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仕舞手帖 · 公開: 2026.10.07 · 8分で読めます

遠方の実家は誰が管理する? 通う・頼む・手続きを止めるの3択を比較

実家が遠方で空き家になったとき、自分で通う・業者や郵便局に巡回を頼む・ライフラインを止めるという3つの選択肢それぞれの費用相場と手順、放置した場合のリスクを整理します。

資料保管庫に整然と並ぶ木製の引き出し

実家が遠方にあり、頻繁に通えないまま空き家になってしまった。この状況で多くの人が悩むのは、結局自分がどこまでやるべきなのかという線引きです。結論から言うと、やるべきことは「自分で通う」「巡回サービスに頼む」「ライフラインを止める・残すを判断する」の3つに整理でき、どれを選ぶかは実家までの距離と使える予算で決まります。本記事では、この3つの選択肢それぞれの費用相場と手順、何もしないまま放置した場合に制度上どうなるのかを順番に見ていきます。

「とりあえず放置」が一番危険な理由

実家が遠方にあると、何から手をつければよいか分からないまま時間だけが過ぎてしまうことがあります。しかし、空き家を管理せずに放置することには、見た目の問題だけでなく制度上のリスクも伴います。

空家等対策の推進に関する特別措置法では、建物の老朽化や衛生上の問題が深刻な空き家を「特定空家等」、その前段階の管理不全な状態を「管理不全空家等」として、市町村長が所有者に指導や勧告を行える仕組みが設けられています。この勧告を受けると、地方税法第349条の3の2第1項等の規定により、その敷地は固定資産税等の住宅用地特例(減額措置)の対象から除外されます。

住宅用地特例が外れた場合の負担増は小さくありません。小規模住宅用地(200㎡以下の部分)では固定資産税が最大6倍、一般住宅用地(200㎡を超える部分)では最大3倍になり得ます。遠方で管理の手が回らないという事情は、勧告そのものを免除する理由にはならないため、「距離があるから仕方ない」では済まされない制度になっている点を押さえておく必要があります。

何が勧告の判断基準になるかも確認しておきましょう。国土交通省の「特定空家等に対する措置ガイドライン」は、「門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れている等不特定の者が容易に侵入できる状態で放置されている」ことを、特定空家等の判断基準の一つとして明記しています。つまり、施錠や外壁・窓の破損といった見た目の管理状態そのものが、判断の対象になり得るということです。遠方であっても、この基準に引っかからない程度の管理をどう実現するかが、次に見る3つの選択肢の出発点になります。

つまり、遠方の実家であっても、何らかの形で管理の実態を作っておくことが、固定資産税の負担を増やさないための前提になります。以下で、その管理の実態をどう作るか、3つの選択肢を見ていきます。

選択肢1:自分で定期的に通う(頻度の目安とチェック項目)

実家までの距離が車や電車で日帰りできる範囲であれば、自分で定期的に通うという選択肢が最もコストを抑えられます。

通う際に優先してチェックしたいのが水回りです。水道を完全に解約・閉栓してしまうと、排水口の封水(排水トラップにたまった水)が乾いて下水からの臭気が室内に逆流しやすくなり、使われない配管の内部が劣化・腐食して次に使うときの水漏れの原因になることがあります。このため、空き家管理の事業者や不動産会社は、水道契約自体は残したうえで、月1回程度を目安に通水することを勧めるケースが多くなっています。この頻度は国の統一的な基準というより、事業者側の実務上の目安である点には留意が必要です。

もう一つ、通った際に必ず確認したいのが郵便受けです。郵便受けに郵便物やチラシが溜まっている状態は、その家が長期間使われていないことが外から一目で分かってしまい、管理が行き届いていないとみなされて空き巣に狙われやすくなる要因の一つとされています。通える頻度が月1回程度であれば、通水と合わせて郵便受けの整理も毎回のルーティンに組み込んでおくとよいでしょう。

庭木の伸び具合や雑草の状況、外壁や屋根の破損の有無も、通ったタイミングでひと目確認しておくと、後述する巡回サービスに切り替えるかどうかの判断材料になります。

選択肢2:巡回・見守りサービスに頼む(料金とサービス内容の比較)

実家までの距離が遠く、自分で定期的に通うことが難しい場合は、巡回・見守りサービスを利用する方法があります。料金とサービス内容には幅があるため、比較しておきましょう。

日本郵便が提供する「郵便局の空き家みまもり」は、月額4,280円(税込)で月1回、空き家の近くの郵便局員が訪問し、住宅の外観、玄関の施錠状況、庭木・雑草の状況、郵便受箱の投函物の有無など7項目を確認したうえで、写真付きの報告書をメールで送付する仕組みです。郵便局ならではのサービスとして、郵便受けの状態確認が標準で含まれている点が特徴です。

民間の空き家管理代行サービスも選択肢になります。戸建てで月1〜2回の巡回を依頼する場合、月額5,000〜15,000円程度が目安とされており、多くのプランで郵便物の整理・ポスト整理が基本サービスに含まれます。転送対応など追加の作業はオプション料金になることもあるため、申込前に見積りで範囲を確認しておくと安心です。

警備会社の見守りサービスを使うと、見回りに加えて防犯面の安心感も得られます。ALSOKの「HOME ALSOK るすたくサービス」は、基本プランが月額7,700円(月1回の見回り+投函物整頓)で、通水・換気・目視確認まで含む最上位プランは月額18,700円です。セコムの空き家管理サポート(通気・通水・ポスト回収等)は1回9,500円(税込10,450円)からのスポット利用もできますが、対象地域が首都圏・近畿圏・愛知県の一部に限られているため、依頼前に対応エリアを個別に確認する必要があります。

どのサービスを選ぶにしても、月額4,280円〜15,000円程度という幅のなかで、確認してほしい項目(郵便受け・通水・防犯・写真報告の有無など)を整理してから比較すると、無駄のない選び方ができます。

選択肢3:ライフラインを止める/残すの判断

空き家にする際、水道・電気・ガスをどう扱うかも早めに決めておきたい事項です。止める場合には、自治体や事業者ごとの手続きの違いを把握しておく必要があります。

八王子市内の水道は東京都水道局が運営しています。長期間使わなくなる場合は「使用中止」の届出が必要で、希望日の3〜4日前までに手続きを済ませる必要があります。届出をしないまま放置すると、実際には使用していなくても基本料金がかかり続けてしまうため、使わないことが決まった時点で早めに届け出ておくのが基本です。手続きに立会いは不要です。

ガスについては、電気と異なり契約者本人またはその代理人の立会いが原則必要です。宅内のガス機器を遮断する閉栓作業を伴うためです。長期間家を空ける場合は、完全な「使用停止」(解約)ではなく、一時的な「使用中止」(休止)を選ぶという方法もあります。休止であれば基本料金はかかりませんが、契約が一旦解約扱いになるため、再開後1年間は一般料金以外の料金メニューに戻れない場合がある点には注意が必要です。将来的に実家に戻る、あるいは売却までの一時的な空き家期間と見込める場合は、この休止制度を使うかどうかも検討材料になります。

水道だけは完全に解約しないという選択肢についても、選択肢1で触れたとおり、通水を続けられる体制があるかどうかが判断材料になります。自分で通えない場合は、巡回サービスに通水作業を含めて依頼できるかどうかを確認するとよいでしょう。

火災保険も「管理されているか」で入れるかどうかが変わる

ライフラインや巡回の体制を整えるのと並行して見落とされやすいのが、火災保険の扱いです。

保険会社は空き家を「住宅物件」と「一般物件」に区分して引受を判断します。別荘など季節利用で家財を維持している、転勤等で一時的に非居住だが将来居住予定があるといった空き家は「住宅物件」として通常の火災保険に加入できる可能性がありますが、相続後に出入りがなく居住予定もない空き家は「一般物件」扱いとなり、保険料が割高になるか、保険会社によっては加入自体を断られることがあります。一般物件扱いになると地震保険の対象外になる点にも注意が必要です。

通常の火災保険に入りにくい場合の選択肢として、空き家専用保険を付帯した管理サービスもあります。NPO法人空家・空地管理センターは日新火災海上保険と業務提携し、巡回管理サービスに空き家専用保険を自動で付帯する「空き家あんしん管理」を提供しています。この専用保険は、空き家の所有に伴う損害賠償責任や、火災発生時の解体費用・お見舞い金等を主な補償対象としています。管理サービスへの加入が保険加入の前提になっている商品の一例として、検討時の参考にできます。

保険の具体的な加入可否は個別の建物の状態や保険会社の判断によって変わるため、断定はできません。複数の保険会社・サービスを比較しながら、自分の実家の状況に合うものを確認することをお勧めします。

八王子市・東京都の無料相談窓口に先に当たる

自分で通う・巡回サービスに頼む・ライフラインを止める、のどれを選ぶべきか判断に迷う場合は、まず自治体の無料相談窓口に当たってみるという方法もあります。

八王子市は地元の不動産団体と協定を結び、空き家ワンストップ相談窓口「住まいの活用相談所(通称:住まカツ)」を設置しています。相談窓口は公益社団法人東京都宅地建物取引業協会第12ブロック八王子支部で、電話番号は042-548-1251、受付時間は月曜から金曜の9:30〜16:30(祝日を除く)です。住まいの継承や利活用、不在時の家屋管理の悩みまで幅広く無料で相談できます(契約に伴う費用は別途)。

東京都も「東京都空き家ワンストップ相談窓口」を設置しており、電話番号は0120-776-735、平日9時〜18時に受付しています。相続・売却・賃貸・管理・住替え等の相談に無料で応じ、必要に応じて専門家・専門事業者の紹介まで行っています。

遠方の実家をどう管理するかは、距離と予算、そして将来的に売却や解体を考えているかによって最適な組み合わせが変わります。まずはこうした無料窓口で自分のケースに合う進め方を相談し、そのうえで自分で通うか巡回サービスを使うかを決めていくと、無理のない管理体制を作りやすくなります。

参考文献

国土交通省「『特定空家等に対する措置』に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」 / 国土交通省「空家等対策特設サイト」 / 日本郵便「郵便局の空き家みまもり」 / ALSOK「空き家になった実家の防犯対策は?」 / AkiSapo「空き家管理代行サービスとは?料金・選び方を比較解説」 / ALSOK公式「HOME ALSOK るすたくサービス」 / セコム公式「空き家の防犯・監視サービス」 / 東京都水道局「手続きに際して(手続き・料金)」 / 東京ガス「ガス・電気の使用停止お手続き詳細」 / ダスキンの空き家管理「空き家でも火災保険に入れる?」 / NPO法人空家・空地管理センター「空き家あんしん管理」プレスリリース / 八王子市公式「空き家ワンストップ相談窓口(住まカツ)」 / 東京都住宅政策本部「東京都空き家ワンストップ相談窓口」

実家じまいで迷ったら

実家の片付けや相続、空き家の管理や解体など、実家じまいには多くの課題が伴います。「何から手をつければいいのかわからない」と悩むことも少なくありません。

一般的には、まずは実家がいくらで売れるか、無料の一括査定サービスなどを利用して市場価値を調べておくことが最初の一歩になります。

※現在、桑都手帖では実家じまいに役立つ提携サービス(一括査定・解体見積もりなど)の導入準備を進めています。準備が整い次第、こちらで推奨窓口をご案内いたします。

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カヅキ

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桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。