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仕舞手帖 · 公開: 2026.10.09 · 7分で読めます

実家の相続、兄弟の「割合」で揉める理由とは? 法定相続分の仕組みと揉めない進め方

実家の相続で兄弟姉妹の取り分(割合)がどう揉めやすくなるのか、法定相続分の基本と、割合どおりに分けられなくなる要因を2026年時点の公的情報で整理します。

漢字の刻まれた風化した石碑のクローズアップ

「実家の相続で兄弟と揉めた」という話の多くは、取り分の割合そのものが決まっていないことが原因ではありません。割合を決める基準(法定相続分)は民法で明確に定められています。揉めるのは、実家という不動産がその割合どおりに物理的に分けられない財産だからです。

この記事では、兄弟姉妹が相続人になる場合の法定相続分の基本、割合どおりに分けるのが難しくなる理由、割合の計算がずれる要因(特別受益・寄与分)、そして揉めそうなときに利用できる手続きを、法務省・裁判所の公的情報にもとづいて整理します。個別の相続分の計算や、特別受益・寄与分が認められるかどうかは各家庭の事情によって結論が変わるため、この記事では制度の説明にとどめます。

法定相続分の基本:兄弟で実家を相続するときの「割合」はどう決まるか

実家の相続人が「配偶者と兄弟姉妹」という組み合わせになる場合、民法900条に基づく法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。兄弟姉妹が複数人いる場合は、その4分の1をさらに人数で均等に分けます。

たとえば配偶者と兄弟姉妹2人が相続人になる場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹2人がそれぞれ8分の1を受け取る計算になります。配偶者がおらず兄弟姉妹のみが相続人になる場合は、遺産の全部を兄弟姉妹の人数で均等に分けます。

ここで見落とされやすいのが、半血の兄弟姉妹(父母の一方だけが同じ兄弟姉妹)の扱いです。父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分を基準にすると、半血の兄弟姉妹の取り分はその2分の1になります。再婚家庭などで異父・異母の兄弟姉妹がいる場合、この違いを知らずに話し合いを始めると、割合の前提がずれたまま進んでしまうことがあります。

なぜ「割合」で揉めるのか:実家が分けにくい財産であるという事実

法定相続分は、あくまで遺産全体に対する抽象的な取り分の比率です。現金であれば割合どおりに分けることは簡単ですが、実家の土地や建物のような不動産は、物理的にその比率で切り分けることができません。

この「割合は決まっているのに、現物は分けられない」というギャップが、兄弟間の話し合いが膠着する大きな原因になります。実家をそのまま誰か一人が引き継ぎ、他の遺産(現金・預貯金など)で割合の差を調整できれば比較的話は早いですが、実家以外の遺産が少ない場合はそう簡単にいきません。

この場合に検討されるのが、実家を取得する相続人が他の相続人に金銭を支払って割合の差を補う「代償分割」や、実家を売却して代金を割合どおりに分ける「換価分割」です。実家を複数人の共有名義のまま相続する「共有分割」という選択肢もありますが、将来さらに相続が発生すると共有者が増えて権利関係が複雑になりやすいため、慎重な検討が必要とされています。どの方法を選ぶかによって、実家に住み続けたい人がいるかどうか、他の遺産で調整できるかどうかなど、話し合うべき論点が変わってきます。

話し合い(遺産分割協議)がまとまらない場合は、家庭裁判所の「遺産分割調停」を利用できます。相続人のうちの1人もしくは何人かが、他の相続人全員を相手方として申し立てる手続きです。

調停は、裁判官1名と調停委員2名で構成される調停委員会が、当事者双方の事情を聴いたり必要な資料の提出を求めたりしながら、合意による解決を目指す場です。申立てに必要な費用は、被相続人1人につき収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手で済みます。弁護士に依頼せず、本人だけで申し立てることも手続き上は可能です。

割合どおりに分けられない要因:特別受益・寄与分と「10年ルール」

法定相続分がそのまま適用されるとは限らない場合もあります。その代表例が「特別受益」と「寄与分」という考え方です。

特別受益とは、被相続人から婚姻や養子縁組のため、または生計の資本として多額の生前贈与を受けていた相続人がいる場合に、その贈与分を遺産に加味して相続分を調整する考え方です。一方の寄与分は、被相続人の事業への労務提供や療養看護などで、財産の維持・増加に特別の貢献をした相続人がいる場合に、その貢献分だけ相続分を増やす考え方です。

「自分だけ親と同居して介護していたのに、他の兄弟と同じ割合なのは納得できない」「ある兄弟だけ住宅資金を出してもらっていたはずだ」といった主張が出てくるのは、この特別受益・寄与分という考え方があるためです。特別受益の典型例として挙げられやすいのは、結婚・独立時の資金援助や、住宅購入時の援助、大学・大学院の学費の援助などです。寄与分の典型例として挙げられやすいのは、長期間にわたる無償での療養看護や、家業への従事です。

ただし、どちらも「特別の」貢献や「多額の」贈与といった程度が問われるため、主張したからといって必ず認められるわけではありません。一般的な範囲の援助や、一般的な範囲の親の世話は、特別受益・寄与分として認められにくいとされています。この「一般的かどうか」の線引きは、個別の事情によって判断が分かれるため、争いになりそうな場合は早い段階で弁護士に相談し、主張できる根拠(贈与の記録、介護の実態を示す資料など)を整理しておくことが望ましいとされています。

ここで押さえておきたいのが、令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)で設けられた期間制限です。特別受益・寄与分の主張ができるのは、原則として相続開始から10年以内に限られます。10年を経過すると、原則として法定相続分(または遺言による指定相続分)のみで遺産分割を行うことになります。

このルールは、遺産分割を早期に進めるよう促し、不動産の共有状態が長期化して所有者が分からなくなる土地(所有者不明土地)の発生を防ぐ目的で導入されたものです。特別受益や寄与分を主張したい事情がある場合は、先送りにするほど不利になる可能性がある点を知っておく必要があります。

揉めないための時間軸:遺産分割協議に期限はないが、関連手続きには期限がある

遺産分割協議そのものには、法律上の期限がありません。ただし、関連する手続きには期限があり、分割協議が長引くとその期限に影響します。

相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。相続登記の申請義務は、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内と定められています。遺産分割が決着していなくても、これらの期限は別に進行します。

遺産分割前に不動産が共有状態のままになっている場合、法律で定められた相続分(法定相続分)の割合で相続人らが共有していることになります。この状態が続くと、実家を売却したり活用したりする際に相続人全員の同意が必要になり、「相続人同士で決めなければならず、不便なことが多くなる」とされています。

さらに、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されており、正当な理由なく期限内に申請しないと、10万円以下の過料の対象になり得ます。割合で揉めて話し合いが長引くこと自体は珍しくありませんが、その間も相続税や相続登記の期限は待ってくれないという点は、早めに意識しておく価値があります。

揉めそうなときの相談先:調停・審判という選択肢と専門家の使い分け

兄弟間の話し合いで割合に関する意見が対立し、このままでは決着がつかないと感じたら、無理に話し合いだけで解決しようとする必要はありません。家庭裁判所の遺産分割調停という、第三者を交えた手続きが用意されています。

調停でも合意に至らない場合は、自動的に審判手続が開始されます。審判では、裁判官が遺産に属する物や権利の種類・性質その他一切の事情を考慮して、分割の方法を判断します。話し合いが決裂したからといって、相続そのものが止まってしまうわけではありません。

一方で、相続放棄の申述期限(3か月以内)や相続税の申告期限(10か月以内)は、遺産分割協議の結論を待たずに進行します。兄弟間の割合の話し合いが長引きそうな場合は、先に相続放棄や相続税の期限対応だけを済ませておき、分割そのものは落ち着いてから進めるという順番の整理が必要になることがあります。

相続の争いに発展しそうな場合の相談先は弁護士、相続登記に関する手続きは司法書士、相続税に関する判断は税理士が専門です。どの専門家に相談すべきか迷う場合は、まずは相続に関する初回相談を受け付けている窓口に、現在の状況(相続人の数、主な遺産の内容、話し合いの進み具合)を整理して伝えるところから始めると、相談がスムーズに進みます。

兄弟間で直接話し合うと感情的になりやすい場合は、早い段階で弁護士に間に入ってもらうことで、法定相続分や特別受益・寄与分といった制度上の論点に沿って冷静に整理しやすくなるという利点もあります。調停の申立てから終了までの期間は、相続人の数や遺産の内容、対立の程度によって個別に異なるため、見通しを知りたい場合は相談先の専門家に直接確認することをおすすめします。

まとめ

実家の相続で兄弟が「割合」で揉める背景には、法定相続分という割合の基準自体ではなく、不動産という現物を割合どおりに分けられないという物理的な制約と、特別受益・寄与分という評価の余地があります。令和5年4月1日からは、特別受益・寄与分の主張が相続開始から10年に限られるルールも始まっており、割合に関する主張をしたい事情がある場合は先送りが不利になり得ます。

遺産分割協議そのものに期限はありませんが、相続税の申告(10か月以内)や相続登記の申請(3年以内)には期限があり、話し合いが長引く場合ほど早めの行動が必要です。兄弟間で割合の意見が対立して動かなくなったときは、家庭裁判所の遺産分割調停という選択肢があることも含め、弁護士・司法書士・税理士といった専門家への相談を検討してください。この記事の内容はあくまで制度の概要であり、個別の相続分の計算や特別受益・寄与分の成立可否は、専門家の確認を経てから判断してください。

参考文献

法務局「法定相続分とは」(東京法務局大阪) / 裁判所「遺産分割調停」 / 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」 / 法務省「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」

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カヅキ

カヅキ

桑都手帖 編集者

ものづくりや意匠設計を学んだ経験をもとに、八王子の風土・歴史・伝統工芸を現代につなぐ記事を書いています。暮らしの手続きについても、調べたことをそのまま書き留めています。