相続登記の義務化はいつから? 過去の相続も対象になる期限と罰則を整理
相続登記の申請義務化がいつ始まり、何年も前に相続した実家も対象になるのか、期限と罰則、期限内に動けない場合の対処法を2026年時点の公的情報で整理します。

この記事の目次
実家の相続登記は、今は「やらなくても特に困らない」手続きではありません。2024年4月1日から相続登記の申請が法律上の義務になり、期限内に行わないと過料の対象になり得ます。さらに注意したいのは、この義務が施行日より前に発生していた相続にも遡って適用される点です。つまり、何年も前に亡くなった親の実家の名義を変えずに放置している場合も、対象になっている可能性があります。
この記事では、義務化がいつから始まったのか、自分のケースが対象になるのか、期限に遅れたときの扱い、期限内に動けない場合の対処法までを、法務省の公的情報にもとづいて整理します。実家の名義が今どうなっているか分からないという人ほど、早めに確認する価値があります。
相続登記の義務化はいつから? 2024年4月1日施行の制度の全体像
相続登記の申請義務化は、不動産登記法の改正(令和3年法律第24号)により、令和6年(2024年)4月1日から施行されました。それまでは相続した不動産の名義変更(相続登記)は法律上の義務ではなく、手続きをしなくても罰則はありませんでした。
この制度が創設された背景には、所有者不明土地問題があります。国土交通省の調査では、登記簿だけでは所有者の所在が判明しない土地が全国の23%に及ぶとされており、その発生原因の63%が「相続時に登記の名義変更が行われないこと」とされています。所有者が分からない土地が増えると、周辺の管理不全や、災害復旧・公共事業のための用地交渉が難しくなるといった支障が生じます。
相続登記義務化は、こうした所有者不明土地の発生を予防するための制度として位置づけられています。実家という身近な不動産も、この制度の対象から外れるわけではありません。
なお、不動産登記制度の見直しはこの一度だけで終わっていません。相続登記の義務化に続き、令和8年(2026年)4月1日からは、不動産の所有権登記名義人が氏名や住所を変更した場合に変更登記を申請する義務も始まっています。相続による名義変更だけでなく、登記名義人の情報そのものを最新の状態に保つことが、不動産登記制度全体の方向性になっています。
何年も前に相続した実家も対象? 過去の相続への遡及適用と期限
義務化の内容を具体的に見ると、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務があります。遺産分割協議が成立した場合は、その成立日から3年以内に、分割の内容を反映した登記を申請する追加の義務も生じます。
ここで気になるのが、2024年4月1日より前に発生していた相続の扱いです。法務省の案内によれば、施行日より前に発生していた相続についても義務化の対象となり、この場合は令和9年(2027年)3月31日までに登記をする必要があります。不動産の取得を2024年4月以降に知った場合は、その日から3年以内が期限になります。
つまり「何年も前に相続して、名義変更をしていない実家がある」という状態は、すでに義務化の対象になっている可能性が高いということです。たとえば親が10年以上前に亡くなり、実家の名義が今も親のままになっている場合も、施行日前の相続として令和9年(2027年)3月31日という期限の対象になります。心当たりがある場合は、まず自分のケースがどちらの期限に当てはまるのかを確認することが最初の一歩になります。判断に迷う場合は、相続登記を専門に扱う司法書士への相談が適しています。
親名義の不動産が実家以外にもあるかどうかはっきりしない場合は、令和8年(2026年)2月2日に始まった「所有不動産記録証明制度」が手がかりになります。これは、特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を全国の登記データから一覧化し、証明書として交付する制度です。請求できるのは登記名義人本人、その相続人その他の一般承継人、および代理人で、書面請求の場合は検索条件1件・証明書1通あたり1,600円の手数料がかかります。相続登記の対象をもれなく把握する手段として活用できます。
相続登記をしないとどうなる? 売却や担保設定の前提が整わない
相続登記を済ませていない不動産は、法律上の所有者が登記簿上で明確になっていない状態が続きます。実家を売却しようとしても、買主や仲介業者からすれば、売る権限が誰にあるのかが登記簿上で確認できないため、通常の不動産取引の手順を進めることができません。
同様に、実家を担保に入れて融資を受けようとする場合も、抵当権の設定登記をするためには、その前提として所有者を明らかにする相続登記が必要になります。義務化によって過料の対象になるかどうかとは別に、相続登記は実家を「使える資産」として動かすための入口になっているといえます。
期限に遅れたらどうなる? 10万円以下の過料と「正当な理由」の範囲
期限内に相続登記を申請しなかった場合、正当な理由がないのに義務を怠ったと判断されると、10万円以下の過料の対象となり得ます。過料は行政上の秩序罰であり、刑事罰(前科がつくもの)とは異なります。
実際の運用としては、登記官がまず催告を行い、それでも正当な理由なく期間内に申請がされない場合に、地方裁判所へ通知するという流れになります。いきなり過料が科されるわけではなく、催告の段階で対応すれば問題を回避できる余地があります。
法務省は「正当な理由」の例として、相続人が極めて多数で戸籍の収集や相続人の特定に時間を要する場合、遺言の有効性や遺産の範囲が争われている場合、申請義務を負う人自身が重病である場合、DV被害者等で避難を余儀なくされている場合、経済的困窮により登記費用を負担できない場合を挙げています。
こうした事情がある場合は、自己判断で放置するのではなく、司法書士や法務局の窓口に早めに相談し、状況を伝えておくことが望ましいとされています。
期限内に正式な登記が難しいときは「相続人申告登記」で義務を履行できる
相続人が複数いて話し合いがまとまらない、必要な戸籍の収集に時間がかかるなど、3年以内に正式な相続登記を終えるのが難しい事情は少なくありません。そのために設けられたのが「相続人申告登記」という簡易な制度です。
相続人申告登記は、戸籍の証明書等を添付して、登記官に対し自らが登記記録上の所有者(被相続人)の相続人であることを申し出ることで、相続登記の申請義務を履行したことにする仕組みです。押印や電子署名は不要で、特定の相続人が単独で申出をすることもできます。登録免許税もかかりません。
正式な相続登記では法定相続人の範囲を確定させるために戸籍を広く収集する必要がありますが、相続人申告登記はその範囲を確定させる必要がない点が大きな違いです。自分が相続人の一人であることを示す戸籍があれば申出ができるため、相続人が多数で全員の特定に時間がかかっているケースでも、まず義務だけを先に履行しておくという使い方ができます。
ただし注意点もあります。相続人申告登記は不動産の権利関係そのものを公示するものではないため、相続した実家を売却したり、抵当権を設定したりする際には、別途正式な相続登記の申請が必要になります。また、遺産分割が成立した場合に生じる追加の登記義務は、相続人申告登記では履行したことになりません。あくまで「期限内に義務だけは果たしておく」ための暫定的な手段として理解しておく必要があります。
登記にかかる費用と、八王子市で相談できる窓口
相続登記を申請する際には、登録免許税がかかります。原則として、不動産の固定資産税評価額の0.4%が税率です。たとえば固定資産税評価額が1,000万円の実家であれば、登録免許税の目安は0.4%にあたる4万円になります。実際の税額は評価額の端数処理等によって変わるため、あくまで概算として参考にしてください。
一方で、一定のケースでは登録免許税が免税になる措置も設けられています。法務局の案内によれば、相続人が相続登記を受ける前に死亡したケース、または土地の価額が100万円以下のケースについては、申請書に根拠となる租税特別措置法の条項を記載することで、令和9年(2027年)3月31日まで登録免許税が免税となります。記載を忘れると免税を受けられないため、該当する可能性がある場合は司法書士や法務局の窓口で確認するのが確実です。
八王子市内の不動産の相続登記は、東京法務局八王子支局が担当しています。所在地は〒192-0046 東京都八王子市明神町4-21-2 八王子地方合同庁舎1階・2階、電話は042-631-1377です。固定資産税に関する問い合わせは、八王子市財務部資産税課(042-620-7251)が窓口になります。登記そのものの手続きと税金の問い合わせ先が分かれている点は、覚えておくと窓口を往復する手間を減らせます。
まとめ
相続登記の申請義務化は2024年4月1日に始まった制度ですが、施行日より前に発生していた相続にも遡って適用され、令和9年(2027年)3月31日という期限が設けられています。期限を過ぎても正当な理由があれば過料を回避できる余地はありますが、放置してよい理由にはなりません。
実家の名義変更をまだ済ませていない場合は、まず自分のケースがいつまでの期限に当てはまるのかを確認し、正式な登記が難しい事情があるなら相続人申告登記という選択肢も含めて、早めに司法書士や東京法務局八王子支局に相談することをおすすめします。個別の税額や免税の適用可否は事情によって変わるため、この記事の内容はあくまで制度の概要としてご参照いただき、具体的な判断は専門家の確認を経てから進めてください。
参考文献
法務省「相続登記の申請義務化について」 / 法務省「住所等変更登記の義務化について」 / 法務省「相続人申告登記について」 / 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」 / 東京法務局「八王子支局」
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