介護のための実家リフォーム、費用と使える補助金の全体像
親の在宅介護に備えて実家に手すりや段差解消工事をするとき、工事別の費用相場と、介護保険の住宅改修費・八王子市の上乗せ補助金をどう組み合わせれば自己負担を抑えられるかを、公的資料をもとに整理します(2026年時点)。

この記事の目次
親が「まだ元気だから大丈夫」と言っているうちに、実家の廊下や浴室には段差や滑りやすい床がそのまま残っていないでしょうか。転倒をきっかけに要介護状態が進んでしまう例は少なくなく、手すりの設置や段差の解消は、介護が本格的に必要になる前に検討しておきたい工事です。
結論から言うと、手すり設置や段差解消のような軽微な工事であれば、介護保険の住宅改修費(上限20万円)でほぼ賄えます。一方で浴室のフルリフォームのように50万円を超える工事は自己負担が大きくなりやすく、八王子市在住であれば上乗せの補助金を組み合わせられるかどうかで負担額が変わります。
この記事では、工事内容別の費用相場、介護保険の住宅改修費の仕組み、八王子市独自の上乗せ補助金、申請時に見落としやすい注意点までを、公的資料をもとに整理します(2026年時点の情報です)。
介護のためのリフォームは何にいくらかかるのか
介護を見据えたリフォームと一口に言っても、工事内容によって費用の幅は大きく異なります。リフォーム費用相場サイトの情報によると、手すりの設置は1箇所あたり2万〜8万円、段差の解消は1箇所あたり2万〜15万円が目安とされています。
床材を滑りにくいものに変更する工事は3万〜20万円、開き戸を引き戸に変更する工事は1箇所あたり5万〜20万円が目安とされ、これらも比較的小規模な工事に位置づけられます。一方でトイレの洋式化は15万〜50万円、浴室のバリアフリー化(在来浴室からユニットバスへの交換を含む)は50万〜150万円と、水回りの工事は金額が一段跳ね上がります。同じ「介護リフォーム」でも、玄関や廊下の手すり・段差対策と、浴室・トイレの全面改修とでは、想定しておくべき予算の桁が違うと考えておくとよいでしょう。
実際の見積もりは、家の構造や既存設備の状態によって変わります。同じ「浴室のバリアフリー化」でも、既存の浴室の広さや配管の位置によって工事範囲が変わり、金額の幅が特に大きくなりやすい工事だといえます。複数のリフォーム事業者から見積もりを取り、工事内容と金額の妥当性を比較することが、費用を抑える最初の一歩になります。
介護保険の住宅改修費で使える20万円の仕組み
在宅介護のためのリフォームでまず押さえておきたいのが、介護保険の「住宅改修費」という制度です。要支援・要介護の認定を受けている人であれば、区分にかかわらず支給限度基準額は生涯で原則20万円と定められています。
利用者の自己負担割合は所得に応じて1〜3割で、1割負担の人であれば改修費用20万円に対して18万円が保険から給付され、自己負担は2万円で済む計算になります。対象となる工事は、手すりの取付け、段差の解消、床材の変更や滑り止め、扉の取替え(引き戸化など)、洋式便器への交換、およびこれらに付帯する工事です。
この20万円の支給は原則1回限りですが、要介護区分が3段階以上重くなった場合や、転居した場合には再度20万円まで申請できる仕組みになっています。手すり設置や段差解消といった比較的小規模な工事であれば、この制度だけでほぼ費用を賄えるケースが多いといえます。
最も重要な注意点は、工事に着手する前に申請を済ませておく必要があることです。着工後に申請しても制度の対象外となるため、リフォーム会社に工事を依頼する前の段階で、必ず担当のケアマネジャーに相談してください。
八王子市独自の上乗せ補助(高齢者自立支援住宅改修給付)
介護保険の20万円枠だけでは足りない工事、特に浴室や洗面台の改修については、八王子市が独自に「高齢者自立支援住宅改修給付」という上乗せ制度を用意しています。対象となるのは、市内在住で65歳以上、要支援・要介護の認定を受けており、日常生活の動作に困難があると市が認めた人です。
この給付では、支給限度基準額内の改修費用の9割が支給され、自己負担は原則1割で済みます(生活保護受給者は自己負担分の免除を申請できる場合があります)。対象工事と支給限度基準額の例としては、浴槽の取替え(給湯設備等の付帯工事を含む)が37万9,000円、流し・洗面台の取替えが15万6,000円、便器の洋式化が10万6,000円となっています。
ここで注意したいのは、便器の洋式化については、介護保険の住宅改修費20万円の枠をすでに使い切っている場合にのみ対象になるという点です。浴槽や洗面台の改修から先に介護保険の枠を使うか、上乗せ給付をどう組み合わせるかは、ケース次第で有利不利が変わるため、担当ケアマネジャーや市の窓口に事前に相談しながら計画を立てるのが安全です。
この制度もまた、介護保険の住宅改修費と同様に着工前の事前申請が必須です。担当のケアマネジャーがいない場合は、お住まいの地区を担当する「高齢者あんしん相談センター」(地域包括支援センター)に相談すると、申請の進め方を案内してもらえます。
一般向けのリフォーム補助金も併用できる場合がある
介護保険や高齢者向けの給付とは別に、八王子市には住宅全般を対象とした「居住環境整備補助金」というリフォーム補助制度もあります。令和8年度(2026年度)の制度では、バリアフリー化改修工事に対して対象工事費の20%以内、上限20万円の補助が用意されており、こちらは要介護認定の有無にかかわらず申請できます。
この補助金には、バリアフリー化改修のほかにも、木造住宅の耐震改修工事(対象工事費の2/3以内・上限100万円)や省エネルギー化改修工事(20%以内・上限15万円)といったメニューがあります。同居・近居を目的とした改修や耐震改修などの要件を満たす場合は、介護保険の住宅改修費とは別枠で併用できることもあるため、複数の制度を組み合わせられないか窓口で確認する価値があります。
2026年度の受付期間は4月20日から12月末日までとされています。この補助金も、工事の契約を結ぶ前に申請し、交付決定を受けてから契約するという順序を守る必要がある点は、介護保険の住宅改修費と共通しています。年度途中で予算の上限に達すると受付が終了することもあるため、利用を検討する場合は早めに市の窓口へ問い合わせておくと安心です。
申請の流れと見落としやすい注意点
ここまで紹介してきた制度に共通するのは、「工事が終わってからでは申請できない」というルールです。介護保険の住宅改修費も、八王子市の高齢者自立支援住宅改修給付も、着工後の申請は対象外とされているため、リフォーム会社との契約前に必ず手続きの段階を踏む必要があります。
具体的な流れとしては、まず担当のケアマネジャーに「こういう改修をしたい」と相談し、本人の身体状況に合った改修プランを一緒に検討してもらうところから始まります。担当のケアマネジャーがいない場合は、地域の高齢者あんしん相談センターが窓口になります。
支払い方法には、利用者がいったん工事費用の全額を事業者に支払い、あとから市に申請して保険給付分の払い戻しを受ける「償還払い」と、利用者は自己負担分のみを支払い、残りは市が事業者に直接支払う「受領委任払い」の2通りがあります。受領委任払いは一時的な立て替えの負担が軽くなる一方、市に登録された事業者に施工を依頼することが条件になるため、リフォーム会社を選ぶ段階で対応可否を確認しておくとよいでしょう。
複数の制度を併用する場合、申請書類や窓口が制度ごとに異なることもあります。焦って工事を先に進めてしまうと、せっかくの補助が受けられなくなる可能性があるため、「まずは相談、契約はそのあと」という順番を徹底することが、費用面での失敗を避ける一番の近道です。
税制優遇と相談先の選び方
住宅改修費や補助金とは別に、バリアフリー改修には税制上の優遇措置が用意されている場合があります。国土交通省によると、手すりの取付けや段差の解消、浴室・便所の改良、出入口の幅の拡張といった一定のバリアフリー改修工事を行うと、所得税の税額控除や、築10年以上の住宅であれば翌年度分の固定資産税の減額措置を受けられる制度があります。
ただし、こうした税制優遇の対象となる工事の要件、控除できる金額、適用期限といった具体的な条件は、税制改正のたびに見直されます。本記事の時点でどの数字が適用されるかを断定することは避けますので、実際に利用を検討する場合は、国税庁や八王子市の税務担当課、あるいはリフォームを依頼する事業者や税理士に、その時点での最新条件を必ず確認してください。
制度活用の相談先を整理すると、改修プランや介護保険・給付制度の申請についてはケアマネジャーまたは地域包括支援センター(八王子市の高齢者あんしん相談センター)が窓口になり、税制優遇の適用可否については税理士や市区町村の税務窓口に確認するのが確実です。工事内容や金額によって相談すべき窓口が変わることを覚えておくと、手続きの段階で迷いにくくなります。
まとめ
手すりの設置や段差の解消といった比較的小規模な工事であれば、介護保険の住宅改修費(上限20万円、1割負担なら実質支給18万円)でほぼ賄えるケースが多い一方、浴室のフルリフォームのように50万円を超える工事は自己負担が大きくなりやすいのが実情です。八王子市在住であれば、高齢者自立支援住宅改修給付や居住環境整備補助金といった上乗せ制度を組み合わせられる可能性がありますが、いずれも工事着手前の事前申請が条件になっています。
まずは担当のケアマネジャーや地域の高齢者あんしん相談センターに相談し、身体状況に合った改修プランと使える制度の組み合わせを確認してから、リフォーム会社への見積もり依頼に進むという順番を守ることが、費用面でも制度活用の面でも失敗を避ける近道になります。
参考文献
厚生労働省 介護保険における住宅改修関連資料 / 八王子市「介護保険居宅介護(介護予防)住宅改修費の支給制度」 / 八王子市「高齢者自立支援住宅改修給付のご案内」 / 八王子市「令和8年度(2026年度)八王子市居住環境整備補助金のご案内」 / 国土交通省「住宅:リフォーム促進税制(所得税・固定資産税)について」 / リフォーム費用相場サイト「介護・バリアフリーリフォーム費用相場」
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