特定空き家に指定される基準とは?強制執行までの流れと固定資産税6倍の仕組み
実家を空き家のまま放置していると、ある日「特定空き家」に指定されるかもしれません。何が基準になるのか、指定後はどう進むのか、固定資産税はどう変わるのかを、法律とガイドラインに基づいて整理します。

この記事の目次
実家を空き家のまま持ち続けていると、「特定空き家」という言葉を目にすることがあります。結論から言うと、特定空き家は法律で定められた4つの状態のいずれかに当てはまると市区町村長から指定されるもので、指定後は助言・指導、勧告、命令、そして行政代執行(強制的な解体)へと段階的に進みます。勧告を受けた時点で固定資産税の優遇が外れ、税負担が増えることも少なくありません。本記事では、特定空き家の判断基準、指定後の手続きの流れ、税金への影響、2023年の法改正でできた「管理不全空家等」という新しい区分、そして指定される前にできる対策と八王子市の相談窓口までを順番に整理します。
特定空き家とは?4つの判断基準
特定空き家という呼び方は俗称ではなく、空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号、平成27年2月全面施行)という法律に基づく正式な区分です。同法第2条第2項は、特定空家等を次の4つの状態のいずれかに該当する空家等と定義しています。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
ここでいう「保安上危険」とは、建物の老朽化による倒壊や外壁・屋根材の落下などを指します。「衛生上有害」はごみの放置や害虫の発生、「景観を損なっている」は草木の繁茂や外観の著しい劣化、「生活環境の保全」は不特定の者が侵入しやすい状態や、動物の侵入・ふん害などが想定されています。
国土交通省・総務省が策定した「『特定空家等に対する措置』に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」では、この4要件それぞれについてさらに具体的な判断基準を示しています。例えば、生活環境の保全に関する基準の一つとして「門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れている等不特定の者が容易に侵入できる状態で放置されている」ことが挙げられています。つまり、防犯対策を怠って無施錠のまま放置された空き家も、特定空き家の判断対象になり得るということです。
どの状態が「著しい」と判断されるかは、建物の規模や周辺環境、近隣からの通報の有無などを踏まえて市区町村が個別に判断します。同じような老朽度合いでも、人通りの多い住宅密集地にあるか、山間部の孤立した場所にあるかで評価が変わる可能性があるため、「この程度なら大丈夫」と自己判断で安心することは避けたほうがよいでしょう。
この判断は市区町村が一方的に下すものではなく、空家法第9条に基づく立入調査の権限を根拠に、所有者への聞き取り調査や現地の立入調査を経て行われるのが一般的な流れです。近隣からの通報がきっかけで調査が始まることも多く、所有者が現地から離れて暮らしている場合は、こうした調査の連絡が届くまでに時間がかかりやすい点も留意が必要です。
指定後の流れ:助言・指導から行政代執行まで
特定空き家に指定されても、すぐに強制的な解体が行われるわけではありません。空家法第14条は、市区町村長が所有者に対して段階的に措置を進めることを定めています。
- 助言・指導: まずは口頭または文書で、改善を求める助言・指導が行われます。多くのケースはこの段階で所有者が対応し、解決します。
- 勧告: 助言・指導に応じない場合、より強い行政指導である「勧告」が行われます。勧告を受けると、後述する固定資産税の優遇措置が外れます。
- 命令: 勧告にも応じない場合、期限を定めた「命令」が出されます。命令に違反すると50万円以下の罰金が科されることがあります。
- 行政代執行: 命令にも従わない場合、市区町村が所有者に代わって解体などの措置を行い、その費用を所有者に請求する「行政代執行」に進みます。所有者が特定できない、または所有者に命令を行っても応答が得られない場合は「略式代執行」という手続きが取られることもあります。
実際にどの程度の件数がこの手続きに進んでいるかは、国土交通省の調査で確認できます。令和5年3月31日時点(令和5年9月27日公表)の調査によると、平成27年度から令和4年度末までの累計で、助言・指導が37,421件、勧告が3,078件、命令が382件、行政代執行が180件、略式代執行が415件実施されており、合計で41,476件の措置が講じられています。これらとその他市区町村独自の取組を合わせると、168,198件の管理不全な空き家が除却や修繕などの対応を受けたとされています。
この数字からも分かるように、助言・指導の段階で対応が終わるケースが大半で、実際に行政代執行まで進むのは全体のごく一部です。ただし、放置を続けた場合に行政代執行まで進む仕組みが法律上存在すること自体は、空き家を所有する以上知っておくべき事実です。
固定資産税が最大6倍になる仕組みと2023年改正
特定空き家に関する制度のなかで、所有者への影響が最も大きいのが固定資産税への影響です。
住宅が建っている土地には、「住宅用地の特例」という固定資産税の軽減措置が適用されています。小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は固定資産税の課税標準が6分の1に、一般住宅用地(200㎡を超える部分)は3分の1に軽減される仕組みです。
市区町村長が特定空家等に「勧告」を行うと、地方税法第349条の3の2第1項等の規定により、その敷地はこの住宅用地特例の対象から除外されます。特例が外れると、更地と同じ評価基準で固定資産税が課されることになり、結果として土地にかかる固定資産税が実質的に増額(最大6倍相当になるケースがあるとされます)。どの程度増えるかは土地の評価額や自治体の判断によって変わるため、具体的な見込みは固定資産税を管轄する自治体の窓口や税理士に確認する必要があります。
さらに2023年(令和5年)12月13日施行の法改正では、「管理不全空家等」という新しい区分が設けられました。これは、まだ特定空家等には該当しないものの、放置すればそのまま特定空家等になるおそれがある空き家を対象とする区分です。市区町村長はこの段階でも所有者に指導・勧告を行えるようになり、勧告を受けた管理不全空家等についても住宅用地特例が解除されます。つまり、「特定空家等に指定されていないから大丈夫」という考え方は、2023年の改正以降は成り立たなくなっています。管理が不十分な段階からすでに税制上のリスクが及ぶ可能性があるということです。
この改正の背景には、空き家の急増という事情があります。国土交通省の資料によると、空き家の総数はこの20年で約1.5倍(576万戸から849万戸)に、居住目的のない空き家は1.9倍(182万戸から349万戸)に増加しており、特定空家等になる前の早い段階から対応を促す必要性が高まっていました。
指定される前にできる対策
特定空き家、あるいは管理不全空家等に指定される前に対応できることは複数あります。
- 定期的な見回りと簡易な修繕: 郵便受けの溢れや雑草の繁茂、外壁・屋根の破損は、ガイドラインが示す判断基準に直接関わる部分です。月1回程度の見回りや、破損箇所の早期修繕で、指定の対象となる状態を避けやすくなります。
- 施錠の徹底: 前述のとおり、無施錠で侵入しやすい状態は判断基準の一つに含まれます。門扉や雨戸、窓の施錠は基本的な対策です。
- 自治体の相談窓口への早期相談: 「どう手を付ければよいか分からない」状態こそ、行政指導の段階に進みやすくなります。早い段階で自治体の窓口に相談し、解体や活用の選択肢を検討することが、結果的に指定を避ける近道になります。
八王子市では、平成28年6月に庁内に「特定空家等認定会議」を設置し、管理不全な空き家の実態把握と対応を進めてきました。市の計画(令和2年12月時点の素案)によると、令和2年3月末時点で管理不全として助言等を行った件数は163件、そのうち特定空家等に認定したのは8件で、4件は解決済みだったとされています。この数値は数年前の時点のものですが、助言・指導の段階で解決に至るケースが一定数存在することを示す参考情報になります。
八王子市の相談窓口と補助制度
実家の空き家について「特定空き家に指定されるのでは」と不安を感じたら、まず自治体の窓口に相談するのが基本です。
八王子市の空き家相談窓口は、まちなみ整備部住宅支援課(電話042-620-7260)です。あわせて、空き家ワンストップ相談窓口「住まいの活用相談所(住まカツ)」も設置されており、相続・管理・活用・解体などの相談に幅広く対応しています。
解体費用の負担を軽減する制度としては、「八王子市未耐震空き家除却支援補助金」があります。昭和56年5月31日以前に建築され、耐震診断で耐震性がないと判定された相続空き家が対象で、除却費用の3分の2以内が補助されます。補助額の上限は、相続発生から3年以内の完了なら100万円、5年以内なら50万円、10年以内なら25万円と、早く動くほど手厚くなる仕組みです(相続発生から10年以内に完了することが条件です)。
また、相続で取得した昭和56年5月31日以前建築の空き家、またはその取壊し後の土地を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を特別控除できる「空き家発生抑制の特例措置」もあります。適用期限は2026年時点で令和9年12月31日までとされています。この特例の適用可否は個別の事情(耐震基準を満たすリフォームの有無や取壊しの時期など)によって変わるため、利用を検討する場合は税理士や八王子市の窓口に確認することをお勧めします。
いずれの制度も申請の時期や条件が細かく定められているため、「使えそうだ」と思った時点で早めに窓口に問い合わせることが、結果的に特定空き家への指定を避け、負担を抑える近道になります。
参考文献
e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年法律第127号) / 国土交通省「『特定空家等に対する措置』に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」 / 国土交通省 報道発表資料「改正空家法 施行に向けた空き家対策の現在地」 / 公益社団法人全日本不動産協会「国土交通省『改正・空家特措法の施行について』」 / 八王子市公式サイト「空き家を相続した・する予定のある方へ」 / 八王子市公式サイト「八王子市未耐震空き家除却支援補助金」 / 八王子市「八王子市空き家等対策計画 令和3〜12年度(2021〜2030年度)【素案】」
実家じまいで迷ったら
実家の片付けや相続、空き家の管理や解体など、実家じまいには多くの課題が伴います。「何から手をつければいいのかわからない」と悩むことも少なくありません。
一般的には、まずは実家がいくらで売れるか、無料の一括査定サービスなどを利用して市場価値を調べておくことが最初の一歩になります。
※現在、桑都手帖では実家じまいに役立つ提携サービス(一括査定・解体見積もりなど)の導入準備を進めています。準備が整い次第、こちらで推奨窓口をご案内いたします。
実家じまいや終活に関する記事は、カテゴリ「仕舞手帖」で順次公開しています。
次の一本が出たら、お知らせします
記事の更新だけをお送りします。お問い合わせとは別の窓口です。
確認メールのリンクを開くと購読が完了します。解除はいつでもできます。
執筆・取材のご依頼、記事へのご指摘は お問い合わせ からどうぞ。
「106万円の壁」撤廃、始まる —— 2026年10月施行、パート従業員と雇う側は何を確認すればいいか
Support
※ Stripe決済(合同会社月香が運営)で安全にお支払いいただけます






