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仕舞手帖 · 公開: 2026.10.12 · 8分で読めます

実家は誰が継ぐ? 親の家の相続で「決め方」と4つの分け方

実家を誰が継ぐかは長男や同居の有無で決まるわけではありません。遺産分割協議の仕組みと4つの分割方法、代償分割の税金、空き家の3,000万円控除を2026年時点の公的情報で整理します。

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「長男だから実家を継ぐのが当然」「同居していた子が優先されるはず」。実家の相続が話題になると、こうした考え方が前提のように語られることがあります。しかし法律は、誰が実家を継ぐべきかという順位を定めていません。

実家を誰が継ぐかは、相続人全員の合意(遺産分割協議)によって決まります。遺産の分け方には現物分割・代償分割・換価分割・共有分割という4つの型があり、家を継ぐ人を選んだ場合は代償分割の税金の仕組みが、売却を考える場合は相続人の人数によって空き家の3,000万円控除の金額が変わってきます。

この記事では、実家を「誰が継ぐか」を決める法的な枠組みと、継ぐ・継がないを判断するときに押さえておきたい制度を、法務省・国税庁・裁判所の公的情報にもとづいて整理します。個別の遺産分割の成立可否や税額の計算は家庭ごとの事情で結論が変わるため、この記事では制度の説明にとどめます。

実家の「誰が継ぐか」は家族の話し合い(遺産分割協議)で決まる

実家を誰が継ぐかについて、法律は「長男が継ぐ」「同居していた子が継ぐ」といった順位を定めていません。法務省は遺産分割を「法律で決められた相続人が全員参加して、相続財産の分け方を決定する手続」と説明しています。相続人のうち1人でも参加していない遺産分割協議は、話し合いが成立しても無効になります。

また、預貯金や不動産といったプラスの財産については、相続人全員が合意すれば、民法900条が定める法定相続分の割合どおりでない分け方も可能です。「長男がすべて継ぐ」「同居していた子が家を取得し、他の兄弟姉妹は代わりに現金を受け取る」といった合意も、全員が納得していれば法的に有効になります。

一方、借金などマイナスの財産は、相続人間の合意だけで負担割合を決めても債権者に対しては主張できず、原則として法定相続分どおりの負担になります。実家を「誰が継ぐか」を考える前提として、まずこの仕組みを押さえておく必要があります。

「誰が取得するか」が決まる枠組み:遺産分割の4つの方法

相続人全員の話し合いで実家の行き先を決めるといっても、実際の分け方にはいくつかの決まった型があります。京都家庭裁判所は遺産分割の方法として、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4つを挙げています。

現物分割は、遺産そのものを分ける方法です。土地を分筆してそれぞれが単独で取得するような場合が当てはまりますが、建物をそのまま物理的に分けることは通常できません。代償分割は、相続人のうち1人または数人が実家そのものを取得し、取得した人が他の相続人に金銭(代償金)を支払う方法です。ただし、代償金を支払う相続人に支払うだけの資力があることが前提になります。

換価分割は、実家を売却し、その代金を相続人の間で分ける方法です。裁判所の説明では、遺産を取得したい相続人がいない場合や、取得したい相続人がいても代償金の支払い能力がない場合などに選ばれるとされています。共有分割は、実家を複数の相続人の共有名義のまま取得する方法で、将来さらに相続が発生すると共有者の数が増えて権利関係が複雑になりやすいため、選択には注意が必要だとされています。

「誰が継ぐか」で話し合いが止まったときは、この4つのうちどれを目指すのかという視点で論点を整理すると、話し合いが進めやすくなります。

「自分が家を継ぐ」を選ぶ場合:代償分割の税金の仕組み

実家に住み続けたい相続人がいる場合、多くは代償分割という形に落ち着きます。ここで気になるのが税金の扱いです。国税庁は代償分割を「遺産の分割に当たって共同相続人などのうちの1人または数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して債務を負担するもの」と定義しています。

実家(現物)を取得した相続人の相続税の課税価格は、相続財産の価額から、実際に支払った代償金の額を差し引いた金額になります。一方、代償金を受け取った相続人の課税価格は、受け取った代償金の額そのものです。

なお、代償金の額を相続財産の時価をもとに決めた場合は、代償金に「相続税評価額÷時価」の割合を掛けた金額として計算し直されます。実家の評価額と時価にずれがあるケースでは、この計算の違いが相続税額に影響するため、実際の数値を当てはめた計算は税理士に確認することをおすすめします。

「売る」前提なら継ぐ人数で損得が変わる:空き家の3,000万円控除

実家に住む予定がなく、いずれ売却する前提であれば、誰が・何人で相続するかによって使える税制優遇が変わる場合があります。代表的なのが、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例、いわゆる空き家の3,000万円特別控除です(2026年時点の制度)。

この特例には細かい要件があります。建物が昭和56年5月31日以前に建築されていること、相続開始の直前に被相続人が実際に居住していたこと(要介護認定を受けて老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の要件を満たせば対象になり得ます)、売却代金が1億円以下であること、そして相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどです。

控除額は譲渡所得から最高3,000万円ですが、2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡からは、取得した相続人の数が3人以上の場合、1人あたりの控除額の上限が2,000万円に引き下げられました。相続人が2人以下であれば、1人あたり最高3,000万円のままです。つまり、売却を前提に考えるなら、何人で実家を相続するかによって手元に残る金額が変わってくる可能性があります。耐震基準への適合や相続後の利用状況など、ほかにも要件が絡むため、適用できるかどうかは税理士に個別に確認する必要があります。

「長男だから」「同居していたから」は法的な基準ではない

「長男だから実家を継ぐのが当然」「同居していたから優先されるはず」という考え方は、実務の感覚としてはよく聞かれますが、法律上の優先順位として定められているわけではありません。相続人が配偶者と兄弟姉妹の組み合わせになる場合、民法900条に基づく法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(人数で均分)という基準があるだけで、長子かどうか、同居していたかどうかを基準にした規定はありません。

ただし、同居して親の介護をしていたという実態が、まったく考慮されないわけでもありません。被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした相続人には「寄与分」として相続分を増やす考え方があります。もっとも、これは同居していた事実だけで自動的に認められるものではなく、「特別の」貢献と評価されるだけの実態(療養看護の期間・内容など)が必要とされています。

逆に、法律が明確に線を引いている基準もあります。たとえば父母の一方だけを同じくする半血の兄弟姉妹の法定相続分は、父母の双方を同じくする全血の兄弟姉妹の2分の1と定められています。これは「長男だから」「同居していたから」といった慣習的な理屈とは別に、民法が明文で定めた基準であり、再婚家庭などで異父・異母の兄弟姉妹がいる場合は、話し合いの前提として確認しておく必要があります。

「自分が同居していたから継いで当然」という主張も、「長男だから継ぐべき」という主張も、それ単体では法的な決め手にはなりません。実家を継ぐかどうかは、こうした事情を踏まえたうえで、最終的には相続人全員の合意で決める話だと理解しておくと、話し合いの土台がぶれにくくなります。

話し合いがまとまらないとき・先延ばしにできない期限

「誰が継ぐか」で意見がまとまらない場合でも、話し合いを無期限に続けられるわけではありません。遺産分割協議がまとまらない場合、相続人の1人または複数人が、他の相続人全員を相手方として、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。申立てに必要な費用は、被相続人1人につき収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手です。

一方で、相続そのものに関する手続きには期限があります。令和6年(2024年)4月1日に施行された相続登記の申請義務化により、相続人は不動産の所有権取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務を負います。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。

「誰が継ぐか」が決まらないまま3年が過ぎそうな場合は、ひとまず簡易な「相続人申告登記」という制度で義務を履行しつつ、実質的な話し合いは並行して続けるという順番の整理も検討できます。相続人申告登記は、登記官に自らが相続人であることを戸籍の証明書等とともに申し出る仕組みで、登録免許税は不要とされています。

一方、遺産分割の結果を踏まえた正式な相続登記を申請する際の登録免許税は、原則として不動産の固定資産税評価額の0.4%です。適用の可否は司法書士に確認してください。話し合いが長引くこと自体は珍しくありませんが、期限のある手続きは別に進行している点を意識しておく必要があります。

まとめ

実家を誰が継ぐかは、長男や同居の有無といった慣習的な基準ではなく、相続人全員の合意による遺産分割協議で決まります。分け方には現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4つがあり、家を継ぐ人を選ぶ場合は代償分割、売却するなら換価分割という形になりやすく、それぞれ税金の扱いが異なります。

売却を前提にするなら、相続人の人数によって空き家の3,000万円特別控除の控除額が変わる点も、継ぐ人数を考えるうえでの材料になります。話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所の遺産分割調停という手段がありますが、相続登記の申請義務(3年以内)などの期限は話し合いの決着を待たずに進行します。

個別の遺産分割の成立可否や税額、特例の適用可否は家庭の事情によって結論が変わるため、合意形成が難しい場合は弁護士、登記は司法書士、税金は税理士への相談を検討してください。

参考文献

法務省「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」 / 京都家庭裁判所「遺産分割Q&A」 / 国税庁「No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」 / 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 / 東京法務局大阪「法定相続分とは」 / 裁判所「遺産分割調停」 / 法務省「相続登記の申請義務化について」

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カヅキ

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桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。