老人ホームの入居費用は実家売却でまかなえる? 資金計画と進め方
老人ホームの入居時費用と月額費用を分けて確認し、実家売却を資金計画に組み込む順番を整理します。2026年時点の介護保険制度、売却価格の調べ方、相談先も紹介します。

この記事の目次
「老人ホームに入るなら、実家を売ったお金を使えるだろうか」と考えたとき、先に家の査定を取るのは少し待ってください。入居時に必要なお金、毎月出ていくお金、売却までの期間を分けて確認しないと、売却代金が入る前の資金繰りで困る可能性があるためです。
結論からいうと、まず施設の候補を複数見学し、契約時の費用と月額費用を確認します。次に、年金などの定期収入で毎月の不足額を計算し、その不足分と一時的な支出を実家の売却資金でどこまで補えるかを見ます。売却価格や税金は個別事情で変わるため、査定だけで資金計画を確定させないことが大切です。
老人ホーム費用と実家売却は別々に考えず資金表でつなぐ
老人ホームの費用は、最初にまとまって出るお金と、入居後に毎月出るお金に分けます。入居一時金や敷金、引っ越し費用、家具の購入費は前者です。家賃、管理費、食費、介護サービスの自己負担、医療費、日用品費は後者です。施設によって含まれる範囲が違うため、広告の「月額」だけを比べないようにします。
介護保険サービスの利用者負担は、厚生労働省の介護サービス情報公表システムによると、原則1割で、一定以上の所得がある場合は2割または3割です。施設サービスを利用する場合は、介護サービス費の自己負担に加えて、居住費、食費、日常生活費が必要になります。負担割合は本人の所得などで決まるため、「誰でも1割」とは考えないでください。
同システムの掲載例では、要介護5の人が介護老人福祉施設の多床室を利用した場合、施設サービス費の1割、居住費、食費、日常生活費を合わせた1か月の目安が約10万6,930円です。ユニット型個室の掲載例は約14万3,980円です。これは特定の条件での制度上の目安で、医療費や個人の買い物、施設ごとの追加料金は含まれない場合があります。実際の請求額として使わず、施設に見積書を出してもらってください。
資金表には、次の項目を最低限入れます。
- 収入:年金、その他の定期収入
- 毎月の支出:施設費、介護保険自己負担、医療費、日用品費、家族の交通費
- 一時支出:入居時費用、引っ越し、家財整理、実家の修繕や測量、売却費用
- 資産:預貯金、実家の査定額、売却後に残る見込み額
実家の売却代金は、査定額の全額を使えるとは限りません。仲介手数料、測量・境界確認、残置物の処分、必要な修繕、税金などが差し引かれる可能性があります。売却予定額ではなく「売却後に手元へ残る見込み額」で考えると、資金不足を早く見つけられます。
まず入居先の種類と「毎月出るお金」を確定する
施設の種類によって、費用の見方と介護サービスの受け方が変わります。介護付有料老人ホームは、施設が提供する介護サービスの費用が月額に組み込まれる場合があります。住宅型有料老人ホームは、外部の介護サービスを組み合わせることがあり、利用量によって介護保険の自己負担額が変わる場合があります。サービス付き高齢者向け住宅も、住まいの費用と介護サービスの契約を分けて考えることが基本です。
公益社団法人全国有料老人ホーム協会は、これらの類型について、入居時費用として前払金や敷金などがあり、月々の費用として利用料、介護保険自己負担額、個人別料金があると説明しています。前払金がある施設では、償却の方法、返還金の計算、保全措置の有無を契約前に確認します。名称が「入居一時金」「前払金」など施設ごとに違うため、名称だけで比較しないことが重要です。
見学や相談のときは、次の質問を紙にして持参します。
- 入居時に必要な費用は、何をいつまでに支払うのか
- 月額費用に含まれるものと、別途請求されるものは何か
- 介護度が変わったとき、介護サービス費や追加料金はどう変わるか
- 医療機関への通院、薬代、理美容、紙おむつなどは誰が手配し、いくらかかるか
- 退去条件、前払金の償却・返還、入院中の居室費はどうなるか
入居後に本人の状態が変わると、必要なサービスや費用が変わることがあります。施設の担当者には、現在の要介護度だけでなく、今後想定される介助内容も伝えます。認知症、医療的ケア、看取りの対応範囲は施設ごとの差が大きいため、家族だけで判断せず、ケアマネジャーや地域包括支援センターにも確認すると安心です。
費用表を受け取ったら、項目を「必ずかかる費用」「利用したときだけかかる費用」「条件によって変わる費用」に分けます。例えば、家賃や管理費は毎月の固定費でも、介護サービスや通院に伴う費用は本人の状態や利用回数で変わることがあります。食費が月額に含まれていても、外出や入院のときの扱いが別に定められている場合があります。見積書の合計だけでなく、入院・退去・介護度変更が起きた場合の請求方法を確認しておくと、実家の売却を急ぐべきか判断しやすくなります。
実家を売る前に確認する制度と売却価格の調べ方
実家の価格を調べるときは、最初に国土交通省の不動産情報ライブラリで近隣の取引価格を確認します。取引時期、土地・建物の面積、前面道路などを見比べると、地域の大まかな傾向をつかめます。ただし、同じ町内でも、接道状況、築年数、再建築の可否、境界、残置物などで価格は変わります。公開データは目安であり、売却予定の実家の価格を保証するものではありません。
次に、売却方法を整理します。仲介は買主を探して市場で売る方法で、売却まで時間がかかる可能性があります。買取は不動産会社などが直接買主になる方法で、早く進めやすい一方、再販や修繕の費用・リスクを見込んだ価格になる場合があります。どちらが有利かは、家の状態、立地、希望時期、家族の合意によって変わります。1社の査定額だけで決めず、査定の根拠と売却に必要な費用を確認してください。
相続した実家を売る場合は、税制上の特例も確認します。国税庁は、相続または遺贈で取得した被相続人の居住用家屋や敷地を、一定の要件のもとで売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例を案内しています。相続人が3人以上の場合などは限度額が異なる場合があり、家屋の状態、売却期限、相続人の状況などの条件もあります。
売却時期を決めるときは、査定価格と手取り見込みを別の欄に書きます。査定価格は売却前の評価であり、そこから売却に伴う費用や、場合によっては税金が出ます。さらに、売買契約から決済・引き渡しまでの期間も確認が必要です。施設の契約開始日と実家の決済日が合わないときは、つなぎの資金をどこから出すかを先に家族で話し合います。売却を前提にした借入れなどを検討する場合は、金融機関と専門家に条件を確認し、無理のない返済計画かを判断します。
この特例が使えるか、譲渡所得がいくらになるか、老人ホーム費用を売却代金から支払えるかは、個別事情で変わります。特例の適用可否や税額は国税庁の案内だけで自己判断せず、売却前に税理士へ確認します。相続登記が済んでいない、共有者がいる、判断能力に不安があるといった場合は、税理士だけでなく司法書士や弁護士への相談も必要になることがあります。
売却代金を入居費用に充てるときの順番と注意点
資金計画は、次の順番で進めると整理しやすくなります。
- 本人の希望と健康状態を確認し、施設の種類を絞る
- 施設から入居時費用と月額費用の見積書を受け取る
- 年金などの収入から月額費用を引き、毎月の不足額を計算する
- 預貯金で、売却完了までの費用と一定期間の不足額を確保する
- 実家の名義、相続、共有者、住宅ローン、抵当権を確認する
- 不動産会社へ複数査定を依頼し、売却後の手取り見込みを比べる
- 税理士や司法書士に税務・登記上の確認をしてから売却契約へ進む
実家の売却が入居の条件になっていると、売却が長引いたときに本人の住まいが不安定になります。可能であれば、売却完了を前提にせず、現在の預貯金と収入だけで数か月から一定期間を支えられるかを先に確認します。期間は家庭の資産と施設の契約条件で異なるため、一律の安全額を決めることはできません。
売却を急ぐあまり、家財をすべて処分してしまうのも注意が必要です。権利証や登記識別情報、契約書、保険証券、通帳、印鑑、相続関係書類は、処分前に保管場所を決めます。家財の処分を業者へ依頼する場合は、現地確認後の見積書を取り、追加料金、許可・委託関係、貴重品の扱いを確認します。
八王子市では、高齢者あんしん相談センター(地域包括支援センター)が、介護保険、施設入所、福祉、医療などの相談を無料で受け付けています。施設探しと実家売却を同時に考えるときは、まず本人が住む地域の担当センターに相談し、要介護認定やケアプランの状況を整理します。介護保険施設の食費・居住費には、所得や預貯金などの要件に応じた負担軽減制度がありますが、2026年8月から基準の一部が見直されています。対象になるかは市区町村へ確認してください。
まとめ:家の査定より先に入居後の月次収支を作る
老人ホームの費用を実家売却でまかなうなら、「いくらで売れるか」だけでなく、「毎月いくら不足するか」「売却まで何を支えるか」を先に計算します。施設費用は入居時費用、月額費用、介護保険自己負担、医療・日用品費に分け、契約書と見積書で確認します。
実家の価格は不動産情報ライブラリで相場を見たうえで、複数の不動産会社に査定を依頼します。相続した家の税制特例や名義の問題は、売却契約の前に税理士、司法書士、必要に応じて弁護士へ相談します。八王子市なら高齢者あんしん相談センターを入口に、介護と住み替えの相談を同時に始められます。
老人ホームへの入居と実家の売却は、どちらも家族の気持ちが揺れやすい手続きです。売却を急がせるのではなく、本人の希望、入居後の生活、資金の残り方を家族で表にしてから、一つずつ決めていきます。
参考文献
厚生労働省「サービスにかかる利用料」 / 公益社団法人全国有料老人ホーム協会「類型その他について」 / 厚生労働省「介護サービスの情報公表制度」 / 厚生労働省「令和8年8月補足給付の見直しに伴う対応」 / 国土交通省「不動産情報ライブラリ」 / 国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 / 八王子市「高齢者あんしん相談センター(地域包括支援センター)」
実家じまいで迷ったら
実家の片付けや相続、空き家の管理や解体など、実家じまいには多くの課題が伴います。「何から手をつければいいのかわからない」と悩むことも少なくありません。
一般的には、まずは実家がいくらで売れるか、無料の一括査定サービスなどを利用して市場価値を調べておくことが最初の一歩になります。
※現在、桑都手帖では実家じまいに役立つ提携サービス(一括査定・解体見積もりなど)の導入準備を進めています。準備が整い次第、こちらで推奨窓口をご案内いたします。
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