図書館カードを忘れても、マイナンバーカードを持っていれば本を借りられます。八王子市図書館では、事前に手続きをしておけば、マイナンバーカードを利用者証として使えるからです。やり方は2段階で、特別難しい作業はありません。この記事では、その具体的な手順と、「マイナンバーで個人情報が図書館に把握されるのでは」という不安への答えを、2018年の導入経緯まで遡って整理します。


マイナンバーカードを図書館利用者証として使う方法

結論から言うと、必要な手続きは2段階です。まず、総務省の「マイキープラットフォーム・ポータルサイト」で8桁の「マイキーID」を登録します。次に、これまで使っていた図書館利用者カードを持って、八王子市図書館の各館カウンターで利用手続きを行います。この2つを済ませれば、以降はマイナンバーカードを提示するだけで貸出・返却ができるようになります。

注意したいのは、マイナンバーカードに切り替えたからといって、従来の利用者カードが不要になるわけではない点です。カウンターでの紐づけ作業そのものに、既存の利用者カードの提示が前提になっています。また、利用者カードの有効期間は5年間で、5年ごとの更新が必要です。マイナンバーカードを使う場合でも、この更新サイクルは変わりません。

ICカードリーダーが自宅にない場合、マイキーIDの登録をスマートフォンだけで完結できるかどうかは状況によって異なるため、不明な点があれば図書館の窓口に確認するのが確実です。

そもそも図書館を初めて利用する場合は、マイナンバーカードの有無にかかわらず新規の利用者登録が必要です。中学生以上は、住所・氏名・生年月日が確認できる書類(免許証・マイナンバーカード・学生証など)の提示が求められます。利用対象は八王子市に在住・在勤・在学する人に加え、府中市・調布市・町田市・日野市・多摩市・稲城市・あきる野市・相模原市の在住者にも開かれており、近隣に住む人であれば八王子市民でなくても利用者カードを作れます。


マイキープラットフォームという国の仕組み

そもそも、なぜマイナンバーカードで図書館の本が借りられるのでしょうか。その土台になっているのが「マイキープラットフォーム」という、総務省と経済産業省が主導して整備した情報基盤です。

マイキープラットフォームは、マイナンバーカードに搭載された公的個人認証サービス(利用者証明用電子証明書)を使い、図書館利用者証や自治体ポイントなど、さまざまな「市民カード」機能をマイナンバーカード1枚に統合することを目的とした仕組みです。図書館はこの基盤を活用する施設の一つという位置づけになります。

この仕組みは一度整備されて終わりではなく、改善が続いています。令和5年度には、デジタル庁がマイキープラットフォームの機能改修を行い、利用者が自宅にいながら図書館の利用者登録を完了できるようにするなど、利便性を高める取り組みが進められました。

この改修の鍵になっているのが「PPID」という仕組みです。マイナンバーカードの公的個人認証から生成される、サービスごとに異なる識別子のことで、マイナンバーそのものを渡さずに「この人は本人である」という確認だけを自治体のシステムに伝えられます。デジタル庁がこの方式を使った自治体事例を「PPID方式」として紹介しているのも、この識別子が制度の中核にあるためです。


平成30年、八王子市は全国でも早い段階で導入した

八王子市図書館がマイナンバーカードでの貸出に対応したのは、平成30年(2018年)4月のことです。これは、全国の自治体の中でもかなり早い時期の対応にあたります。

当時、総務省のマイキープラットフォームはまだ複数の自治体で試行段階にありました。2017年時点の報道では、東京都豊島区を含む33市区町村がこの仕組みに参加していたとされています。八王子市の導入は、その試行の広がりからまもない時期に行われたことになります。

導入後の利用手続きは、現在と変わらず2段階です。マイキーIDをマイナンバーカードに登録した上で、既存の図書館利用者カードを持って各館カウンターで手続きをする、という流れが当初から続いています。


デジタル庁が公式事例として取り上げた

八王子市の取り組みは、その後、国の資料にも登場しています。デジタル庁は令和4年(2022年)12月6日付の資料「図書館でのマイナンバーカード活用」において、八王子市の事例を取り上げました。

この資料は、マイナンバーカードを活用した地方自治体の施策を横断的に整理する一連の公式資料群の一部に位置づけられています。つまり、八王子市図書館の事例は、国が他の自治体へこの仕組みの普及を進める際の参照先として扱われたことになります。

八王子市にとっては、2018年の先行導入が、4年後にこうした形で国の資料に反映されたと言えます。


マイナンバーそのものは使わないという設計

「マイナンバーカードを使うと、図書館の利用履歴まで国に把握されるのでは」という不安を持つ方もいるかもしれません。ここは制度の設計を正確に理解しておく価値があります。

マイキープラットフォームの認証は、マイナンバーカードのICチップに格納された「利用者証明用電子証明書」を用いる方式です。マイナンバー(個人番号)そのものを、図書館のシステムが読み取ったり保持したりする仕組みにはなっていません。

図書館側のシステムに記録されるのは、マイキーIDと図書館の利用者番号の対応関係だけです。個人番号の読み取りは行わないという点を、八王子市図書館はよくある質問のページで案内しています。この技術的な切り分けが、「行政に個人の全情報が一元管理される」という懸念と、図書館利用という日常の実務とを分けている仕組みです。

この「個人番号そのものは渡さず、本人確認だけを行う」という設計思想は、マイナンバーカードの他の活用事例にも共通しています。健康保険証との統合(マイナ保険証)でも、医療機関側が読み取るのは資格情報であって個人番号そのものではありません。図書館の利用者証という身近な場面を通じて、この仕組みの考え方を実感しやすいとも言えます。


全国の普及は限定的、八王子市も「選択肢の一つ」を維持

マイナンバーカードでの図書館利用は、全国的にはどこまで広がっているのでしょうか。令和5年(2023年)6月時点のデジタル庁資料によれば、マイキープラットフォームを活用した図書館サービスは、全国で約70団体まで普及が進んでいました。

ただし、広がりのペースは緩やかです。兵庫県三田市の事例では、マイナンバーカードでの利用者登録を行った住民は、同市の全図書館利用者のうち1割程度にとどまっているとされます。

三田市の取り組みは、八王子市と比べると一段深いところまで進んでいます。三田市は「スマート図書館サービス」として、オンラインでの利用者登録(来館せずに自宅から申請できる)、暗証番号の入力なしでマイナンバーカードを「かざす」だけで借りられる貸出、カードの有効期限が切れた際の自動延長までを一体で整備しました。きっかけは図書館所管課からのICタグ・自動貸出機導入の相談で、そこにDX推進課がマイナンバーカード活用を組み合わせる提案をしたことで、「来館しなくてもサービスを使い始められる」という形に発展したといいます。自動貸出機の導入で窓口対応は減り、職員はレファレンス業務など人が担うべき仕事に時間を割けるようになったと報告されています。

これに対して、八王子市図書館の運用は、マイナンバーカードを「従来の利用者カードの代わりに提示できる1枚」として位置づける段階にとどまっています。カウンターでの事前手続きが必須で、オンライン登録や「かざすだけ」の貸出のような自動化は、本稿の時点では確認できていません。マイナンバーカード・FeliCa(携帯電話内蔵のものは不可)・スマートフォンのバーコード表示・従来の利用者カードのいずれでも利用できる並行運用を続けている点は、三田市とも共通しています。マイナンバーカードへの完全移行ではなく、選択肢の一つとして位置づける運用が、八王子市でも他の自治体でも実情に近いようです。


まとめ

八王子市図書館は、2018年の導入から約8年、マイナンバーカードを「使ってもよい選択肢の一つ」として扱う運用を続けてきました。利用対象は八王子市在住・在勤・在学者と、近隣8市の在住者にも開かれており、市内で働く・学ぶ人にも門戸が開かれています。従来の利用者カードやスマートフォンのバーコード表示でも変わらず利用できるため、切り替えは必須ではありません。手元のマイナンバーカードを、図書館でも使える一枚として覚えておくと、いつか役に立つ場面があるかもしれません。


参考文献

八王子市図書館「利用について(よくある質問)」「利用案内」 / 京セラコミュニケーションシステム(KCCS)「マイナンバーカードで図書館利用がもっと便利に!連携方法とそのメリットを解説」 / デジタル庁ニュース「マイキープラットフォーム(PPID方式)で窓口業務の削減を狙う。三田市「スマート図書館サービス」の実践に学ぶ」 / ITmedia NEWS「マイナンバーカードで図書館など公共施設が利用可能に 総務省がマイキープラットフォームを運用開始」 / デジタル庁「図書館でのマイナンバーカード活用 八王子市(令和4年12月6日)」

マンション管理の適正化 —— 高経年化する分譲マンションと八王子市の届出・認定制度

暮らしと法律 · 8分

読む

Support

この記事が面白かったら、書き手の活動を応援していただけると励みになります。

※ Stripe決済(合同会社月香が運営)で安全にお支払いいただけます

カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。