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暮らしと法律 · 公開: 2026.09.05 · 更新: 2026.09.14 · 7分で読めます

パート・有期雇用のルールが変わる —— 2026年10月施行、職場は何を確認すればいいか

2026年10月1日、パートタイム・有期雇用労働者に関する労働条件明示事項と同一労働同一賃金ガイドラインが改正されます。何が変わり、働く人・雇う事業主がそれぞれ何を確認すればいいかを整理します。

机上の巻紙の書面と筆を描いた和モダンな静物イラスト

2026年10月1日、パートタイム・有期雇用労働者の待遇に関するルールが変わります。雇い入れ時に渡される労働条件通知書に新しい項目が加わり、正社員との待遇差についての考え方も明確になります。今のうちに確認しておきたいのは、雇う側なら労働条件通知書の様式と説明の準備、働く側なら自分の待遇差について何を尋ねられるようになるのかの2点です。この記事では、2026年4月28日に公布された厚生労働省告示の内容を、施行日までにやることが分かる順に整理します。


何が変わるのか —— 2026年10月1日施行の3つの柱

令和8年(2026年)4月28日、厚生労働省告示第202号・第203号が公布されました。この告示に基づく改正が、令和8年(2026年)10月1日から施行されます。根拠となっているのは「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)で、正社員とパート・有期雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消をさらに一歩進める内容です。

改正の中身は次の3本柱に整理できます。

  • 雇い入れ時に明示すべき労働条件の項目が増える
  • 正社員との待遇差が「不合理」かどうかを判断するガイドラインの基準が明確になる
  • 事業主が講じるべき雇用管理上の措置が見直される

パート・アルバイト・契約社員として働く人にも、こうした人を雇う商店・工房・企業にも関わる改正です。同一労働同一賃金という考え方自体は、働き方改革関連法の一環として大企業には2020年4月から、中小企業には2021年4月から既に適用されている枠組みです。今回の改正は、その枠組みを新しく作り直すものではなく、「何が不合理な待遇差にあたるか」の判断材料と、待遇差を説明する際の手順をより具体的にするものと位置づけられます。以下、順に見ていきます。


労働条件通知書に増える項目 —— 待遇差の説明を求める権利

まず変わるのが、雇い入れ時に渡される労働条件通知書の記載事項です。厚生労働省の解説によれば、2026年10月1日以降の雇い入れから、「正社員との待遇差の内容・理由等について、労働者から説明を求めることができる」旨を新たに明示することが必要になります。ここでいう「雇い入れ時」には、有期労働契約の更新時も含まれます。

この項目は、従来から明示が義務づけられていた昇給の有無・退職手当の有無・賞与の有無・相談窓口に加わるものです。つまり労働条件通知書に記載すべき事項が、これまでの4項目に1つ追加され5項目になる形です。パート・有期雇用で働く人にとっては、「正社員とどう待遇が違うのか、その理由を聞いてよい」ということが、雇い入れの段階からはっきり書面で示されるようになります。

事業主側から見れば、この改正は単なる書式変更にとどまりません。労働条件通知書にこの一文を載せる以上、実際に説明を求められたときに答えられる状態にしておく必要があります。次の章で見るガイドラインの明確化は、まさにその「答え方」の基準にあたります。


同一労働同一賃金ガイドラインの明確化 —— 家族手当・住宅手当・賞与

2つ目の柱が、いわゆる「同一労働同一賃金ガイドライン」(正式名称「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」)の改正です。このガイドラインは、正社員とパート・有期雇用労働者の待遇差が不合理かどうかを判断する際の考え方を示すもので、今回の改正では特に家族手当・住宅手当について「支給目的に応じた判断基準」が明確化されました。

具体的には、生活保障を目的とする手当については、継続的な勤務が見込まれるパート・有期雇用労働者にも正社員と同一の支給が必要になる方向性が示されています。住宅手当についても、転居を伴う配置転換がある正社員と同様の条件にあるパート・有期雇用労働者には、同一の支給が必要という考え方が示されました。夏季・冬季休暇についても、正社員と同一の勤務日数・勤務実態があるパート・有期雇用労働者には、同一の付与が必要という考え方が示されています。賞与・退職手当に関しても、近年の同一労働同一賃金をめぐる訴訟で最高裁判所が示した判断の内容を反映し、不合理性を判断する際の要素が明確になっています。

ここで重要なのは、ガイドラインの明確化が「すべての手当を正社員と同額にせよ」という一律のルールではないという点です。手当の支給目的に照らして、パート・有期雇用労働者が正社員と同じ状況にあるかどうかを個別に見る、という判断の枠組みそのものは変わっていません。今回の改正は、その判断材料をより具体的に示した、という位置づけです。


事業主に求められる対応 —— 説明義務と評価の公正化

3つ目の柱は、事業主が講ずべき雇用管理上の措置の見直しです。厚生労働省の解説では、パート・有期雇用労働者から待遇差について説明を求められた場合、資料を活用した口頭説明、またはその労働者が理解できる内容・方法で作成した資料を交付するいずれかの方法で説明することが必要になるとされています。「口頭で軽く答える」「資料を見せずに説明する」といった対応では不十分になり得るということです。

あわせて、賃金を決定する際には職務内容・成果・能力・経験を公正に評価すること、正社員転換制度の内容を自社のウェブサイト等で周知することが、望ましい取組として盛り込まれました。これらは義務そのものというより、事業主が労使トラブルを避けるうえで実行しておきたい取組として示されている内容です。正社員転換制度をあらかじめ周知しておけば、待遇差の説明を求められた際にも「正社員になる道が用意されているか」という観点から答えやすくなります。

商店や工房のように少人数でパート・アルバイトを雇っている事業所ほど、こうした説明資料や評価基準を書面化する習慣がないまま運用してきたケースは少なくありません。施行日までの数週間で、自分の事業所の労働条件通知書の様式と、待遇差について聞かれたときに何を根拠に答えるかを、一度点検しておく価値があります。


対象事業主と罰則 —— 中小企業に猶予はあるか

今回の改正の対象は、パート・有期雇用労働者を1人でも雇用するすべての事業主です。企業規模による猶予・除外の規定はなく、家族経営に近い小さな商店であっても、パート従業員を1人雇っていれば労働条件通知書の様式見直しが必要になります。

パートタイム・有期雇用労働法には、待遇差の是正を怠った場合の直接的な罰則規定はありません。ただし、都道府県労働局による助言・指導・勧告の対象になるほか、待遇差をめぐって労働者との間でトラブルになり、民事訴訟に発展するリスクがあります。罰則がないからといって対応を後回しにしてよい制度ではなく、労使トラブルを未然に防ぐための実務的な備えとして捉えておく必要があります。


相談できる窓口 —— 東京労働局・労働基準監督署

制度の内容を確認したい、あるいは自分の待遇について相談したいという場合、地域には公的な相談窓口があります。

東京労働局は、パートタイム・有期雇用契約で働く人向けの特別相談窓口を設けています。電話相談は03-3512-1611、対面相談は千代田区九段南1-2-1 九段第3合同庁舎14階の指導課で受け付けており、待遇差に関する相談や事業主への助言・指導を担当しています。

八王子市・日野市を管轄する八王子労働基準監督署は、現在は町田市に統合されており、総合労働相談は町田支署(町田市森野2-28-14 町田地方合同庁舎2階、電話042-718-8342)で受け付けています。解雇や労働条件をめぐる相談を含め、労働問題全般について無料で相談できる窓口です。

このほか、東京都労働相談情報センターも労働問題全般の無料相談を受け付けています。多摩地域は立川市の多摩事務所が八王子市を含む市町村全域を担当しており、電話相談は共通ダイヤルの東京都ろうどう110番(0570-00-6110)から利用できます。パート・有期雇用で働く人だけでなく、初めてパート・アルバイトを雇う事業主にとっても、施行前に一度問い合わせてみる価値のある窓口です。


まとめ

2026年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働者の労働条件通知書に新しい項目が加わり、同一労働同一賃金ガイドラインの判断基準も明確になります。企業規模による猶予はなく、パート・アルバイトを1人でも雇っていれば対象です。施行日までの間に、労働条件通知書の様式と、待遇差について聞かれたときの説明の準備を点検しておくことが、働く人・雇う事業主の双方にとって現実的な備えになります。


参考文献

暮らしの手続きで迷ったら

相続や空き家、成年後見といった手続きは制度が入り組んでいて、「まずどこに相談すればいいのか」が分かりにくいものです。桑都手帖は、八王子で暮らす方に向けて制度の基本を記事にまとめています。

具体的なご相談は、まず八王子市の無料専門相談(法律・相続・不動産・税務など/予約制・無料)が入口になります。

こうした暮らしの手続きの記事は、連載「暮らしと法律の手帖」で続けています。

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。