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仕舞手帖 · 公開: 2026.10.10 · 7分で読めます

相続した実家の「小規模宅地等の特例」とは? 空き家のままで使える条件と注意点

相続した実家の相続税評価額を最大80%下げられる「小規模宅地等の特例」の仕組みと、同居・別居(家なき子)それぞれの適用要件、空き家のまま所有した場合の扱い、申告手続きを2026年時点の国税庁情報で整理します。

重なり合う書類のレイヤーを描いた和モダンな抽象イラスト

相続した実家(居住用の土地)は、「小規模宅地等の特例」という制度を使うと、一定の要件を満たせば相続税の評価額を最大80%下げられる場合があります。ただし、誰が相続するか、被相続人と同居していたかどうか、申告期限までにどう動いたかによって、適用できるかどうかは大きく変わります。

「うちは相続税がかからないはずだから関係ない」と思っていると、実は申告自体が必要な制度だったことに後から気づく、というケースもあります。この記事では、特例の仕組みと減額の割合、同居・別居それぞれの要件、実家を空き家のまま所有した場合の扱い、将来売却するときに関わる別の控除制度との関係、そして申告の手続きと期限を、2026年時点で確認できる国税庁の公開情報にもとづいて整理します。

適用できるかどうかや具体的な減額額は、相続人の構成や住まいの状況などの個別事情によって変わります。この記事は制度の全体像をつかむためのものであり、個別の適用可否の判断は税理士への相談を前提にしてください。

小規模宅地等の特例とは:相続した実家の評価額を最大80%下げる制度

小規模宅地等の特例は、相続や遺贈によって取得した財産のうち、被相続人の居住用や事業用に使われていた宅地等について、一定の面積までの部分の相続税評価額を大きく減額できる制度です。評価額が下がれば、その分だけ相続税の課税対象になる金額も小さくなります。

国税庁タックスアンサーNo.4124によると、減額の割合と対象になる面積は、宅地等の種類によって異なります。実家のように被相続人が住んでいた土地(特定居住用宅地等)は、330㎡までの部分について評価額を80%減額できます。事業に使われていた土地(特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等)は400㎡まで80%減額、賃貸アパートなどの貸付事業用宅地等は200㎡まで50%減額という区分になっています。

この制度が設けられている背景には、相続した土地にそのまま住み続ける遺族の生活や、相続した土地で事業を続ける遺族の基盤を、相続税の負担によって急に失わせないようにする、という考え方があります。評価額をそのまま相続税の計算に使うと、実家に住み続けるだけで思いがけない納税資金が必要になる場合があるため、一定の要件を満たす人に限って評価額を下げる仕組みになっています。

この記事では、読者の多くに関わりが深い「実家=特定居住用宅地等」の80%減額を中心に見ていきます。ただし、この特例は自動的に適用されるものではなく、誰が相続するか・どのように使い続けるかによって、適用できるかどうかが分かれる点に注意が必要です。次の章から、具体的な要件を確認していきます。

実家で特例を使うための要件:誰が相続すれば80%減額が受けられるか

特定居住用宅地等の80%減額を受けられるかどうかは、実家を相続する人が被相続人とどういう関係にあったかで変わります。国税庁タックスアンサーNo.4124によれば、配偶者が相続する場合は、同居や居住の継続といった要件なしに適用できます。

一方、被相続人と同居していた親族が実家を相続する場合は、条件つきで適用できます。相続開始の直前からその家に引き続き居住し、かつ相続税の申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10か月)まで、その宅地等を所有し続けていることが要件です。つまり「相続後すぐに家を売ってしまう」「申告期限より前にその家を離れてしまう」といった事情があると、この要件を満たせなくなる可能性があります。

同居していなかった親族の場合は、原則としてこの特定居住用宅地等の特例を使うことはできません。独立して自分の持ち家に住んでいる子が、実家で一人暮らしをしていた親を相続するようなケースがこれに当たります。ただし、被相続人に配偶者も同居していた相続人もいなかった場合には、別居していた親族でも使える別の要件(いわゆる「家なき子」要件)が設けられています。この要件については次の章で詳しく見ていきます。

同居していなかった場合:「家なき子」要件と空き家のまま所有するときの注意点

被相続人に配偶者も同居していた相続人もいない場合、別居していた親族であっても、一定の要件をすべて満たせば特定居住用宅地等の特例を使える仕組みがあります。これが「家なき子」要件と呼ばれるものです。

国税庁タックスアンサーNo.4124に基づく整理では、主な要件として、日本国籍を有していること(または日本に住所があること)、配偶者がいないこと、相続開始前3年以内に自己または配偶者、3親等内の親族等が所有する家屋に居住していたことがないこと、そして相続税の申告期限まで宅地等を所有し続けていることが挙げられます。このほかにも細かい除外条件があるため、自分が該当するかどうかの最終的な判断は税理士に確認することをおすすめします。

では、実家を相続した後、すぐに住まず空き家のまま所有している場合はどうなるでしょうか。特例の要件は「申告期限までその宅地等を所有し続けていること」であり、居住そのものを求めているわけではないため、空き家のまま所有している間は特例の対象になり得ます。ただし、建物を取り壊した土地を事業用や賃貸用に転用してしまうと、居住用としての特例は使えなくなる点に注意が必要です。

将来売却する場合に関わる「空き家の3,000万円特別控除」との関係

小規模宅地等の特例を使って実家を相続した後、空き家のまま所有を続け、将来的に売却を考える人も少なくありません。その場合に関わってくるのが、小規模宅地等の特例とは別の制度である「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(国税庁タックスアンサーNo.3306)です。

この特例は、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度で、対象となるのは平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です。主な要件は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、譲渡時に一定の耐震基準を満たすか建物を解体して更地で譲渡すること、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることです。

2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡では、その家屋・土地を取得した相続人が3人以上いる場合、控除額は1人あたり2,000万円に変わります(3人未満であれば最高3,000万円です)。小規模宅地等の特例とこの空き家3,000万円特別控除は、それぞれ別の要件を満たせば制度上は併用できますが、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」とはどちらか一方を選ぶ「選択適用」になり、両方を同時に使うことはできません。

特例を使うための手続きと申告期限:自動適用ではないので申告が必須

ここまで見てきた小規模宅地等の特例で特に見落とされやすいのが、「相続税額がゼロになる場合でも申告が必要」という点です。国税庁タックスアンサーNo.4124によれば、この特例の適用を受けるには、相続税の申告書にその特例を受ける旨を記載し、計算に関する明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付して提出する必要があります。

つまり、特例を使った結果として相続税がかからなくなる場合であっても、「申告しなくていい」ということにはなりません。申告をしなければ特例そのものが適用されず、本来の評価額のまま相続税が計算されてしまう可能性があります。相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。

もう一つ注意したいのが、遺産分割協議との関係です。申告期限までに相続人間の遺産分割が確定していない場合、原則としてこの特例の適用を受けられません。ただし、分割が確定した後に「申告期限後3年以内の分割」として更正の請求を行うことで、遡って特例の適用を受けられる制度も用意されています。分割協議が長引きそうな場合は、この制度の存在を踏まえて税理士に相談しておくと安心です。

申告書への添付が求められる書類には、特例の適用を受ける旨を記載した相続税の申告書本体のほか、特例の対象となる宅地等の取得者・取得割合・評価額の計算過程を示す明細書、相続人全員が分割内容に合意したことを示す遺産分割協議書の写しなどが含まれます。どの書類が必要になるかは相続人の状況によって変わるため、申告を自分で行う場合も、一度は税理士に書類の揃え方を確認しておくと手戻りを防ぎやすくなります。

まとめ

相続した実家に使える小規模宅地等の特例は、特定居住用宅地等であれば330㎡まで評価額を80%減額できる制度です。配偶者が相続する場合は要件なしで使えますが、同居していた親族は居住と所有の継続が、同居していなかった親族は「家なき子」要件を満たす必要があります。

実家を空き家のまま所有している間も特例の対象になり得ますが、用途を変えると使えなくなる点、将来売却する場合は別制度の空き家3,000万円特別控除が関わってくる点、そして相続税額がゼロでも申告自体が必要な点は、特に見落としやすいポイントです。

どの要件に当てはまるか、どの制度を使うのが有利かは家庭の事情によって変わるため、この記事で紹介した内容はあくまで制度の全体像です。具体的な適用可否や申告の進め方は、相続税を専門に扱う税理士に相談して確認することをおすすめします。

とくに、相続人が複数いて同居の有無が家族ごとに異なる、実家以外にも不動産を持っている、将来の売却を視野に入れているなど、事情が重なるほど判断は複雑になりがちです。「大丈夫だろう」と見込みだけで進めず、申告期限(10か月)に余裕を持って動き出すことが、特例を取りこぼさないための実務的なポイントになります。

参考文献

国税庁タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」 / 国税庁タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。