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仕舞手帖 · 公開: 2026.09.08 · 更新: 2026.09.14 · 7分で読めます

ボロボロの実家は売れる? 老朽化した空き家の売却可能性と選択肢

老朽化・腐朽破損が進んだ実家でも売却できるのか、公的統計をもとに実態を整理し、古家付き土地・更地・買取という選択肢の使い分けと専門家への相談先を解説します。

にぎわうアーケード商店街の通り

「うちの実家はもうボロボロだから、売ろうにも誰も買わないのでは」。実家じまいを考え始めた人から、こうした声をよく聞きます。結論から言うと、老朽化が進んだ実家でも売却できる可能性は十分にあります。理由は、買取や古家付き土地といった仕組みが「建物の傷み」ではなく「土地の価値」を軸に取引を成立させているためです。

この記事では、老朽化した実家がどの程度「珍しくない」状態なのかを公的統計で確認したうえで、古家付き土地・更地・買取という選択肢の違いと、老朽物件ならではの税制上の注意点、相談先までを整理します。個別の税額や制度の適用可否は事情によって変わるため、判断が必要な箇所は専門家への相談導線もあわせて案内します。

老朽化した実家でも売却は可能か

国土交通省の「令和元年空き家所有者実態調査」(令和2年12月公表)は、この不安に一つの目安を与えてくれます。この調査は全国12,151世帯を対象に令和元年11月から令和2年1月にかけて実施され、5,791世帯から有効回答を得たものですが、その結果によると、空き家全体の5割超に腐朽・破損があると報告されています。

さらに、別荘や賃貸用・売却用として管理されている空き家を除いた「その他の空き家」、つまり相続後に住む人がいないまま残されているようなケースに限ると、腐朽・破損がある割合は6割を超えます。つまり、老朽化した実家は例外的な存在ではなく、空き家になった実家のむしろ多数派に近い状態だということです。

「ボロボロだから売れない」と決めつける前に知っておきたいのは、不動産の取引には建物をリフォームして住む前提の売買だけでなく、建物の資産価値をほぼゼロとみなし、土地そのものの価値で取引する方法があるという点です。老朽化の程度によって、選ぶべき売り方が変わってくると考えると、次に進めやすくなります。

背景として、空き家そのものが増え続けているという事情もあります。総務省統計局の「令和5年(2023年)住宅・土地統計調査」によれば、全国の空き家数は約900万戸、総住宅数に占める空き家率は13.8%で、いずれも過去最高を更新しました。国と総務省の推計では、令和7年(2025年)時点で約4.2百万戸となっている「その他の住宅」区分の空き家が、令和12年(2030年)には約4.7百万戸まで増加すると見込まれています。老朽化した実家が増えているのは、あなたの家だけの事情ではなく、全国的な傾向の一部だといえます。

老朽化の度合いで変わる売り方(古家付き土地・更地・買取)

老朽化した実家を手放す方法は、大きく分けて「古家付き土地として売る」「解体して更地で売る」「買取業者に売る」の3通りがあります。どれを選ぶかは、建物の傷み具合と、税制上の条件によって左右されます。

ここで押さえておきたいのが、相続した実家の譲渡所得3,000万円特別控除です。この特例は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物を除く)を対象とし、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9年(2027年)12月31日までに譲渡した場合に適用され得るものです。老朽化した実家は、この「昭和56年5月31日以前」という要件に該当することが多く、特例の対象になり得る点は見逃せません。

ただし、この特例を使うには、譲渡前または譲渡後の一定期間内に耐震改修または解体を行うことが条件になります。令和6年(2024年)1月1日以降の譲渡分からは要件が拡充され、売主側が改修・解体を行っていなくても、買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修工事または取り壊しを行えば対象に含まれるようになりました。これにより、古家付きのまま「買主側で解体してもらう」前提の売却でも、特例の対象に入る道が広がったことになります。

古家付き土地のまま売る場合は、解体費用(一般的に数十万円〜200万円程度とされる)をかけずに済み、建物が建っている間は固定資産税の住宅用地特例が続く点がメリットです。一方、更地にすれば買い手の選択肢が広がりやすい半面、解体費用の負担と、住宅用地特例が外れることによる固定資産税の上昇リスクが生じます。どちらが有利かは、建物の傷み具合・立地・買い手の需要によって変わるため、実際に複数の不動産会社へ査定を依頼し、古家付きと更地それぞれの想定価格を比較してから判断するのが現実的です。特例の適用可否は個別事情によって変わるため、最終的な判断の前に税理士へ確認することをおすすめします。

実家の老朽化・耐震性は珍しいことではない

老朽化した実家を持つ人が不安に感じやすいのが、地震などへの耐性です。ここでも、国土交通省の推計データが参考になります。全国の住宅耐震化率は令和5年(2023年)時点で約90%と推計されており、総住宅戸数約5,570万戸のうち、耐震性が不十分な住宅は約570万戸、割合にして約1割にのぼります。

さらに、住宅の種類別に見ると差が明確になります。共同住宅(マンション等)の耐震化率が96%であるのに対し、一戸建ての耐震化率は85%にとどまります。実家として想定される戸建て住宅は、耐震性が不十分な住宅の集積先になりやすい種別だということです。なお、この耐震化率は2018年(平成30年)時点の87%から2023年にかけて3ポイント上昇しており、改修や建て替え、除却によって少しずつ改善が進んでいる局面にあります。

耐震性が不十分だからといって、その家に価値がないわけではありません。前述のとおり、老朽化した実家は買取や古家付き土地としての売却対象になり得ますし、耐震診断や補強工事によって特例の対象に含められる場合もあります。まずは「うちの実家だけが特別にひどい状態」と思い込まず、老朽化・耐震性不足は多くの実家に共通する課題だと捉えることが、次の一歩を踏み出しやすくします。

老朽物件でも動く売却チャネル(買取・古家付き土地)

老朽化した実家を実際に動かす手段として代表的なのが、不動産会社による買取です。買取業者の多くは、物件を取得したあとにリフォームや解体・造成を行って再販する前提でビジネスを行っているため、建物が古く傷んでいても「再販できる土地かどうか」という視点で査定を行います。目安として、買取価格は仲介で売却した場合の相場の約7割程度になるとされていますが、これは仲介で見つかる買い手を探す手間や時間を省ける対価と考えることもできます。

ただし、買取業者であっても、立地条件が悪い(駅から遠い、接道条件が悪いなど)、老朽化の程度が著しいといった理由で、取り扱いそのものを断られるケースがあります。これは、再販の見込みが立たない物件はリスクが高く、買取業者にとっても引き受けにくいためです。1社に断られたからといって「どこにも売れない」と判断せず、複数の買取業者や不動産会社に査定を依頼して比較することが基本になります。

このほか、自治体が運営する空き家バンクを通じて、古い家を「そのまま使いたい」という個人や事業者とマッチングする方法もあります。空き家バンクは買取業者とは異なる需要層にアプローチできる仕組みですが、成約までの期間や条件は自治体・登録状況によって差があるため、利用を検討する際は各自治体の窓口に個別に確認する必要があります。

なお、老朽化が著しく買取・空き家バンクのいずれでも動かない場合は、解体してから土地として売り出す選択肢も残ります。解体費用は建物の構造・広さ・立地によって幅がありますが、更地にすれば買い手の対象を「新築を建てたい層」まで広げられる点はメリットです。一方で、解体には数十万円から百万円を超える費用がかかることもあり、固定資産税の住宅用地特例が外れて土地の税負担が上がる可能性もあるため、解体してから売るか、古家付きのまま買取・空き家バンクに出すかは、費用と時間の両面から比較して決めることになります。

売却前に確認すべきことと専門家への相談先

老朽化した実家を売却する前に、まず確認したいのが自治体の支援制度です。八王子市では、前述の3,000万円特別控除の対象外となる、昭和56年5月31日以前建築の木造一戸建てのうち、耐震診断によって耐震性なしと判定された住宅について、相続発生から10年以内に取り壊すことを条件に、解体費用の一部を補助する「未耐震空き家除却支援補助金」を設けています。老朽化した実家が対象になり得るかどうかは、まず耐震診断を受けてみないと分からない部分もあるため、早めに窓口へ相談しておくと選択肢を把握しやすくなります。

八王子市には「住まいの活用相談所(住まカツ)」という相談窓口もあり、AIシミュレーションツール「すまいの終活ナビ」を使うと、解体費用や売却相場の目安をおおまかに試算できます。売却・解体だけでなく、賃貸や活用の相談にも対応しているため、「老朽化しているけれど、まだ売るか活用するか決めていない」という段階でも利用しやすい窓口です。制度の詳細や最新の受付状況は年度によって変わることがあるため、申請を検討する際は八王子市住宅支援課へ直接問い合わせて最新情報を確認することをおすすめします。

売却の実務を進めるうえでは、相談先を分けて考えることも大切です。特例の適用可否や税額の計算は税理士、相続登記がまだ済んでいない場合は司法書士、耐震診断や解体の要否は建築士や解体業者、遺産分割で意見がまとまらない場合は弁護士というように、それぞれ専門分野が異なります。老朽化した実家だからこそ「一社に相談してすぐ諦める」のではなく、複数の窓口・複数の業者を比較しながら、自分の実家に合った売り方を見つけていくことが、後悔の少ない実家じまいにつながります。

参考文献

実家じまいで迷ったら

実家の片付けや相続、空き家の管理や解体など、実家じまいには多くの課題が伴います。「何から手をつければいいのかわからない」と悩むことも少なくありません。

一般的には、まずは実家がいくらで売れるか、無料の一括査定サービスなどを利用して市場価値を調べておくことが最初の一歩になります。

※現在、桑都手帖では実家じまいに役立つ提携サービス(一括査定・解体見積もりなど)の導入準備を進めています。準備が整い次第、こちらで推奨窓口をご案内いたします。

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。