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仕舞手帖 · 公開: 2026.10.13 · 8分で読めます

法定相続情報証明制度とは? 実家の相続手続きを楽にする仕組みと使い方

法定相続情報証明制度とは何か、使うと相続手続きの何が楽になるのか、申出の流れ・必要な期間・向かないケースまでを法務省・法務局・司法書士会の公的情報にもとづいて整理します。

机上の巻紙の書面と筆を描いた和モダンな静物イラスト

実家の相続手続きを進めていると、法務局での相続登記、銀行での預貯金の払戻し、証券会社での名義変更など、提出先ごとに戸籍謄本一式を何度も出し直すことになりがちです。そのたびに原本を取り直したり、窓口での返却を待ったりしていては、手続きが思うように進みません。

この手間を軽くできるのが「法定相続情報証明制度」です。この記事では、制度の仕組み、使うと何が楽になるのか、申出の流れと必要な期間、そして使っても戸籍収集そのものは省略できないという前提まで、法務省・法務局・日本司法書士会連合会の公的情報にもとづいて整理します。

相続のたびに戸籍謄本を出し直すのが面倒なら法定相続情報証明制度を使う

法定相続情報証明制度は、平成29年(2017年)5月29日に創設され、全国の登記所(法務局)で運用が始まった制度です。相続人が「法定相続情報一覧図」という相続関係を一覧表にした図を作成し、戸除籍謄本等の束とともに登記所に提出すると、登記官がその内容が民法に定められた相続関係と合致しているかを確認したうえで、認証文を付した「法定相続情報一覧図の写し」を交付します(2026年時点、法務局「『法定相続情報証明制度』について」)。

一覧図の写しは、戸籍謄本一式の代わりとして相続手続きの窓口に提出できる書類です。制度そのものの申出・交付はいずれも無料で行えます。

この制度が生まれた背景には、相続手続きで提出する戸籍謄本一式が、1冊の原本として窓口から窓口へ回していくしかなかったという事情があります。実家の相続では不動産の登記・金融機関の預貯金解約・相続税の申告など、提出先が同時に複数発生するのが普通です。1セットの戸籍謄本一式をある窓口に提出して返却を待ってから次の窓口へ回す、という進め方では、すべての手続きが終わるまでに時間がかかります。法定相続情報証明制度は、この「原本を使い回す」という制約そのものを解消する仕組みとして位置づけられています。

一覧図の写し1枚で複数の窓口に使い回せる仕組み

この制度の実務的なメリットは、一覧図の写しを複数の窓口で使い回せる点にあります。一覧図の写しは、相続登記の申請、被相続人名義の預貯金の払戻し手続き、相続税の申告、年金等の手続き、保険・有価証券・自動車の名義変更など、さまざまな窓口で戸籍謄本一式の代わりとして使えます(日本司法書士会連合会「新しい相続手続『法定相続情報証明制度』」)。

さらに、一覧図の写しは必要な通数を無料で発行してもらえます。実家の不動産が複数の法務局の管轄にまたがっている場合や、相続先の金融機関・証券会社が複数ある場合は、同じ戸籍謄本一式を何か所にも重複して提出する必要がなくなり、手続きを並行して進めやすくなります。相続人の数が多く戸籍謄本一式の原本が1セットしかない、という状況でも、一覧図の写しがあれば窓口ごとに原本の返却を待つ必要がなくなります。

たとえば、実家の不動産の相続登記を法務局で、父親名義の預金の解約を2つの銀行で、相続税の申告を税務署で進める場合、一覧図の写しを4通発行してもらえば、この4つの窓口に同時並行で提出できます。戸籍謄本一式が1組しかない状態で、窓口を1か所ずつ順番に回っていくのに比べると、手続き全体にかかる時間を大きく圧縮できます。

申出の流れと必要書類、かかる期間の目安

制度を利用する際の申出先は、被相続人の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所です。窓口への持参だけでなく、郵送での申出にも対応しています。

必要になる主な書類は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本一式、被相続人の住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本・住民票の写し、申出人が作成する法定相続情報一覧図、そして申出書です。戸籍謄本一式の取得にかかる費用の目安は、戸籍謄本が1通450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本が1通750円です(2026年時点、税理士法人チェスター「法定相続情報証明制度は必要?」)。本籍地が複数の市区町村に分かれていた場合は、その分だけ取得先の役所が増えます。

申出から一覧図の写しが交付されるまでの期間は、1~2週間程度が目安とされています。登記所の混雑状況によって前後するため、相続税の申告期限(10か月以内)など別の期限が控えている場合は、余裕を持って早めに申出をしておくことが望ましいといえます。

申出そのものは相続人自身が行うだけでなく、親族のほか、司法書士・弁護士・税理士・行政書士といった資格者が代理人として行うこともできます(日本司法書士会連合会「新しい相続手続『法定相続情報証明制度』」)。資格者代理人に依頼する場合は、戸籍謄本一式の収集から一覧図の作成、登記所への提出までを一括して任せられるため、仕事や介護で窓口に出向く時間が取りにくい人にとっては、依頼を検討する価値がある選択肢になります。

保管期間5年と再交付、2024年から始まった新機能

一覧図は登記所で5年間保管されます。この保管期間内であれば、一覧図の写しを無料で再交付してもらえるため、申出時に必要な通数をそろえられなかった場合や、後から別の手続きで一覧図の写しが必要になった場合も、戸籍謄本一式を再度集め直す必要はありません。

また、2024年(令和6年)4月1日からは、登記申請書に「法定相続情報番号」を記載することで、一覧図の写し(証明書の原本)そのものの添付を省略できるようになりました。相続登記を複数回に分けて申請する場合など、同じ番号を使い回せる場面では、さらに手間が減る形になっています。

一覧図自体は5年間保管されているので、たとえば相続登記を先に済ませたあと、半年後に相続税の申告で一覧図の写しが必要になった、という場合でも、番号を伝えるか再交付を申出るだけで対応できます。戸籍謄本一式を再び集め直す必要がない点は、相続手続きが長期にわたる実家の相続では特に助かる仕組みです。

制度を使っても戸籍収集は省けない、向かないケースもある

ここで誤解しやすいのは、「この制度を使えば戸籍謄本の取得自体が不要になる」という点です。実際には戸籍謄本一式の取得そのものは制度を使っても省略できません。制度が省いてくれるのは、取得した戸籍謄本一式を提出先ごとに何度も出し直す手間であり、収集の手間自体は変わりません。なお、提出した戸籍謄本等の原本は、一覧図の写しの交付とあわせて申出人に返却されます。

向かないケース、注意が必要なケースもあります。相続人の中に相続放棄をした人や、相続欠格・相続人廃除に当たる人がいる場合は、一覧図への記載方法が通常と異なります(相続放棄をした人は一覧図に記載しますが、廃除された人は記載しません)。また、被相続人が亡くなった後にさらに相続人が亡くなる「数次相続」が生じている場合は、死亡した人ごとに一覧図を分けて作成する必要があります。被相続人や相続人に日本国籍がなく戸籍謄本が存在しない場合は、そもそもこの制度を利用できません。

加えて、すべての金融機関・証券会社が一覧図の写しを受け付けるとは限りません(税理士法人チェスター「法定相続情報証明制度は必要?」)。利用を検討する段階で、提出予定の窓口が一覧図の写しに対応しているかどうかを確認しておくと、手続きの手戻りを避けられます。相続関係が複雑なケースや、一覧図の作成方法に迷う場合は、司法書士への相談が適しています。

数次相続が生じているケースを具体的に考えると、たとえば祖父が亡くなった後、その相続手続きが終わる前に父親も亡くなった場合は、祖父の相続についての一覧図と、父親の相続についての一覧図を別々に作成することになります。これは、一覧図があくまで「ある人が亡くなった時点での法定相続人」を示す書類であり、複数の相続が重なっている状態を1枚の図にまとめることができないためです。実家の相続では、祖父母の代から名義変更が済んでいないまま放置されているケースも少なくなく、こうした場合は想定より手続きが増える可能性があることを踏まえておく必要があります。

八王子で申出する場合の窓口

八王子市内の不動産・相続関連の登記事務は、東京法務局八王子支局が管轄しています。同支局の取扱業務には、不動産登記・商業法人登記・電子認証・遺言書保管に加えて「法定相続情報」が明記されており、法定相続情報証明制度の申出もこの窓口で行えます。

所在地は〒192-0046 東京都八王子市明神町四丁目21番2号 八王子地方合同庁舎1階・2階、代表電話は042-631-1377です(東京法務局「八王子支局」)。被相続人の最後の住所地や、実家の不動産の所在地が八王子市内であれば、この支局が申出先の候補になります。

一覧図の作り方や必要書類に不安がある場合は、申出前に相談することもできます。東京法務局八王子支局では登記手続案内(相続登記の進め方等に関する無料相談)を予約制で実施しており、代表電話のガイダンスで案内に従って予約するか、登記電話案内室(03-5318-0261)に直接連絡する方法があります。はじめて一覧図を作成する場合は、記載内容に誤りがあると窓口で訂正を求められることもあるため、事前に相談しておくと申出から交付までの期間を余計に延ばさずに済みます。

まとめ:手続き先が複数あるなら検討する価値がある

法定相続情報証明制度は、一覧図の写し1枚を相続登記・預貯金の払戻し・相続税申告・年金手続きなど複数の窓口で使い回せる制度です。提出先が複数にわたる実家の相続では、戸籍謄本一式の重複提出を減らせるメリットがあります。

一方で、戸籍謄本の収集自体や一覧図の作成にかかる手間は変わらないため、提出先が1か所しかない場合は、制度を使うメリットが相対的に小さくなります。相続人の構成が複雑な場合や、一覧図の作成方法に不安がある場合は、司法書士や東京法務局八王子支局の窓口に相談しながら進めることをおすすめします。

参考文献

法務局「『法定相続情報証明制度』について」 / 日本司法書士会連合会「新しい相続手続『法定相続情報証明制度』」 / 税理士法人チェスター「法定相続情報証明制度は必要? 利用手順・費用・デメリットも解説」 / 東京法務局「八王子支局」

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。