高齢者の住み替え先はマンションでいいのか? サ高住・シルバーピアとの違いと資金計画
高齢の親の住み替え先として一般のマンションを検討するとき、サービス付き高齢者向け住宅や都営シルバーピアとの違い、リ・バース60やマイホーム借上げ制度といった資金の作り方を、国土交通省・八王子市などの公的情報にもとづいて整理します(2026年時点)。

この記事の目次
「実家の階段や段差がつらくなってきたから、そろそろバリアフリーのマンションに住み替えようか」。親の住まいを考えるとき、こうした声が出てくることがあります。結論から言うと、住み替え先の選択肢は一般のマンションだけではなく、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や都営シルバーピアなど複数あり、それぞれ入居条件や費用の仕組みが異なります。
この記事では、高齢者の住み替え先を比較する視点、住み替え資金をどう用意するかという選択肢、八王子市内で相談できる窓口までを、国土交通省・東京都・八王子市などの公的情報にもとづいて整理します。どの選択肢が合うかは本人の体力や資産状況によって変わるため、ここでは断定せず、比較のための材料を提供します。
実家に住み続けるか、住み替えるか——判断の手がかり
住み替えを考える背景には、介護保険の施設ではなく「住宅」として暮らしながら見守りを受けられる選択肢が整ってきているという事情があります。国土交通省が運営するサービス付き高齢者向け住宅情報提供システムによると、サ高住の全国登録件数は2026年3月末時点で8,337件(291,498戸)で、前年同月より3件(1,370戸)増加しています。登録数が緩やかに増え続けていることからも、住み替え先の選択肢自体が少しずつ広がっていることがうかがえます。
一方で、高齢になってからの住み替えには別の壁もあります。国土交通省は、高齢の単身者など住まい探しが難しい人(住宅確保要配慮者)の入居を拒まない住宅を都道府県・政令市・中核市に登録する「住宅セーフティネット制度」を運用しており、2025年の法改正では、こうした人が利用しやすい家賃債務保証業者を国土交通大臣が認定する制度も新設されました。つまり、高齢者が賃貸で住み替える際に一定の壁があることを前提に、国として受け入れ先を増やす施策が進められている段階にあるということです。
このため、住み替え先を考える際は「一般のマンションに自分で買い替える」という選択肢だけでなく、サ高住や都営シルバーピアのような公的・準公的な住宅、資金面の支援制度まで含めて比較したうえで、本人の体力・持病の状況・資産状況に合う形を選ぶことが前提になります。
また、住み替えは本人の判断力や体力がしっかりしているうちに検討を始めるほど、選べる選択肢の幅が広くなります。物件の下見や契約、引っ越し作業そのものにも相応の体力が必要になるため、「まだ元気だから」と先送りにするのではなく、健康なうちから情報収集を始めておくことが、後になって選択肢が狭まることを避ける一つの対策になります。
住み替え先の主な選択肢を整理する(サ高住・シルバーピア・一般マンション)
住み替え先として比較的知られているのが、サービス付き高齢者向け住宅です。八王子市公式ホームページによると、サ高住はバリアフリー構造等を備え、安否確認サービスや生活相談サービスなどを提供する住宅として都道府県に登録される仕組みです。介護保険の施設ではなく「住宅」に分類されるため、要介護度にかかわらず入居できる物件が多い一方、提供されるサービスの範囲や料金は物件ごとに差があります。入居を検討する場合は、個々の物件が提供するサービス内容と費用を資料で確認することが欠かせません。
もう一つの選択肢が、公営の「高齢者住宅(通称:シルバーピア)」です。東京都北区公式ホームページによると、入居には「65歳以上の単身者であること」「配偶者・同居親族がいないこと」「区内に一定期間継続して居住していること」「前年所得が256万8千円以下であること」などの条件をすべて満たす必要があり、申込みは抽選制です。家賃は民間賃貸より低く抑えられている物件が多いものの、誰でも入居できるわけではなく、募集時期や倍率によって入居できるかどうかが変わる点は押さえておく必要があります。
一般のマンションへの住み替えは、サ高住やシルバーピアのような入居条件がない分、立地やエレベーターの有無、ワンフロアでの生活しやすさなど、本人の希望に合わせて選べる自由度があります。ただし、その分だけ購入資金や賃貸の初期費用を自分で用意する必要があり、資金計画が住み替え先選びの大きな分かれ目になります。
一般のマンションを購入する場合は、購入時の費用だけでなく、管理費・修繕積立金といった毎月の固定費が継続的にかかる点も比較材料になります。賃貸で住み替える場合も、高齢であることを理由に契約を断られることがある点は、前の章で触れた住宅セーフティネット制度が整備されている背景の一つです。どちらの形を選ぶ場合も、初期費用だけでなく住み続けている間に発生する費用まで含めて見積もっておくことをおすすめします。
住み替え資金をどう用意するか(リ・バース60・マイホーム借上げ制度)
住み替え先の候補が決まっても、資金をどう用意するかは別の検討課題です。住宅金融支援機構が提供する「リ・バース60」は、満60歳以上を対象とするリバースモーゲージ型の住宅ローンで、住み替え・建替え・リフォーム・既存の住宅ローンの借換えに利用できます。年金収入のみでも利用できる場合がある点が一般の住宅ローンと異なりますが、生活資金や投資用物件の取得資金には使えないという制限があり、借入可能額や条件は提携する金融機関ごとの審査によって決まります。利用を検討する場合は、取扱金融機関に個別に相談することが前提になります。
もう一つの選択肢が、一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が運営する「マイホーム借上げ制度」です。これは、住み替え等でしばらく住む予定のなくなった実家を、JTIが借り上げて転貸する仕組みで、所有者は家を売却せずに賃貸収入を得ながら資産を維持できます。住み替え先の資金を実家の売却でまかなうか、賃貸に出して収入を確保しながら手元に残すかは、どちらが正しいというものではなく、本人や家族の資産状況・将来の使い方の希望によって変わってくる判断です。
資金計画を立てる際は、リ・バース60やマイホーム借上げ制度のような制度を使う前提で考えるだけでなく、実家をどのくらいの価格で売却・賃貸できるのかという見通しも必要になります。この見通しが立たないまま住み替え先だけを決めてしまうと、資金が不足した段階で選択肢が狭まってしまうため、早い段階で複数の方法を並べて比較しておくことが望ましいといえます。
実家をどうするか——住み続ける・貸す・売るを比べる視点
住み替え資金を考えるうえでもう一つ比較されるのが、リースバックという仕組みです。三井のリハウスの解説によると、リースバックは自宅を売却して資金を受け取った上で、家賃を払いながら同じ家に住み続けられる仕組みで、物件種別を問わず利用しやすい間口の広さがあります。親自身は実家に住み続けたまま、子世代が住み替え資金の一部を確保したいという場面でも候補になりうる方法です。
一方、リバースモーゲージ(リ・バース60を含む)は自宅を担保にして資金を借り、住み続けながら老後資金等を得る仕組みですが、同解説によるとマンションの場合は審査基準が厳しくなる傾向があります。築年数の古いマンションに住んでいる場合は、リバースモーゲージよりもリースバックの方が対象になりやすいこともあるため、現在住んでいる実家がマンションか一戸建てか、築年数がどの程度かによって、選べる制度の幅が変わってくる点は事前に確認しておきたいところです。
いずれの制度も、最終的な利用条件や借入・買取の金額は個別の審査・査定によって決まります。制度の名前だけで判断するのではなく、実家の状態を踏まえた査定を受けたうえで、住み替え先の資金計画に組み込めるかどうかを確認することが、住み替えを具体的に進める最初の一歩になります。
また、実家を「売る」「貸す」「住み続けながら担保にする」のどれを選ぶかによって、住み替え先に充てられる資金のタイミングも変わってきます。売却であれば住み替え前にまとまった資金を確保しやすい一方、マイホーム借上げ制度のように貸し出す形を選ぶと、資産を維持しながら毎月の賃貸収入を住み替え後の生活費に充てるという組み合わせも考えられます。どちらが適しているかは、住み替え先にかかる費用の総額と、実家側でどの程度の収入・資金を見込めるかを並べて比較しないと判断がつきにくいため、早い段階で査定や金融機関への相談を済ませておくことが望ましいといえます。
八王子市で住み替えを相談できる窓口
住み替え先の候補や資金の仕組みが複数あることが分かったうえで、実際にどこへ相談すればよいかという点も整理しておきます。八王子市公式ホームページによると、高齢者の住まい選び全般(サ高住・東京シニア円滑入居賃貸住宅・高齢者向け賃貸住宅・施設系を含む)の相談窓口は「まちなみ整備部住宅支援課」(八王子市元本郷町三丁目24番1号、電話042-620-7260)です。住み替え先の種類をまだ絞り切れていない段階でも、まずこの窓口に相談することで、本人の状況に合う選択肢の案内を受けられます。
サ高住の登録や事業者支援に関しては、別の部署が担当しています。同じく八王子市公式ホームページによると、サービス付き高齢者向け住宅の登録・事業者支援は「福祉部高齢者福祉課(事業者支援担当 居宅班)」(電話042-620-7452)が担当しています。入居を検討している物件が正式にサ高住として登録されているかどうかなど、制度面での確認が必要な場合は、この窓口への問い合わせが参考になります。
住み替え先の選択肢や資金の仕組みは制度改正によって変わることがあるため、この記事で紹介した内容を目安にしつつ、実際に動き出す段階では必ず各窓口や金融機関に最新の条件を確認してください。本人の体力や判断力がまだしっかりしているうちに情報を集め始めることが、焦らず住み替え先を選ぶための前提になります。
参考文献
サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム「サービス付き高齢者向け住宅の最新動向(2026年3月)」 / 国土交通省「セーフティネット住宅情報提供システム」 / 八王子市ホームページ「サービス付き高齢者向け住宅」「高齢者の住まい選び」 / 東京都北区ホームページ「高齢者住宅(単身者用)の概要」 / 住宅金融支援機構「リ・バース60」取扱金融機関情報 / 一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)「マイホーム借上げ制度」 / 三井のリハウス「リバースモーゲージとリースバックの違い」
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