実家はいつ空き家になる? 対策を始めるベストタイミングと今日からできる準備
実家が空き家になるのは、親が亡くなった瞬間ではありません。入院や施設入所で家に誰もいなくなった時点から、管理の空白は始まっています。全国データと国の方針をもとに、対策を始めるべきタイミングと今日からできる準備を整理します。

この記事の目次
実家が空き家になるのは、親が亡くなった瞬間ではありません。入院や介護施設への入所で家に誰もいなくなった時点から、管理の空白はすでに始まっています。対策を始めるタイミングも、相続が発生してからではなく、親が元気で判断できるうちが望ましいというのが、国の方針が示す結論です。
その背景には、全国で空き家が増え続けている現実があります。総務省の最新調査では、空き家数は過去最多を更新しました。国土交通省も「相続が発生する前」に家族で話し合うことを後押しする仕組みを用意しています。
この記事では、実家が空き家になる典型的なきっかけと全国データ、国が示す「対策を始めるベストタイミング」、放置した場合に待っている行政措置、そして八王子市の相談窓口と今日からできる準備までを、公的資料にもとづいて整理します。
実家が空き家になるきっかけとタイミングを知る
国土交通省・総務省の基本指針では、空き家が発生する原因は半数以上が相続によるものとされています。相続が引き金になるケースが多いことは、制度の設計そのものにも表れています。
ただし実務上の流れを見ると、空き家化は相続の瞬間に突然始まるわけではありません。多くは、親が病気やけがで入院し、その後介護施設やサービス付き高齢者向け住宅へ入所することで、実家に誰も住まなくなるという段階を経ます。そのあとに親が亡くなり、相続が発生するという2段階の経過をたどるケースが典型的です。
入院や施設入所の段階では、所有者である親自身はまだ存命です。このため後述する相続登記の義務なども発生しません。しかし、郵便物が溜まり、庭の手入れが止まり、水道や電気の使用も減っていくという「管理の空白」は、この時点からすでに始まっています。対策を考えるうえで重要なのは、相続が発生した後ではなく、この管理の空白が始まる手前のタイミングをどう捉えるかという視点です。
さらに、親が一人暮らしから施設に入った直後は、まだ家の中に家具や荷物がそのまま残っている時期でもあります。この時期は本人や家族の心情的な整理がついていないことも多く、処分や売却の判断を急ぐ必要はありません。一方で、空き家としての管理(防犯・通風・郵便物の処理など)だけは、誰かが続ける必要が生じるという点は押さえておく必要があります。
全国データで見る実家の空き家化の規模
実家の空き家化は、個別の家庭だけの問題ではなく、全国的な規模で進んでいます。総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年10月1日時点)の確報集計によると、空き家数は900万2千戸と過去最多、空き家率は13.8%と過去最高を記録しました。
このうち、賃貸・売却用や別荘などの二次的住宅を除いた「その他の空き家」は385万6千戸にのぼります。実家が使われなくなったまま放置されるケースの多くは、この区分に当てはまると考えられます。2018年の前回調査と比べると36万9千戸の増加で、空き家数は1993年から2023年までの30年間で約2倍に増えました。
一貫して増加が続いているという事実は、「自分の実家だけが特別な事情で空き家になりそうだ」という状況ではなく、多くの家庭が同じ経過をたどっているということを示しています。次に、国がこの流れに対してどのような対策を促しているかを見ていきます。
対策を始めるベストタイミングは「相続後」ではなく「生前」
国土交通省・日本司法書士会連合会・全国空き家対策推進協議会は、2024年6月21日に「住まいのエンディングノート」を共同で公表しました。全国空き家対策推進協議会は1,000以上の自治体が参加する組織です。
このノートの目的は、住宅の権利情報(誰がどのように所有しているか)や、家族構成、そして将来住まいをどうしてほしいかという本人の意向を、所有者自身が生前に記録しておくことです。相続が発生した後に相続人がこのノートを参考にできるようにすることで、空き家問題の発生を予防する狙いがあります。
ここで重要なのは、国が想定している対策開始のタイミングが「相続が発生してから」ではなく、「所有者本人が存命で判断できるうちから」という点です。相続が発生してから家族間で実家の扱いを話し合おうとすると、関係者が増えて意見がまとまりにくくなったり、肝心の権利関係や本人の意向が分からなくなったりすることが少なくありません。元気なうちに家族で話す場を持つこと自体が、対策の第一歩になります。
放置した場合に待っている行政措置と税負担
対策を先延ばしにして実家が空き家のまま放置されると、どのような行政措置が待っているのでしょうか。空家等対策の推進に関する特別措置法では、管理が行き届いていない空き家を「管理不全空家等」、より危険性が高い空き家を「特定空家等」として市町村長が指導・勧告できる仕組みがあります。
勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(通常は最大6分の1に軽減される仕組み)の対象から外れ、税負担が実質的に増加します。国土交通省の調査では、改正空家法(令和5年12月13日施行)の施行後、令和6年3月31日時点までの間に、管理不全空家等に対する指導が全国で1,091件、緊急代執行が5件講じられたことが報告されています。
行政の対応は段階的に進みます。管理不全空家等に対してはまず指導が行われ、改善されなければ勧告に進みます。特定空家等の場合は、助言・指導から勧告、命令、そして行政代執行(所有者に代わって市町村が解体等を行い費用を請求する措置)へと段階が上がっていきます。命令に従わない場合は過料の対象になり得るため、指導や勧告の通知を受け取った段階で放置せず、早めに窓口へ相談することが望ましいとされています。
ここで注意したいのは、特定空家等や管理不全空家等に認定されるかどうかは、「放置してから何年経過したか」という期間だけで機械的に決まるものではない、という点です。建物の老朽化の程度や保安上の危険性など、個別の状態を市町村が判断します。「何年放置すると自動的に特定空家になる」と断定することはできませんが、放置期間が長くなるほど状態が悪化し、指導・勧告の対象になりやすくなるという方向性自体は変わりません。
八王子市で実家が空き家になりそうなときの相談先
実家が八王子市内にある場合、空き家に関する総合的な相談窓口として「住まいの活用相談所」、通称「住まカツ」が用意されています。担当部署は八王子市まちなみ整備部住宅支援課(042-620-7260)です。
市の支援制度の一つに、未耐震空き家除却支援補助金があります。2026年時点の案内では、「相続発生日から10年を経過する日の属する年度の2月末日までに取壊しを完了する場合」に活用できるとされていますが、対象となる建物の条件や補助上限は個別に確認が必要です。制度は改定される可能性があるため、利用を検討する際は市の窓口で最新の要件を確認してください。
「まだ相続は発生していないので相談するのは早い」と考える必要はありません。住まカツは相続予定者も相談対象としているため、親が入院・施設入所した段階、あるいはそれ以前の「そろそろ実家のことを考えておきたい」という段階から相談先として使うことができます。
相談の形式も電話・来店・出張から選べる窓口が用意されており、実家が遠方にある場合でも連絡だけは先に取っておくことができます。相談内容に応じて、登記であれば司法書士、税金であれば税理士、解体や売却であれば宅地建物取引業者など、必要な専門家につないでもらえる点も、早い段階で窓口を知っておく利点です。
今日からできる3つの準備
ここまでの内容を踏まえると、実家が本格的に空き家化する前にできる準備は、大きく3つに整理できます。
1つ目は、家族で話す機会をつくることです。「住まいのエンディングノート」のような記録ツールを使い、実家の権利関係や将来どうしたいかという意向を、親が元気なうちに書き残してもらうことから始められます。
2つ目は、権利関係の確認です。不動産登記法の改正により、相続で不動産を取得した人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務付けられています(2024年4月1日施行)。期限内の正式な登記が難しい場合は、「相続人申告登記」という簡易な手続きで義務を履行する方法も用意されています。正当な理由なく登記を怠ると、10万円以下の過料の対象になり得るとされているため、親が存命のうちに名義や権利関係がどうなっているかを確認しておくと、相続発生後の手続きがスムーズになります。
3つ目は、管理が手薄になった場合の当面の対応を決めておくことです。郵便物の転送・管理、庭の手入れ、水道や電気の扱いなど、入院や施設入所の段階で生じる日常的な管理をどうするかを、あらかじめ家族内で決めておくと、いざというときに慌てずに済みます。
まとめ
実家が空き家になるきっかけは、相続そのものよりも、親の入院や施設入所によって家に誰もいなくなる時点にあることが多く、対策を始めるベストタイミングは相続後ではなく生前です。国も「住まいのエンディングノート」のような仕組みを通じて、この生前からの準備を後押ししています。
放置を続けた場合の行政措置や税負担の増加は現実的なリスクですが、「何年で自動的に特定空家になる」といった断定はできません。まずは家族で話す機会を持ち、権利関係を確認し、当面の管理方法を決めておくことが現実的な一歩になります。登記や税金の具体的な判断が必要になった場合は、司法書士や税理士、八王子市であれば住まカツのような窓口に相談することをおすすめします。
参考文献
国土交通省「住まいのエンディングノートについて」 / 日本司法書士会連合会「国土交通省・全国空き家対策推進協議会と連名で『住まいのエンディングノート』を作成しました」 / 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」 / 国土交通省 報道発表資料「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針の決定について」 / 国土交通省 報道発表資料「改正空家法施行 空き家対策に新たな動き~空き家対策に取り組む全国の市区町村の状況について(令和6年3月31日時点調査)~」 / 八王子市公式ホームページ「空き家を相続した・する予定のある方へ(支援制度のご案内)」 / 法務省「相続登記の申請義務化について」
実家じまいで迷ったら
実家の片付けや相続、空き家の管理や解体など、実家じまいには多くの課題が伴います。「何から手をつければいいのかわからない」と悩むことも少なくありません。
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