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仕舞手帖 · 公開: 2026.10.14 · 9分で読めます

実家がゴミ屋敷になってしまったら? 片付けの進め方と行政・専門業者への相談先

実家がゴミ屋敷状態になってしまう背景と、自分たちで片付ける手順・安全上の注意、業者に依頼する場合の費用相場と悪徳業者の見分け方、八王子市の行政相談窓口までを公式情報にもとづいて整理します(2026年時点)。

天日に干される黄色い絹糸の束

久しぶりに訪れた実家の中が、足の踏み場もないほど物であふれていた——。そんな状態を目の当たりにして、どこから手をつければいいのか分からず立ち尽くしてしまう人は少なくないのではないでしょうか。

結論から言うと、ゴミ屋敷状態の実家に向き合うときにまず押さえておきたいのは「叱る・急がせる」のではなく「原因を理解したうえで、自力で進められる部分と、行政や専門業者に頼むべき部分を分ける」という順序です。ゴミ屋敷化の背景には、単なる無精ではなく、心身の状態や孤立といった事情が関わっていることが少なくありません。

また、片付けには自治体のごみ出しルールという制度上の制約があり、物量が多い場合は専門業者への依頼も検討の対象になります。行政側にも「ごみ屋敷条例」という形で対応の仕組みが整えられてきており、家族だけで抱え込む必要はありません。

本記事では、実家がゴミ屋敷になる背景、自治体の条例による対応、放置した場合のリスク、自分たちで片付ける場合の手順と安全上の注意、業者に依頼する場合の費用相場と悪徳業者の見分け方、そして一人で抱え込まずに相談できる窓口を順に整理します。

実家がゴミ屋敷になる背景 — 片付けられないのには理由がある

実家がゴミ屋敷状態になっている場合、まず知っておきたいのは「本人の意志の弱さ」だけが原因ではないケースが多いという点です。

社会福祉法人恩賜財団済生会の解説によると、セルフ・ネグレクト(自己放任)は「食事や着替え、病気の治療など本来生活の中で行なうべき行為をしない、あるいはできないために、心身の安全や健康が脅かされる状態」と定義されています。物をため込む行動障害(通称ごみ屋敷症候群)は、社会的孤立・一人暮らし・進行性の認知症と関連していると説明されており、片付けられないことそれ自体が、本人の生活状態を示すサインになっている場合があります。

この見方は、行政の調査データとも重なります。総務省行政評価局が2024年8月28日に発表した「ごみ屋敷」対策に関する調査結果報告書では、居住者の課題を分析できた181事例のうち、健康面・経済面の両方に課題があったケースが37%、健康面のみの課題があったケースが31.5%にのぼりました。つまり多くの事案で、片付けの問題の背後に健康や経済面の困難が存在しているということです。

実家をゴミ屋敷にしてしまった親を前にしたとき、「どうしてこんな状態になるまで放っておいたのか」と問い詰めるのではなく、「何か困っていることがあるのではないか」という視点を持つことが、その後の対応をスムーズにする第一歩になります。

自治体も動く「ごみ屋敷条例」— 八王子市の仕組み

ゴミ屋敷状態への対応は、家族だけの問題として抱え込まなくてもよい場合があります。多くの自治体が、行政として介入できる条例を整備しているためです。

八王子市は平成31年(2019年)4月1日に「八王子市住居等における物の堆積等に起因する不良な生活環境の改善に関する条例」を施行し、関連して「八王子市廃棄物の処理及び再利用の促進に関する条例」も改正しました。この条例により、市は居住者の親族関係や福祉サービスの受給状況等を調査することができるようになり、調査結果をもとに関係部署が改善を検討・協議する「対策会議」を開く仕組みが設けられています。

重要なのは、この条例が単なる取り締まりではなく、福祉的な支援と組み合わせて運用される点です。居住者本人に片づける意思があっても自力では実行できない場合、行政が片づけを支援できる仕組みが用意されており、既存の保健福祉サービスと組み合わせて改善に取り組むことになっています。

ただし、総務省の同調査では、ごみ屋敷対応を目的とした条例を制定している市区町村は全国1,741市区町村のうち101(5.8%)にとどまっており、すべての自治体に同様の仕組みがあるわけではありません。実家が八王子市以外にある場合は、その自治体のホームページで条例の有無を確認することをおすすめします。

放置するとどうなるか — 火災・悪臭・再発のリスク

ゴミ屋敷状態をそのままにしておくことには、見た目の問題だけでなく、具体的なリスクが伴います。

総務省の調査(対象は人口10万人以上の市・特別区30市区、調査期間は2022年10月から2024年8月まで)によれば、把握した延べ2,339事案のうち、2024年8月時点で未解消のまま残っている事案が913事案(約39%)ありました。さらに、火災発生のおそれがあるとされた事案が103事例(56.9%)、悪臭の発生が94事例(51.9%)、害虫等の発生が86事例(47.5%)に達しています。半数以上の事案で火災や悪臭のリスクが指摘されているという事実は、ゴミ屋敷が本人だけの問題ではなく、近隣への影響も伴う問題であることを示しています。

もう一つ注目したいのは、対応体制と解消率の関係です。同調査では、複数の部署が連携して対応した事案の解消率は36.4%だったのに対し、単独部署のみで対応した事案の解消率は26.1%にとどまりました。片付けだけを単発で済ませても、背景にある生活上の課題が解決していなければ再発しやすいことがうかがえます。実際に、解消した事案のうち再発の可能性があるとされた事案は3割にのぼっています。

これらの数字は、「一度きれいに片付ければ終わり」ではなく、片付けと同時に本人の生活状況そのものに目を向ける必要があることを示唆しています。

自分たちで片付ける場合の手順と安全上の注意

物量がそれほど多くなく、家族だけで対応できる見込みがある場合は、自分たちで片付けを進める選択肢もあります。その際に確認しておきたい制度面と安全面のポイントを整理します。

八王子市の粗大ごみは、インターネット(24時間365日受付)または電話(ナビダイヤル0570-550-530、平日8時30分から17時15分まで)で申し込みます。1回の申し込みで出せるのは最大10個までと定められているため、物量が多い実家の片付けでは、何度かに分けて申し込む前提で計画を立てる必要があります。

分別については、環境省が家庭ごみを「可燃ごみ」「不燃ごみ」「資源ごみ」「その他ごみ」の4分類に整理する考え方を紹介しています。素材の9割が同じ分類であれば、1割程度異なる素材が付いていても主流の分類で出せる「9割ルール」も案内されており、分別に迷う雑多なものが多いゴミ屋敷の片付けでは、この基準を目安にすると作業が進みやすくなります。

安全面では、体調管理への注意が欠かせません。東京消防庁の統計によると、令和7年(6月から9月)の都内における熱中症による救急搬送人員は過去最多の9,125人で、65歳以上の高齢者が52%超を占めました。発生場所別では「住宅等居住場所」が全体の36.0%を占めて最多となっています。これは片付け作業中に限定した数値ではありませんが、換気の悪い部屋での長時間作業がリスクを伴うことを示す裏付けとして、こまめな休憩と水分補給、作業時間を区切ることを心がけてください。特に物量が多く長期化しやすいゴミ屋敷の片付けでは、無理に一度で終わらせようとしないことが重要です。

業者に依頼する場合の費用相場と悪徳業者の見分け方

自分たちだけでは対応が難しいと判断した場合、専門業者への依頼も検討の対象になります。その際に知っておきたい費用の目安と、業者選びで確認すべき点を整理します。

事業者サイトが示す目安によると、特殊清掃のみを依頼する場合の料金は、1R(軽度の汚染)で6万円程度から、1LDKで10万円から25万円程度、3DKから4LDK以上では20万円から50万円以上が目安とされています。特殊清掃と遺品整理(家財撤去)をあわせて依頼する場合は、1R・1Kで9万円から17万5千円程度、3LDKで23万円から59万5千円程度が目安とされており、物量・汚染の程度によって幅があります。これらはあくまで一事業者が示す目安であり、実際の金額は現地見積もりで確認する必要があります。

業者選びで特に注意したいのが、許可の確認です。国民生活センターは2025年10月30日配信の見守り情報で、不用品を廃棄物として回収する事業者には市町村長の「一般廃棄物処理業の許可」が必要であり、遺品を買い取る事業者には別途「古物商の許可」が必要だと注意を呼びかけています。この二つは別の制度であり、片付けだけを依頼するつもりなのに買取業者に声をかけてしまうといった取り違えが起こりやすい点です。

複数の事業者から見積もりを取り、作業日・作業内容・料金・支払方法・解約料を事前に確認したうえで、追加料金が発生する条件も確認しておくことが、トラブルを避ける基本的な進め方になります。市町村の窓口に事業者の許可状況を照会できる場合もあるため、依頼前に一度確認しておくと安心です。

一人で抱え込まない — 相談できる窓口

ここまで見てきたように、実家のゴミ屋敷問題は片付けの技術だけでなく、本人の生活状況や健康面とも関わっています。家族だけで解決しようとせず、早い段階で相談窓口を利用することが、結果的に負担を減らすことにつながります。

八王子市には、介護・福祉・健康・医療の面から総合的に相談できる「高齢者あんしん相談センター(地域包括支援センター)」が市内21圏域に21か所設置されています。認知症に関する相談や、人権・財産保護、消費者被害の防止に関する相談も受け付けており、相談は無料です。代表の問い合わせ先は福祉部高齢者福祉課(地域包括担当)042-620-7244です。

また、ごみ屋敷条例に基づく相談は環境部が窓口となっており、042-620-7458で受け付けています。親族として「片付けさせたいが、本人だけでは難しそうだ」と感じた時点で、どちらの窓口に連絡しても、状況に応じて適切な部署につないでもらえます。行政が関わることに抵抗を感じる人もいますが、条例に基づく対応は福祉的な支援とセットで運用される仕組みであり、罰則だけを目的としたものではありません。

実家が八王子市以外にある場合も、多くの自治体で同様の高齢者相談窓口や環境部門の相談窓口が用意されています。まずは自治体の公式サイトで、ごみ屋敷対策や地域包括支援センターの情報を確認してみてください。

まとめ

実家がゴミ屋敷になる背景には、セルフ・ネグレクトや孤立といった、本人だけでは解決しにくい事情が関わっていることが少なくありません。行政調査でも、健康面・経済面の両方に課題があるケースが4割近くを占めており、片付けの問題は生活状況全体の問題として捉える必要があります。

放置すれば火災・悪臭・再発といったリスクが伴う一方、八王子市のように条例で福祉的支援と組み合わせた対応の仕組みを整えている自治体もあります。自分たちで片付けられる範囲は自治体のごみ出しルールと安全面に注意しながら進め、物量が多い場合や許可の確認が必要な場面では専門業者への依頼を検討してください。そして、何より一人や一家族だけで抱え込まず、地域包括支援センターや自治体の相談窓口を早めに利用することが、状況を悪化させずに前に進める近道になります。

参考文献

社会福祉法人恩賜財団済生会「気づいたら親が『セルフ・ネグレクト』に?『孤立死』や『ごみ屋敷』に至る前に対策を」 / 総務省行政評価局「『ごみ屋敷』対策に関する調査結果報告書」 / 八王子市「いわゆる『ごみ屋敷条例』の制定と関連条例の改正について」 / 八王子市「八王子市高齢者あんしん相談センター(地域包括支援センター)」 / 八王子市「粗大ごみの収集」 / 環境省 ecojin「ごみ出しのコツをつかんで楽しく分別しよう!」 / 東京消防庁「熱中症に注意」統計ページ / 遺品整理相談所「特殊清掃の費用相場と内訳を解説」 / 国民生活センター「見守り情報」2025年10月30日配信

実家じまいで迷ったら

実家の片付けや相続、空き家の管理や解体など、実家じまいには多くの課題が伴います。「何から手をつければいいのかわからない」と悩むことも少なくありません。

一般的には、まずは実家がいくらで売れるか、無料の一括査定サービスなどを利用して市場価値を調べておくことが最初の一歩になります。

※現在、桑都手帖では実家じまいに役立つ提携サービス(一括査定・解体見積もりなど)の導入準備を進めています。準備が整い次第、こちらで推奨窓口をご案内いたします。

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。