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仕舞手帖 · 公開: 2026.10.08 · 8分で読めます

空き家、売る以外の活用方法は? 賃貸・民泊・補助金を比較で整理

実家が空き家になったとき、売却以外にどんな活用方法があるのか。賃貸・民泊・補助金という3つの方向性を、必要な手続きと税金の仕組みを含めて比較します。

歴史的な城の石垣と伝統的な屋根

実家が空き家になったとき、「売る」以外にどんな選択肢があるのか気になっている方は多いと思います。結論から言うと、空き家の活用方法は大きく「賃貸に出す」「民泊として貸す」「補助金を使って地域の施設に改修する」の3方向に整理できます。どれを選ぶかによって必要な手続きや初期費用、税金の扱いが変わってきます。本記事では、この3つの方向性それぞれの仕組みと、選ぶ前に確認しておきたい税金の基礎知識を順番に見ていきます。

空き家の活用方法には何があるか?「売る」以外の方向を整理する

空き家の将来の方向性について、国土交通省の空き家対策特設サイトは「しまう」と「活かす」という2つの考え方で整理しています。「しまう」は解体して跡地を広場や駐車場、新しい建物の敷地として活用する方向、「活かす」は住宅のまま売却や賃貸に出す、あるいは用途を変えてカフェなどとして活用する方向です。

「活かす」方向のなかでも、特に検討されやすいのが賃貸と民泊です。どちらも建物を解体せずに使い続けられる点が共通していますが、民泊については選ぶ制度によって年間の営業可能日数が大きく異なります。後ほど触れる住宅宿泊事業法(民泊新法)では年間180日以内という上限があり、同じ「民泊」という言葉でも、制度次第で実際に使える範囲は変わってきます。

次の章からは、賃貸・民泊それぞれの具体的な仕組みと、活用方法を選ぶ際に押さえておきたい税金の考え方、八王子市独自の補助金制度を順に見ていきます。

賃貸に出す—2027年度から始まる国の資金支援と検討ポイント

空き家を賃貸に出す場合、リフォーム資金をどう用意するかが課題になりがちです。この点について、国の制度に動きがあります。

国土交通省は2027年度の予算概算要求に関連費用を盛り込み、空き家をリフォームして子育て世帯や中低所得者向けの賃貸住宅として提供する事業者に対して、住宅金融支援機構を通じた低利融資の仕組みを創設する方針を示しています。老朽化した公営住宅をリフォームして賃貸活用する場合も対象になり得るとされています。資金源は、政府が住宅金融支援機構に拠出する資金の運用益です。

この支援が検討されている背景には、空き家は資産価値が低く金融機関の担保として認められにくいという課題があります。つまり、賃貸化したくてもリフォーム資金の融資を受けにくいという壁が、空き家の流通を妨げる一因になっているということです。この制度はまだ2027年度予算の概算要求段階であり、具体的な金利や融資条件は今後の予算編成で固まっていく見込みです。

個人が自分の空き家を賃貸に出す場合、この制度は主に事業者(リフォーム後に賃貸住宅として提供する事業者)向けの枠組みである点にも注意が必要です。自分で貸主になる場合は、不動産会社やリフォーム会社に、現時点で使える既存の補助金・融資制度を含めて相談し、賃貸化にどの程度の初期費用がかかるかを見積もってもらうのが現実的な進め方になります。

既存の制度としては、八王子市の「居住環境整備補助金」も確認しておきたいところです。この補助金は空き家活用に限定したものではなく、既存住宅の改修を広く対象にしたメニューですが、木造住宅の耐震改修工事は対象工事費の2/3以内・上限100万円、簡易耐震改修工事は対象工事費の50%以内・上限25万円という内容になっています。古い空き家を賃貸や民泊として貸し出す前には耐震性の確認・改修が必要になるケースが多いため、賃貸化を具体的に検討する段階で、この補助金が使えるかどうかを自治体窓口に確認しておくと、初期費用の見通しを立てやすくなります。

民泊として貸す—3つの制度の違いと180日ルール

賃貸より短期的な活用として検討されるのが民泊です。民泊には主に3つの制度があり、それぞれ営業できる日数や手続きが異なります。

最も取り入れやすいのが住宅宿泊事業法(民泊新法)です。都道府県知事等への届出だけで営業を始められ、住宅として扱われるため用途地域の制限もほぼありません。ただし年間提供日数は180日以内という上限があり、カウント期間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの1年間、カウント対象はゲストが実際に宿泊した泊数のみです。家主が物件に居住していない場合(家主不在型)は、国土交通大臣の登録を受けた住宅宿泊管理業者への管理委託が法律で義務づけられています。

本格的に民泊事業として運営したい場合は、旅館業法の簡易宿所営業という選択肢もあります。こちらは年間365日営業できますが、工業地域や低層住居専用地域など用途地域によっては営業できず、消防設備の設置基準も住宅宿泊事業法より厳しいため、初期の改修費が高額になりやすい傾向があります。もう一つ、国家戦略特区民泊という制度もありますが、これは東京都・大阪府など特定の自治体限定の枠組みで、自治体のルールにより最低宿泊日数(2泊3日以上など)の条件が付く場合があります。

このように、民泊は「届出だけで始めやすいが日数に上限がある住宅宿泊事業法」「日数制限はないが改修費と用途地域の制約が大きい旅館業法」という、コストと営業可能日数のどちらを優先するかのトレードオフで選ぶことになります。実家の立地が用途地域の制約に当たるかどうかは、都市計画図や自治体の都市計画課で事前に確認しておく必要があります。

どの制度を選ぶにしても、分譲マンションの多くは管理規約で民泊を禁止している点には注意が必要です。実家が戸建てではなくマンションの場合、法律上の要件を満たしていても管理規約の確認が先に必要になります。

八王子市内の実家で住宅宿泊事業(民泊新法に基づく届出)を検討する場合、届出窓口は八王子市保健所生活衛生課環境衛生担当です。届出は国の民泊制度運営システムを使った電子申請、または窓口への用紙提出のいずれかで行えます。市のサイトでは、届出の前に環境衛生担当へ事前相談することが勧められており、物件が制度の要件に合うかどうかを含めて、まずこの窓口に相談するところから始めるとよいでしょう。

税金の仕組みを踏まえて選ぶ—住宅用地特例と活用方法の関係

賃貸や民泊を検討する際は、固定資産税の仕組みも併せて確認しておきたいポイントです。

固定資産税には、住宅が建っている土地(住宅用地)の課税標準を軽減する特例があります。200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)は評価額の6分の1、200平方メートルを超える部分(一般住宅用地)は3分の1に軽減される仕組みです。空き家であっても「住宅」として賃貸や住宅宿泊事業法の範囲内の民泊で使い続ける場合は、この特例の対象になりやすいとされています。

一方で、空き家を解体してトランクルームや駐車場など住宅以外の用途に転用すると、この住宅用地特例の対象から外れ、課税標準が上がる可能性があります。「活用する」といっても、住宅として使い続けるか、住宅以外の用途に変えるかで、税金面の扱いが変わってくるということです。

どの活用方法が自分の実家にとって税金面でも有利かは、土地の面積や自治体の運用によって変わるため、断定はできません。活用方法を具体的に検討する段階になったら、固定資産税の扱いについては自治体の固定資産税担当課、収益計算や確定申告の扱いについては税理士に、事前に確認しておくことをお勧めします。

また、空き家を賃貸や民泊として「住宅」のまま使い続ける限りは住宅用地特例の対象になりやすい一方、将来的に解体して駐車場やトランクルームにする可能性も含めて検討している場合は、どちらの方向にするかを早い段階で決めておくほうが、税金面の見通しを立てやすくなります。活用方法を途中で変更すると、その都度特例の適用関係を確認し直す必要が出てくる点も、あらかじめ知っておきたいポイントです。

八王子市の活用支援—空き家利活用促進整備補助金

賃貸や民泊以外に、地域のための施設として活用する道を八王子市が補助金で後押ししている制度もあります。

「八王子市空き家利活用促進整備補助金」は、空き家を集会・交流施設、体験・学習施設、ベンチャービジネスの拠点、防災備蓄倉庫等の防災に係る施設など「地域の活性化に資する施設」として改修する場合に使える補助金です。全体改修の場合は補助対象工事費の3分の2以内・上限100万円(1戸あたり)、家財道具等の整理・処分を含む簡易な改修である「スタートアップ整備」の場合は補助対象工事費の3分の2以内・上限25万円(1戸あたり)となっています。

主な対象要件は、昭和56年6月以降の新耐震基準に適合していること、申請年度の2月末日までに事業を完了すること、市内の登録施工業者が工事を行うこと、市税の滞納がないことです。賃貸や民泊のように個人の収益を目的とする活用とは異なり、地域の集会所や防災倉庫といった公益性の高い使い方を想定した制度である点が特徴です。

実家を自分で貸し出すよりも、地域の役に立つ形で活かしたいという考えがある場合は、この補助金が使えるかどうかを八王子市の担当窓口に確認してみる価値があります。耐震基準など要件が細かく定められているため、物件がこの制度の対象になるかどうかは、改修を依頼する前に自治体への確認から始めるのが確実です。

地域活性化施設としての活用は、個人がそのまま貸主として賃料収入を得る賃貸や民泊とは異なり、運営を自治会やNPO、地域団体に委ねる形になることが多い点も特徴です。自分で運営の担い手を見つけるのが難しい場合でも、八王子市の窓口に相談すれば、地域でその施設を必要としている団体につながれる可能性があります。空き家を手放したくないが自分では使い切れない、という事情がある場合には、検討の価値がある方向性です。

賃貸・民泊・地域施設への改修のいずれも、初期費用や税金の扱いが異なるため、自分の実家の立地や建物の状態、かけられる予算によって向き不向きが変わります。まずは候補となる方向性を2〜3つに絞り、それぞれの窓口(リフォーム会社、住宅宿泊事業の届出窓口、自治体の補助金担当課)に相談しながら、現実的な選択肢を比較していくとよいでしょう。

参考文献

国土交通省「住宅:空き家対策 特設サイト」 / 時事通信「空き家の賃貸活用を促進 国交省、事業者の資金調達支援」 / 国土交通省観光庁「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?」 / LIFULL HOME’S「空き家を民泊にする法律と基準を解説」 / 八王子市「住宅宿泊事業(民泊)について」 / 総務省「固定資産税(住宅用地に対する課税標準の特例)」 / 八王子市「八王子市空き家利活用促進整備補助金のご案内」 / 八王子市「令和8年度(2026年度)八王子市居住環境整備補助金のご案内」

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。