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仕舞手帖 · 公開: 2026.10.05 · 8分で読めます

空き家の火災保険に入れないのはなぜ? 加入できる条件と対策

実家の空き家が火災保険に加入できない・更新を断られたと言われたときに、その理由と加入できる条件、入れない場合の選択肢を公的データと業界資料から整理します。

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実家の火災保険を更新しようとしたら「空き家なので入れません」「一般物件扱いになり保険料が跳ね上がります」と言われた、という相談は珍しくありません。結論から言うと、空き家が火災保険に入りにくいのは保険会社が空き家特有のリスクを高く見積もっているためで、保険会社や物件の状態によって加入できるかどうかの線引きが変わります。本記事では、空き家が保険に入りにくい理由、加入できる条件とできない条件の境界線、保険が切れたまま放置した場合のリスク、そして通常の火災保険に入れない場合の選択肢を、公的データと業界資料にもとづいて整理します。

空き家の火災保険が「入れない」と言われる背景

実家の空き家が保険に入りにくいと感じる背景には、空き家そのものが増え続けている社会的な状況があります。

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(令和6年9月25日公表)によれば、2023年10月1日時点の全国の空き家数は900万戸で、2018年の849万戸から51万戸増加し過去最多となりました。空き家率も13.8%と過去最高です。

なかでも、賃貸用・売却用の住宅や別荘等の二次的住宅を除いた「その他の空き家」は385万6千戸にのぼります。これは相続後に放置されているようなケースが多く含まれる区分で、2018年の349万戸から37万戸増えています。

実家が空き家になり、そのまま保険の扱いに困るという状況は、特殊な例外ではなく年々増えている典型的なパターンだと言えます。

特に「その他の空き家」に分類されるような、相続後に誰も住まなくなった実家は、保険の契約者本人が住んでいないため、保険会社から見れば「管理状況が確認しづらい物件」になりやすいという事情もあります。親が亡くなって実家を引き継いだタイミングで、火災保険の契約内容を見直す人が多いのも、こうした背景が関係しています。

保険会社が空き家を警戒する理由

保険会社が空き家の引受に慎重になる主な理由は、火災の発見の遅れと放火のリスクです。

消防庁「令和6年版消防白書」によれば、令和5年中の放火による出火件数は2,495件で、全火災の6.5%を占めます(前年比11.3%増)。放火の疑いを含めると4,111件、全火災の10.6%に達します。

NPO法人空家・空地管理センターによれば、空き家は人の出入りが少なく火災の発見が遅れやすいうえ、門扉や窓の施錠不備、敷地内に燃えやすい物が放置されていることなどが、放火の標的になりやすい要因として挙げられています。人が住んでいれば早期発見・早期消火が期待できますが、空き家ではそれが難しく、被害が大きくなる前提で保険会社がリスクを計算せざるを得ない面があります。

このリスクが表面化しやすいのが、火災保険の更新のタイミングです。契約時には住宅として使われていた家でも、更新のたびに保険会社が「現在の使用状況」を確認するため、相続や施設入所などで空き家になっていることが分かると、更新時に条件の見直しや契約の継続不可を伝えられることがあります。

加入できる空き家とできない空き家の境界線

空き家だからといって一律に火災保険に入れないわけではありません。保険会社は物件を「住宅物件」と「一般物件」に区分して引受を判断する運用をとっています。

ダスキンの空き家管理に関する解説によれば、別荘のように季節利用で家財を維持している、転勤等で一時的に非居住だが将来的に居住する予定がある、賃貸募集中で居住用途が明確である、といった空き家は「住宅物件」として通常の火災保険に加入できる可能性があります。

一方で、相続後に出入りがなく居住予定もない、長期間使われておらず家財もない、といった典型的な「実家が空き家になったまま」のケースは「一般物件」扱いとなり、保険料が割高になったり、保険会社によっては加入自体を断られたりすることがあります。

一般物件扱いになると地震保険の対象外になるという業界の一般的な取り扱いもあるため、加入できる場合でも補償範囲を保険会社に確認しておくことが大切です。どの区分になるかは物件の使用状況と保険会社の引受基準によって変わるため、具体的な判断は加入予定の保険会社に直接確認することをお勧めします。

保険会社が加入審査で確認する項目としては、見回りや管理の頻度、電気・水道・ガスなどライフラインの契約継続状況、家財が残っているかどうか、といった点が挙げられます。定期的に通水・通電を行い、郵便物をため込まず、庭木の手入れをしているなど、管理の実態を示せる状態であれば、「住宅物件」としての条件に近づけられる場合があります。逆に、長期間誰も立ち入っておらず管理の実態を示せない場合は、保険会社が「一般物件」と判断する根拠になりやすくなります。

保険に入れないまま放置した場合のリスク

「保険に入れないなら、入らないままでいい」と考えてしまいがちですが、放置には別のリスクが伴います。

まず、空き家で火災が起きて近隣に延焼した場合の責任についてです。失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律、明治32年法律第40号)は、失火で近隣に延焼した場合の民法709条の損害賠償責任を原則適用しないと定めています。ただし、同法には「失火者に重大な過失があったときはこの限りでない」という但し書きがあり、空き家の管理が著しく不十分だった場合に重大な過失と評価される可能性は否定できません。重大な過失に当たるかどうかは個別の事情によって変わるため、断定はできませんが、保険に入らずに放置することが責任を免れる保証にはならない点は押さえておく必要があります。

もう一つのリスクは固定資産税です。令和5年の空家等対策特別措置法改正により、特定空家の前段階にあたる「管理不全空家」制度が新設されました。市区町村の指導に従わず勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(小規模住宅用地で1/6、一般住宅用地で1/3に減額される措置)の適用が外れ、税負担が増えることになります。保険だけでなく税金の面でも、空き家を「そのままにしておく」コストは年々上がっている状況です。

国土交通省の空き家対策特設サイトでは、管理不全空家の具体的な判断材料として、屋根や外壁の破損、立木の繁茂、不法投棄やごみの放置など、周囲への悪影響が確認できる状態が挙げられています。こうした状態に心当たりがある場合は、固定資産税の面でも早めの対応が必要になる可能性があるため、火災保険の見直しと同時に、建物の管理状態も点検しておくことをお勧めします。重大な過失の有無や勧告の対象になるかどうかの判断は個別事情によるため、不安がある場合は弁護士や自治体の空き家相談窓口に確認するとよいでしょう。

通常の火災保険に入れない場合の対応策

通常の住宅用火災保険への加入が難しい場合でも、選択肢がないわけではありません。

一つは、空き家専用保険の活用です。NPO法人空家・空地管理センターは日新火災海上保険株式会社と業務提携し、空き家専用保険を自動付帯する管理サービス「空き家あんしん管理」を2024年1月に提供開始しています。この保険は、空き家の所有に伴う損害賠償責任や、火災発生時の解体費用・お見舞い金等を主な補償対象としており、通常の住宅用火災保険とは補償の考え方が異なります。

もう一つは、複数の保険会社への相談です。ダスキンの解説でも触れられているとおり、空き家の引受基準は保険会社によって差があるため、一社に断られても別の保険会社や空き家専用保険を扱う会社に相談すると条件が変わることがあります。空き家専用保険は、損害保険代理店や、空き家管理サービスを提供している事業者経由で案内されることが多く、管理サービスに保険が自動付帯される形で提供されるケースもあります。複数の窓口に相談して、補償内容と管理サービスの範囲を比較してみるとよいでしょう。

比較する際は、補償の対象が建物だけなのか、損害賠償責任や解体費用まで含むのかといった範囲の違いに加えて、保険料と管理サービスの利用料を合算した総額で検討すると、通常の火災保険との比較がしやすくなります。

そして、老朽化が著しく保険の加入自体が現実的でない場合は、解体による更地化や、古家付きのままでの売却・買取を検討する選択肢もあります。どの方法が合うかは建物の状態や今後の利用方針によって異なるため、火災保険の見直しと合わせて、解体や売却の相場観も早めに把握しておくと判断がしやすくなります。

まとめ:火災保険の見直しは空き家対策の入り口

空き家率13.8%・900万戸という総務省のデータが示すとおり、火災保険に入りにくい空き家はもはや特殊な事例ではなく、多くの家庭が直面し得る状況になっています。

保険に入れない・入りにくいという事実は、実家の空き家が放置されたままになっているという警告でもあります。管理不全空家制度のように、保険以外の面でも「放置」にかかるコストは増える方向にあるため、保険会社への相談と同時に、建物の状態や今後の方針について考え始めるきっかけとして捉えるのがよいでしょう。

まずは加入中または検討中の保険会社に、現在の空き家の状態を伝えて加入可否を確認することから始められます。判断に迷う場合は、損害保険の相談窓口や空き家管理の専門業者に相談することも選択肢になります。

火災保険の見直しは、それ単体で終わる作業ではありません。保険会社に加入可否を確認する過程で、建物の現状を改めて把握することになり、それが結果として「このまま維持するか、解体するか、売却するか」という実家じまい全体の判断につながっていくことが少なくありません。保険の問い合わせを、実家の今後を考える最初の一歩として位置づけておくと、その後の手続きもスムーズに進めやすくなります。

参考文献

総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」 / 消防庁「令和6年版消防白書」 / NPO法人 空家・空地管理センター「放火による火災」 / ダスキンの空き家管理「空き家でも火災保険に入れる?加入可否の判断基準、選び方、想定リスクまで解説」 / 日本法令索引(国立国会図書館)「失火ノ責任ニ関スル法律」 / 国土交通省「空き家対策 特設サイト」 / NPO法人 空家・空地管理センター「空き家専用保険を付帯する空き家管理サービス『空き家あんしん管理』の提供を開始」

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カヅキ

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桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。