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仕舞手帖 · 公開: 2026.10.08 · 7分で読めます

実家の相続、手続きの流れと期限は? 死後にやることを期限順に整理

親が亡くなったあと実家の相続に関わる手続きを、死亡届の7日以内から相続登記の3年以内まで、期限の短い順に2026年時点の公的情報をもとに整理します。

麻の葉文様風にアレンジした点と線のネットワーク模様

親が亡くなった直後は、葬儀の準備だけで手一杯になります。そこに「実家をどうするか」という相続の問題が重なり、何から手をつければいいか分からなくなる人は少なくありません。結論から言うと、死後の手続きには法律で定められた期限があり、その期限は「7日」「14日」「3か月」「10か月」「3年」という具合に段階的に訪れます。

この記事では、実家という不動産を含む相続を前提に、死亡届から相続登記までの手続きを期限が短いものから順に整理します。どこに相談すればいいか、何を準備すればいいかも合わせて確認できる内容です。なお、個別の税額や相続放棄の損得は家庭ごとの資産・負債状況によって結論が変わるため、この記事では制度の説明にとどめ、具体的な判断は専門家への相談を前提に読み進めてください。

死後の手続きには期限があり、順番を間違えると取り返しがつかない

死亡届の提出期限は「死亡の事実を知った日から7日以内」(国外で死亡した場合は3か月以内)と戸籍法第86条で定められています。正当な理由なく期限を過ぎると、戸籍法第137条により5万円以下の罰則の対象となります。

一方、相続放棄(または限定承認)の申述期限は、民法第915条により「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」です。この期間を過ぎると、原則として負債を含めた相続をすべて受け入れたことになります。

このように、実家の相続に関わる手続きには複数の期限が重なって存在します。先に短い期限を把握しておくことで、後から慌てて対応する事態を避けやすくなります。

期限を把握する目的は、脅すためではありません。葬儀の直後は気持ちの整理もつかない中で、役所・年金事務所・家庭裁判所・税務署・法務局と、窓口がいくつにも分かれた手続きを並行して進めることになります。どの手続きがいつまでか分かっているだけで、優先順位をつけやすくなります。次の章から、期限が短いものから順に確認していきます。

7日以内:死亡届を出さないと火葬・埋葬も進まない

死亡届の提出先は、死亡者の本籍地、届出人の所在地、または死亡地のいずれかの市区町村窓口です。届出人になれるのは、親族・同居者・家主・地主・家屋や土地の管理人・後見人などに限られています。

死亡届を提出しないと火葬・埋葬の許可が下りないため、実務上は葬儀日程と合わせて最優先で対応することになります。多くの場合、葬儀社が死亡診断書の受け取りから役所への提出代行まで手伝ってくれるため、まずは葬儀社に相談するのが現実的な進め方です。

八王子市では、死亡に伴う市役所内の手続きをまとめて相談できる「おくやみコーナー」を予約制で設置しています。予約時間帯は午前9時〜10時30分/10時30分〜正午/午後1時30分〜3時/午後3時〜4時30分の4枠(各枠2組・平日のみ)で、オンラインでの予約が可能です。死亡届の提出後、4〜10日程度経ってからの予約が目安とされています。

14日以内:世帯主変更・国民健康保険・年金の届出

死亡した人が世帯主だった場合は、世帯主変更届が必要になります。国民健康保険に加入していた場合は、死亡後14日以内に被保険者証を返却し、資格喪失の手続きを行う必要があります。

年金についても届出が関わります。日本年金機構にマイナンバーが収録されている受給者は、年金受給権者死亡届の提出が原則不要です。ただし、マイナンバーの収録有無にかかわらず、未支給年金(死亡した月までの年金で、まだ支払われていない分)の請求手続きは別途必要になります。

未支給年金を請求できるのは、受給者と生計を同じくしていた遺族で、配偶者・子・父母の順に優先順位があります。請求期限は、年金の支払日の翌月の初日から5年以内です。届出が必要な場合の期限は、厚生年金が10日以内、国民年金が14日以内とされています。届出が遅れて死亡日の翌日以降の年金を受け取っていた場合は、後日返還が必要になる点にも注意が必要です。

これらの届出は、おくやみコーナーのような市役所の窓口でまとめて相談できる場合が多いため、戸籍・年金・保険の担当課をあらかじめ把握しておくと移動の手間が減ります。

実家で親と同居していた家族が世帯主変更や国保の手続きを行う場合は、死亡を証明する書類(戸籍抄本や住民票の除票など)や、窓口に来る本人の確認書類が必要になるのが一般的です。必要書類は自治体によって細部が異なるため、来庁前に電話で確認しておくと二度手間を避けられます。

3か月以内:実家を含めて「相続するか放棄するか」を決める期限

相続放棄・限定承認の申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。3か月以内に必要なのは「申述」であり、その後の審理に時間がかかっても問題はないとされています。

ここで重要なのは、実家の資産価値と負債(借金や未払いの税金など)の両方を、この期間内にできる範囲で把握しておくことです。実家に住宅ローンの残債が残っていないか、固定資産税の未払いがないかといった点は、相続するかどうかの判断材料になります。

実家が遠方にある場合や、相続人が複数の地域に分かれて暮らしている場合、3か月という期間は想像以上に短く感じられることがあります。財産調査に時間がかかりそうだと分かった時点で、家庭裁判所に申し立てることで、熟慮期間の伸長(延長)が認められることがあります。判断に迷う場合は、早めに司法書士や弁護士に相談することが実務上の対応になります。

相続放棄を申述する際の費用は、申述人1人につき収入印紙800円と、連絡用の郵便切手です。郵便切手の金額は申述先の家庭裁判所によって異なるため、事前に確認が必要です。

負債の全容がはっきりせず「プラスの財産が残る可能性もゼロではない」という状況では、相続で得たプラスの財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ「限定承認」という第三の選択肢もあります。ただし限定承認は相続人全員が共同で申述する必要があり、1人でも反対すれば選べないため、実務上のハードルは相続放棄より高くなります。

10か月以内:相続税の申告・納付、3年以内:実家の相続登記

相続税の申告・納付期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」です。申告期限と納付期限は同日のため、申告と同時に納税も行う必要があります。原則として、この期限の延長はできません。

相続税の申告が必要になるのは、相続や遺贈によって取得した財産の価額の合計額が、遺産に係る基礎控除額を超える場合です。基礎控除額の具体的な計算や、実家を含めた財産評価で申告が必要になるかどうかは、個別の資産構成によって結論が変わるため、税理士への確認が欠かせません。

実家という不動産に関しては、相続登記にも期限があります。令和6年(2024年)4月1日に施行された制度により、相続人は不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をする義務があります。正当な理由なく怠った場合は、10万円以下の過料の対象となります。この過料は行政上の秩序罰であり、刑事罰とは異なります。

施行日(2024年4月1日)より前に発生していた相続も義務化の対象です。この場合は、令和9年(2027年)3月31日までに登記をする必要があります。相続登記を申請する際の登録免許税は、原則として不動産の固定資産税評価額の0.4%です。

課税標準に1,000円未満の端数がある場合は切り捨て、算出した税額に100円未満の端数がある場合も切り捨てとなります。期限内に正式な相続登記の申請が難しい場合は、戸籍の証明書等を添えて登記官に自らが相続人であることを申し出る「相続人申告登記」という簡易な制度もあり、この場合の登録免許税は不要です。八王子市内の不動産であれば、登記事務は東京法務局八王子支局が管轄しています。

相続税の申告と相続登記は、どちらも「相続があったことを知った日」が起算点になる点は共通していますが、期限の長さが10か月と3年で大きく異なります。相続税の申告を終えたからといって相続登記まで済んだとは限らないため、両方の期限を別々に管理しておく必要があります。

遺産分割協議に期限はないが、早く始めるべき理由

ここまで見てきた期限の中に、遺産分割協議そのものの期限は含まれていません。遺産分割協議には法律上の期限がなく、相続人全員が納得できるまで話し合いを続けることができます。

しかし、分割協議が終わらないまま相続税の申告期限(10か月)を迎えることは珍しくありません。この場合は「未分割」の状態で一旦申告し、分割が決まった後に修正するという対応が必要になることがあります。未分割のままだと、小規模宅地等の特例のように適用できなくなる税制上の特例もあるため、早めに話し合いを始めること自体に意味があります。

前の章で触れた相続人申告登記も、あくまで義務を履行するための簡易な手段にすぎません。この制度は不動産についての権利関係を公示するものではないため、実家を売却したり抵当権を設定したりする場合には、別途正式な相続登記の申請が必要になります。

死亡届の7日以内から相続登記の3年以内まで、実家の相続に関わる手続きは期限の長さがそれぞれ異なります。すべてを一人で抱え込む必要はなく、相続登記に関する判断は司法書士、相続税に関する判断は税理士、相続人同士で意見が分かれる場合は弁護士、介護や施設入所と並行して進める場合は地域包括支援センターのケアマネジャーといった専門家の窓口が用意されています。

どの手続きも、まずは期限の短いものから一つずつ片付けていくことが、実家の相続を乗り切るための現実的な進め方です。期限ごとに「誰に相談するか」までセットで把握しておけば、実家をどうするかという本題にも落ち着いて向き合えるようになります。

参考文献

法務省「死亡届」 / 八王子市公式ホームページ「死亡に伴う各種手続きについて(おくやみコーナー)」 / 日本年金機構「年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか。」 / 裁判所「相続の放棄の申述」 / 国税庁タックスアンサー「No.4205 相続税の申告と納税」 / 法務省「相続登記の申請義務化について」 / 法務省「相続人申告登記について」

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カヅキ

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桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。